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入試1ヶ月前になって指導をスタートした生徒が、授業後一目散に部屋を飛び出した理由【指導記録#07】

入試直前期にどんな勉強をすべきか、そんな記事を先日書きました。


今回紹介する生徒、Gさんの指導がスタートしたのはまさにその入試直前期に入ってから。顔合わせを行ったのは12月末。

遅い時期でのスタートということでは11月上旬というケースがあり、こちらの記事で紹介しております。


このケースを上回る遅い時期でのスタートとなったわけですが、状況的には上の記事に出てくるD君よりも難しい状況でした。

4年生あたりから塾には通っていたものの、D君と同様どんどん成績が下がり、顔合わせの際に見せていただいた直近の模試の成績は、偏差値29。それも最も一般的なレベルの模試である首都圏模試においてです。

それに対して第一志望の学校の偏差値は55くらい。なかなかの距離ではあります。

Gさんの指導はD君の指導の次の年だったこともあり、知識を整理できれば力は伸びるでしょうと、この状況からでも十分に希望はあるという見解を述べ、年明けから本格的に指導がスタートしました。


指導開始序盤

いざ算数の指導を始めてみると、やはり偏差値20台の力量ではなく、それなりの知識は有しているなという印象を持ちました。

Gさんの指導に関しては算数と理科を担当していたのですが、算数を何回か指導した後、算数にはある程度の目処が立ち始めたので、理科の指導にも手をつけることになりました。

通塾生の理科の指導をする場合、暗記的な要素の強い単元ではなく、計算を必要とする単元の指導を優先することが多くなります。Gさんの指導においても物理と化学の分野に絞って指導をしていました。


ある日の指導後の事件

おそらく1月中旬あたりの指導だったと思います。電流の単元の基本を教え、いくつか問題を解かせて授業を終えました。

すると、Gさんは授業が終わると同時に部屋を飛び出しリビングへとダッシュしていったのです。

それだけなら別に珍しいことではありませんが、Gさんは非常におとなしい子で、普段は全くそのような行動をとるような子ではありませんでした。

何事かと思いつつ、授業後はその日の指導についての話をGさんの部屋で行うため、お母さんが部屋に来るのを待っていました。

じきにお母さんも部屋に入ってきたわけですが、お母さんも授業後のGさんの様子には驚いていたようでした。


そしてお母さんは、Gさんがダッシュで部屋を飛び出した理由を教えてくれました。その理由は……


「初めて電流の問題が解けた!」


そのことをお母さんに告げるためだったのです。本当に初めて理解ができて、初めてちゃんと理解した上で問題が解けたらしく。Gさんは嬉しそうにそれを伝えてきたとのことでした。


基本を理解できないままになる理由

受験直前になってそのレベル?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、Gさんのレベルに近い理解度の子は潜在的には大量に存在しています。電流のような単元では、なんとなくの理解で正解できてしまう問題もあるため、同じような問題でも正解だったり不正解だったりを繰り返している子は数多くいます。

特に集団塾に通っている子の場合、基本があやふやなまま月日が流れ、基本問題を取りこぼしっぱなしになっていることは珍しくありません。

塾側も基本を忘れないようにと、春期講習、夏期講習、冬期講習の際に繰り返し問題を用意してくれますが、基本の解説を何度もしてくれるわけではありません。解説されるにしても、その塾で学んでいる限りは最初に理解し損ねた解法で解説され続けます。

ですから、早い段階で基本をつかみ損ねてしまうと、ずっと解けないという状況が続いてしまうわけです。受験生にとっては非常に苦痛な時間となるでしょう。そして何か別の手を打たないとそのまま受験は終わってしまうことになります。


Gさんの受験総括

Gさんは理科の一件の後も、算数理科ともにメキメキと力をつけていきました。第一志望の学校には合格できなかったものの、その学校の問題レベルには十分対応できるまでになり、最終的には偏差値45くらいの学校に進学しました。年末の絶望的な状況からすれば、悪くない結果だと思います。

何より、長い間理解できず暗闇の中にいたような状態だった「電流」の問題が解けたことで、思わず走り出してしまうような経験ができた、それだけでもGさんにとっては大きな経験になったはずです。勉強によってそういう感情が生まれるというのはなかなか無いことでしょう。

長い間悩みながらも最後まで諦めず、わからないことを誤魔化さずに理解しようとしたGさんの姿勢があったからこそ、そのような経験、一種の成功体験につながったわけです。


まだまだ逆転のための時間は残されている

直前期に基本を理解し直せたGさんでしたが、Gさんと同様、基本レベルのことをやり直す価値のある受験生は数多くいるはずです。

基本を習った幼い頃よりも成長した今、この状態で基本に戻ってみると、自力で理解できるようになっているかもしれません。ずっと解けなかったという苦手意識が理解を遠ざけていた可能性も大いにあります。

極端に苦手な単元、特に小4小5で学んだ単元に関しては、直前の今こそラストチャンスと思って、昔の教材に戻って学び直してみてはいかがでしょうか。今じっくりと説明文に目を通してみたら、意外なほど簡単に解決してしまうこともあるでしょう。

また、基本がまとまっているような市販の教材に手を出すのも有効です。塾で学んだ方法にとらわれて結局できないままでいるよりは、動いてみた方がマシです。何かを変える勇気が無ければ劇的な変化は望めません。これまでに学んだことや費やした時間を活かすためにも、最後まで諦めずに何らかの策を講じてみましょう。


自分を高めてくれる材料を探し求めよう

塾に長く通っていると、塾への愛着があるがゆえにその塾の教材しか使わないというケースがよくみられます。しかし、どんな塾であっても個人にとって完璧な塾というのは存在しません。市販されている教材にも目を向けて、自分にとってのベストな相棒を見つけるというのも大事なことです。

そのような習慣ができると、中学入学以降も、自分の力を高めてくれるアイテム探しができるようになります。参考書や問題集はもちろん、今の時代はインターネットのサイトだったり、動画だったりアプリだったりと、自身のレベルアップにつながる材料が世の中にあふれています。

与えられたものだけを活用するのではなく、自分からそのようなものを探し求める姿勢を身につけていけば、自分自身で自分を成長させることができるようになることは間違いありません。


Gさんと同じように、長らく苦しめられている単元があり打開策が見出せない。そんな閉塞感を打ち破るためには、何か動いてみることをおすすめします。最後の最後に、これまでには無かった「新たなもの」が手に入るかもしれません。

それが先に述べたような「姿勢」であるなら、それは一生ものです。



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