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花粉症黙示録

今年もこの季節がやって参りました。
花粉症の季節でございます。


今でこそ天気予報で飛散情報が流れたりするようになり一躍国民病となった花粉症だが、私は花粉症という呼び名がまだ一般化されておらずアレルギー性鼻炎と称されていた頃からのヘビーユーザーであり、30年の花粉症歴を誇っている(マウント)。


花粉症、こと国内で圧倒的な罹患率を誇るスギ花粉症について少しおさらいしておこう。


日本におけるスギ花粉症患者の急増の要因としては、戦後、農林省(現:農林水産省)が水害の防止や国産木材の供給量増加のために成長率の高いスギを大量に植林したという背景があり、加えて高度成長期を経て林業が衰退傾向を辿ったことでスギの伐採が停滞し、個体数が増加したことも大きいとされている。
また都市のコンクリート化が進んだことにより花粉が土へと吸収されず再飛散したり、光化学スモッグなどとの化学反応によりアレルギー物質が強化変容したりと、患者にとってスギ花粉の飛散状況はより脅威となっている。


花粉症の根治療法についてもいまだ決定的なものはないが、症状を抑えるための様々な治療法は各種存在している。医薬品や漢方はもちろん、ハーブや乳酸菌、食物繊維などの摂取が効果的であることが知られていたり、最近では鼻内部のレーザー手術などもメジャーになりつつある。
また、マスクやゴーグルなどの着用、空気清浄機の積極的活用、帰宅の際に上着をはたくなどの日常生活におけるセルフケアも重要であろう。

近年では市販の第二世代抗ヒスタミン薬の躍進が目覚ましく、それまでの市販薬は症状は治まるものの副作用が強烈で、立っていられない程の眠気や眩暈を伴ったり、鼻水は止まるものの粘膜が乾燥し鼻血が出たり、喉が異常に渇いたりと、服薬をためらうレベルであった。

そこに救世主「アレグラ」の登場である。
この市販薬の花粉症患者への寄与は凄まじいものがあった。

もともと医師の処方が必要だった薬だが、2012年に第1類医薬品として市販された際には、花粉症界の「ロンドン・コーリング」と呼んでも差し支えない革命的旋風を巻き起こした。たぶん。
相性に個人差もあると思うが副作用がほとんどなく、効き目も適度。
2016年には第2類医薬品に区分変更されたためより購入しやすくなり、私にとってはふざけたCMをいくらやっていても許せるくらい必要不可欠な薬となっている。久光製薬万歳。


しかし、こうしてアレグラ教信者であることを蕩々と伝えると、必ず老婆心から様々な民間療法を勧めてきたり、医者の薬の方が長期的には安上がりだよ、みたいなお節介を焼いてくる人がいる。
毎年同じような返答をするのもいい加減面倒なので、ここに私が10年ほどとっている花粉症対策を明記しておこう。

ノーガード戦法である。

風の強い晴れた日にはベランダに出て深呼吸をし、なんだったら川沿いを散歩なんてしちゃったりする。
病院にも行かずコートも払わず、楽しく普段通りの生活を送る。
スギ花粉とがっぷり四つである。殴ればわかる、みたいな昭和の男的な発想である。
というか、もう飽きたのである。イタチごっこの様相を呈した花粉との戦いに。
とはいえ人前で鼻水を垂らすわけにもいかぬから、とりあえずゲイリー・オールドマンの真似でもしながらアレグラ1錠だけかっ喰らい。

するとどうだろう。ここ2年ほどで症状がとても軽くなった気がする。
おお神よ、とうとう私は免疫を獲得したのだ、主は恵み深く、その慈しみは永久に

と言いたいところだが、残念ながら症状緩和の要因は免疫でも神でもない。
コロナ禍におけるマスクの常時着用、および外出自粛である。
やはり日常のセルフケアが大切だという先人の教えは正しかったのである。

根治療法の開発はまだ先。行政による無花粉スギへの植え替えも一向に進んでいない。
こうなれば、求むるのはもはやひとつ。

全人類が花粉症になってしまえばいいのだ。

神よ、この世の植物を全てスギに変えたまえ。
私が長年受けてきた災いを、すべての人々に同等にもたらしたまえ。
人類はくしゃみによって滅び、鼻水によって消え失せるのだ。
ワハハハハ。

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