世界に誇る日本の食文化Vol.2 長野県の「やしょうま」~レシピ付き~
(記事作成:公益社団法人 日本栄養士会)
こんにちは!日本栄養士会です。
未来につなぎたい食文化として伝統食・郷土料理をリレー形式でご紹介します。
自然を尊ぶ日本人ならではの食文化を、見て、読んで、味わってみませんか。
長野県の伝統食「やしょうま」
長野県は南北に長く、周囲を標高3,000m 級の山々に囲まれ、急峻な山間地と山あいを縫って流れる河川周辺に広がる盆地等から形成されているため、気候風土が異なり、食文化にも地域による特色が見られます。山間地の畑作地帯ではそばや小麦が作られ、平野部の水田地帯では米と麦の二毛作が行われています。「信州そば」や「おやき」等が有名ですが、米を使用した食べ物も供物を中心に見られます。寒中に米を洗って製粉した寒ざらし粉を練り、着色して蒸した団子を「やしょうま」といい、長野県の郷土料理として見直されています。
やしょうまは県内各地域で作られ、安曇野地域から長野県北部を中心とする地域では、釈迦が入滅した日に行われる旧暦2 月15 日(新暦で3 月15 日頃)の法会「涅槃会(ねはんえ)」に、仏壇に供える風習があります。
名前の由来は、こねて片手で握った形が馬の背に似ているので「やせうま」、これがなまって「やしょうま」になったといわれます。また、釈迦入滅のときにこれを食べ、弟子の邪(やしょ)に「邪、うまかった」といったからという説もあります。
以前は、寺をはじめ、どこの家庭でもやしょうまを作り、近所に配ったり、子どもがもらい歩いたりするのが一般的でした。そのまま食べるのが一般的ですが時間が経って硬くなってしまった場合は、焼いたり、油で揚げたりして、砂糖じょうゆでもおいしく食べることができます。
形は、細長い棒状の団子の上に箸を押しつけて凸状にするのが主流で、青のり、ゆで大豆、ゆかり等で味つけをし、真ん中がくびれた分銅形、花弁の形をしたもの等さまざまです。近年では、かぼちゃペースト、ビーツ絞り汁等を活用して色とりどりの模様を巻きずしの要領で描き、中でもキャラクター模様は、子どもたちに人気があります。時期になると餅菓子屋でも作られ店頭に並び、公民館事業の食育講座等では作り方の継承が行われています。
また、長野県内にはやしょうまと同じような作り方をする米粉を使った食べ物に「ねじ」と「からすみ」があります。
食紅で色を付け、野菜、花、動物の形にし、中にあんを入れて形作ったものをねじと呼びます。上田市戸沢地区で毎年2 月に行われる国選択無形民俗文化財「戸沢のねじ行事」では、子どもたちがねじを積んだわら馬を引いて道祖神にお参りして無病息災と豊作を願います。
からすみは、米粉を練って蒸したものに砂糖、ごま、くるみ、干し柿等を加えて練り直し、富士山型に入れて再度蒸します。県南部の下伊那・木曽地域で3 月のひな祭りに供えられています。
いずれも春になると郷土料理として伝わる米粉のおやつは、各家庭によってもさまざまです。ぜひ試してみてください。
長野県北信地方に伝わる春の味
やしょうま
材料(3本・6人分)
・上新粉 400g
・砂糖 大さじ2(18g)
・塩 小さじ1/2弱(2.4g)
・熱湯 440mL
・黒ごま 5~10g
・赤しそふりかけ 4~8g
・ゆで大豆 30~50g
作り方
①上新粉に砂糖、塩、熱湯を入れてよく混ぜ合わせ、耳たぶくらいの硬さにこねる。
②ぬれた蒸し布に卵大の大きさにちぎった①を包み、蒸し器で15分くらい蒸す。
③蒸しあがったら、蒸し布に包んだまま冷水に通し粗熱を取り、水気を切ったら、蒸し布をはずし全てを1つにまとめる。
④③をさらによくこねて3等分し、黒ごま、ゆかり、ゆで大豆をそれぞれ混ぜ直径5cmくらいの棒状にし、箸2本で凸状にくぼみをつける。
⑤食べやすい厚さに切り分ける。軟らかいうちに切り分けるには、糸やテグスを使うときれいに切れる。
※写真は2人分。好みに合わせ、砂糖じょうゆを添える。
執筆者:公益社団法人 日本栄養士会 企画広報課