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体に良い食品、食物繊維
健康の維持、病気の予防を考えた時に一番に浮かぶのは食事と運動、喫煙・飲酒あたりだと思います。
特に食事はほぼどなたでも摂取するものなため、メディアでも良い悪いが議論されない日がないくらいです。ただ、ほとんどの話が一部分だけを切り取った情報であり、偏りがある情報であることは否めません。
津川先生というUCLAで公衆衛生を研究しておられる先生の書かれたものを最近拝見しました。
食事というより、一つ一つの具体的な食材について、根拠となる文献を挙げながら解説されており、わかりやすいものでした。
腫瘍になる割合の比較や、疾患のリスクなどと、食品の関連についてが主な内容です。
全体として受けた印象としては、勧められている食材には、"食物繊維"を豊富に含んでいる食品が多く含まれているということでした。白米より玄米、今流行している全粒粉を用いたパン、ナッツ類などです。
食物繊維といえば
食物繊維はかなり以前から、便秘の改善効果が期待できることや、食後の糖分の吸収を緩やかにすることは有名で、それを期待した健康食品が現在も多く出回っています。
大塚食品の"賢者の食卓"や小林製薬の"イージーファイバー"が有名所でしょうか。
食物繊維は何に良い?
では食物繊維の摂取は詳しく見ると何によいのでしょう?
最近のまとめでは
1. 空腹感を満たしてくれたり、消化機能の改善、便秘の改善、便量をしっかり確保してくれるなど胃腸にとって良い
2.血中のLDLコレステロール(悪玉)を低下させることで、ひいては心臓や血管に関連した疾患が発症する割合が低下する
ことが挙げられています(Nutrients. 2019; 11: 1155)。
いずれも魅力のある効果ですが、注意が必要なのは効果1と効果2は異なる種類の食物繊維によってもたらされることです。
食物繊維は2種類ある
食物繊維は実は大きくわけて2種類あります。
1. 不溶性食物繊維
大豆をはじめとした豆類、ナッツ、全粒粉、玄米、大麦、キノコなど
2. 水溶性食物繊維
果物類、海藻類、こんにゃくなどイモ類、大麦、玄米など
玄米、大麦、ごぼうなど両方含んでいるものもあります。
そして、不溶性食物繊維は胃腸への効果、水溶性食物繊維の摂取は悪玉コレステロール値の低下などが期待できます。どちらの食物繊維を多く含むかを知っておくことは、食事による健康増進のために意味のあることだと思います。また、上述の書籍に記載がありましたが、食物繊維だけを取り出して摂取する(つまりサプリメントなど)ことは食品で良いと言われている効果が得られるとは限らないということには注意が必要です。
不自然な形での摂取は元のものと同一ではないというのは感覚的にも納得できます。
食物繊維とがん
食物繊維摂取量と癌の発症率についてもかなり以前から検討されている事項です。大腸癌に関しては、予防になるだろうと多くの報告で言われています(JAMA. 2005;294:2849-2857)。その他、乳癌や膵癌についての予防効果もあるのではないかと言われていますが、議論の決着がついていません。
色々良さそうなメカニズムも想像できますが、一つの要因で癌が予防できるわけではないことは、薬の研究でもよくわかっていることなので、過剰評価は危険だと思います。
まとめ
・科学的に証明されている身体に良いと言われている食品の多くは食物繊維を豊富に含む
・食物繊維には水溶性と不溶性がある
・食物繊維の摂取で期待できる効果として不溶性は胃腸機能の改善、水溶性は血中悪玉コレステロール値の低下(と心臓・血管に関連した疾患の予防効果)がある
・食物繊維の癌の予防効果についても多くの報告があるが、大腸癌の予防効果以外はまだ結論が出ていない