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ブロードキャスト



直線的な生命の途上で、剥がれかけた朱色塗装に差し込む白熱灯があった。
分散する赤光は、須く円環する我らを浮き彫るのではない。
蓋し青春の翳りを微かに濁すのみで、瀟洒な科白にすら及ばないだろう。

実存の叫びは、消魂しく地下一階で反響し、盲目な仔羊はその造形をメタフィジカルな表象へと転換する。

無機質な媒介に籠るアーティフィシャルな我らの燃ゆる“それ”に相関性があるらしい。波長と外的な鼓膜の振動はしばしばそのエントロピーに逆行する。

月の怪電波が静寂に溶け込む音がする。

ー「今夜のワーデンクリフ、サザンクロスを指差すみたいね」

「きっとそいつは中指だよ」ー

猥雑に青く笑う月が怖くて、長いこと羊を数えあくがれたのだろう。
臆病な彼等は表象すれば漸近線にみれる。

「この瞬間を記録する媒体はテープじゃなくてお香にして思い出してよ、ねぇダーリン」

ミセスカルデジアンは遠く、遠くの窓へ目をやった。



ー「あれを見ろよ二等兵、虚構に打ち立てた構築主義者の戯言だ…!ぜんぶぜんぶ、神様とやらが、痰みたいに吐き捨てた戯曲の一部だぜ…」

「生憎、俺は無神論者でね、だが知っているよ、こいつは第3幕の終盤、道化役者のエチュードだろう?」

「ほう!詳しいな、友(好敵手)よ、気に入った!お天道様ってのは薄情なもんだなぁ…」

「笑わせるなよ、はじめからここは陽の差さない地獄だぜ?それともなんだ、お前は地獄でも未だ生魄(せいはく)へ安息地を希求してるのか?」

「はっはっ!浪漫主義ってやつさ…最期に『ここじゃないどこか』くらい夢みたっていいだろう?」

「おめでたいやつだね…あんた…今日何人殺した?」

「……お前とこんな形で会わなけりゃ、天井桟敷でソーマを飲みかわし…アガルダを追憶したろう」

「安心しろよ……ちゃんと引き金は引く、あんたの主観じゃ魂は身体に依存しないんだろ…?万が一俺が来世で逢えるなら、そんときゃ俺のやり方で弔ってやる」

「神知らずのお前が?お前のオリジナルか…!」

「ああ…握ったコーラ缶に手作りのお香を刺して、その燃滓をエールに淹れて飲み干してやる」

「そいつはいいなぁ…………心地良くいけそうだ…ジタンをツーカートン添えてくれ」

コミュニケーションは破壊された
畢竟、これが秩序だ。

沈黙
カラシニコフから薬莢が落ちる
残響

「まただ…」
僕らは失われた春を憎んだー

これを不条理だなんて、認めてやるもんか、そうだ、太陽がまぶしかったから、僕は彼に鉛を打ち込んだ。

それには秩序がある。
ここはそういう場所なんだ。

白熱灯はチャイムと共に薄れていく。

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