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世界に誇る日本の食文化Vol.3 岡山県の「けんびき焼き」~レシピ付き~

(記事作成:公益社団法人 日本栄養士会)

こんにちは!日本栄養士会です。
未来につなぎたい食文化として伝統食・郷土料理をリレー形式でご紹介します。
自然を尊ぶ日本人ならではの食文化を、見て、読んで、味わってみませんか。

岡山県の伝統食「けんびき焼き」

 岡山県は、山陽道の中央に位置し、東は兵庫県、西は広島県に隣接しています。また、南は瀬戸内を臨んで四国に、北は山陰地方と接しており、中国・四国地方の交通の要衝として古くから重要な位置にあります。
 県北部は蒜山ひるぜん高原や那岐山なぎさん等の中国山地を望む山間部、中部は吉備きび高原等の丘陵地、県南部は瀬戸内海に面した沿岸地帯と、地形の変化に富んでいます。また、旭川・吉井川・高梁川の三大河川による豊富な水と肥沃ひよくな土地、「晴れの国」と呼ばれるほど晴天の日が多く、果物・野菜・花卉かき・畜産等、多種多様な農業が営まれています。
 特に果物は、「清水白桃」、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」、「ピオーネ」の栽培面積は全国第1 位であり1)、シャインマスカットの「晴王」も岡山ブランドとして、海外でも高い人気があります。また、瀬戸内海では、春を告げるさわらの他に、まだこ、ママカリ(ニシン科の小魚、標準和名はサッパ)、かき等、季節により多種類の海産物が水揚げ、養殖されています。
 このように岡山県では温暖な気候を生かして、農業が盛んに行われてきたことから、農作業と関連した年中行事と郷土料理が数多く伝承されてきました。今回紹介する「けんびき焼き」もその1 つです。
 6 月1 日(方言で「ロッカッヒテェ」)は、旧暦の6月1 日に、新見(にいみ)市南部の畑作地帯で、小麦の収穫の喜びと農作業の疲れをとるために行われてきた行事です。かつて農家では、旧暦の6 月1 日は農作業を休む節目の日としていました。この日は厄年の厄が明ける日、厄に入る日の境にもあたり、田んぼの虫を封じ、豊作を祈る行事が開かれ、その際にけんびき焼きを作り、食べられてきました。「けんびき」とは、新見市周辺の方言で「肩こり」のことを指します。この時期に行われていた麦刈りやたばこの苗の植え付け等は重労働な農作業のため肩がこります。この肩こりが治ることを願って、農作業を1 日休んでけんびき焼きを作って食べていました。けんびき焼きは、刈り取った小麦を粉にし、あずきと砂糖で作ったあんを入れ、みょうがの葉で包み、油を引いたほうろくで焼いて作ります。みょうがの葉は、焼くと独特の香りがして食欲が増します。けんびき焼きを食べると、農作業によるけんびきを焼きほぐす、夏やせしない等と伝えられています。みょうがの新葉が育ってきたら、ぜひ、けんびき焼きを作ってみてください。

農作業によるけんびき(肩こり)が治ることを祈って食べる
けんびき焼き

材料 (2人分)
・あずき 60g
・水(あずき水煮用) 適量
・砂糖 40g
・塩 少々
・小麦粉 80g
・熱湯 80mL
・水(生地用) 15mL
・片栗粉 少々
・みょうがの葉 4枚
・油 少々
 
作り方
あずきは一晩、たっぷりの水に漬けて、あくを取りながら、指で押してつぶれるくらい軟らかくなるまで煮る。
①に砂糖、塩を加えて練り上げ、あんこを作り、4等分にして丸めておく。
小麦粉を大きめのボウルに入れ、熱湯を加えて混ぜる。
加減を見ながら、水15mLを加えて耳たぶくらいの柔らかさになるまでこねる。そのまま10分くらい常温で寝かせる。
手に片栗粉を付け、4等分にした④で②を包み、団子を作りみょうがの葉を巻く。
フライパンに薄く油を引き、⑤を中火から弱火で焼き目がつく程度に両面を焼き上げる。
 
文 献
1)1) 農林水産省:令和3年産特産果樹生産動態等調査,
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500503&tstat=000001020907&cycle=7&year=20210&month=0&tclass1=000001032892&tclass2=000001213907

執筆者:公益社団法人 日本栄養士会 企画広報課

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