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〜草刈りからはじめる土地と信用〜 現場で学んだ田舎流コミュニケーション

これから移住あるいはいわゆる「関係人口」として地方の特に田舎で新しい事業に携わりたい方にとって、地域における新しい人間関係の構築や信用の積み上げはひとつの課題といえるでしょう。

そんな時にすべきことで重要なことに地域、土地、家への敬意を自分の行動で示すということがあります。そしてその代表的な具体的行動のひとつは「草刈り」です。「なんだそんなことかー」と思われそうですが、草刈り侮るべからず。さらに草刈りという行為の中で自然と地域とのコミュニケーションが生まれ、移住者が新規事業をはじめる上での人間関係の好循環が発生すると考えます。

というわけで、この記事では草刈りから始まる田舎のコミュニケーションと信用作りについて、私が地域おこし協力隊として田舎で二年弱過ごした経験を元に紹介します。

ちなみに私自身は借りている家の農地約2反とその斜面部分を中心に、年に二回程度、エンジン式の刈り払い機にチップソーをつけて草刈りしています。また年に一度、住民が共同で集落内の道路脇が草で埋まらないようにやる草刈りに参加しています。借家の土地を刈るにはそれぞれざっくり3日くらいは作業する感じですね。

さて、今回のキーワードは、土地の維持と地域への敬意田舎の共通言語情報の連鎖といったところでしょうか。最後に補足として草刈りと安全について私が注意していることと参考サイトを記載しました。

補足:
地域での信用の積み上げと、地域と同化することは違うと考えています。地域で新しいことをやるには地域からある程度信用されることは大切ですが、それは地域に完全に同調して一体化してしまったら、これまでの流れをただ続ける人になるだけですからね。

土地の維持と地域への敬意

田舎で暮らし始めた直後、周りの人たちがせっせと集落の畔の草刈りをしていることに気づきました。おそらく都会に住む方も、田舎を旅している時に道路脇や農地の周辺を刈っている方を目にした経験があるでしょう。

そんな時、みなさんはどう思いましたか?草なんて刈ってもどうせすぐ生えてくるし、冬になれば大抵枯れるのに、どうして年に何度もみんな草を刈るのかな?と。私も当初はそんな考えで、草刈りの重要性を全然理解していませんでした。

でも、実際に草刈りをはじめて気づきました、借りている家とご近所の家の土地に生えている草の違いに。「うわっ、私の敷地の雑草、高過ぎ??というか細い木、生えてますけど」

そう、草刈りをしないと背の低い一年草から強い根と大きな丈を持った多年草となり、やがてその隙間から低木が生えてきて、やがては森林になっていくのです。空き家の期間が長く、草刈りの頻度が少なかった土地の草の勢力は、ご近所の手入れが行き届いた土地より明らかに強かったのです。

この現象はかつて我々が中学校の生物の授業で教わった、植物相の遷移。これが眼前で行われ、裸地から始まった植物相は極相、またの名を”クライマックス”の森林に向けて突き進んでいるわけです。実際、廃村となった地域を見ると数年のうち木が生えやがては山の一部となっていくのがわかります。草刈りを継続することで、集落が森にならぬように維持をしていくことに繋がるのです。


もうひとつ。くさむらは多くの生物の住処です。虫はもちろんですが、田舎のくさむらを侮ってはいけません。カエル、ネズミ、ヘビ、そして鳥といった多くの小動物が潜んでいます。時にはイノシシなどの大物が出現することだってあり得ます。草刈りをすることで虫をはじめとした生物の発生抑制、雑草の種の飛散抑制を通した生活環境の維持がと景観の向上の効果があります。これはどちらかという短期的に見込める効果ですね。

以上のように草刈りには地域の生活環境と景観の維持という短期的効能、そして集落の維持という長期的効能があります。


ではなぜこの行為が信用に繋がるのでしょうか。

それはその集落と土地の開墾の歴史は江戸時代はもちろん、室町、鎌倉と遡り、ついには平安・奈良あるいはそれより以前に遡るわけです。これは地域史を読んでかつての記録を確認すると明らかです。

そして集落の人たちは元を辿れば多くが親戚同士であり、現在自分が所有している土地だけでなく、集落の土地は親戚のものだったりするので、実際に集落に住んでいる方々がその土地に深い愛着を持っています。都市生活が長いとイメージしづらいですが、実際に自分が草刈りをやってみて、「がんばっとるねー、助かるわ」とか声をかけられると実感します。

こうしてしっかり草刈りをしていれば、土地を大事にしてくれている人として、ただでさえ人口が減って荒地が増えていく時代に貴重な存在として認識され、次第に信用されるようになっていきます。

もちろん草刈りというのはあくまで一例ではあることを断っておきますが、周りから同じ意見を耳にします。ある地域おこし協力隊の方は「田舎では会話によるコミュニケーションだけでなく、行動で示すことが大事」と話していました。草刈りとはまさに行動で示す地域への敬意なのです。

草刈りから生まれる会話と連鎖する地域情報

草刈りをすることは新しい地域で自然なコミュニケーションを産むことに繋がります。移住直後にご近所さんにご挨拶するのは田舎では当然とはいえ、最初はなかなか話が弾まないものです。

そんな時のコミュニケーションツールのひとつが「草刈り」です。

田舎は人が少なく、一軒一軒の距離は大きいですが、遮蔽するものがほとんどありません。つまり草刈りをしていると機械の音が聞こえるのはもちろん、直線距離で500m、下手したら1kmくらい先まで様子が見えるので、誰が作業をしているのかすぐにわかります。また、作業している横を誰かが通れば、「おーがんばってるねー!」と軽トラから声をかけられて一休みしつつ歓談したりするなかで、「草刈りどうかね?うちも大変だよ」と何気ないところから自然と会話を弾ませることができるのです。

移住したての都会人と田舎の人という異なる背景を持った人たちの「共通の敵」たる「草刈り」は共通言語となり、

どこを刈ってますか?あああそこは誰々の土地や。あそこは誰々の土地だけど今は都会に出ていて農地があれとる家はどうするんやろうか?君買ったらどうや?

のように農業の話、機械の話、近所の人の話、土地の話、空き家の話と様々な話題に派生し自然に情報が芋づる方式に流れ込んできます。若干大げさに聞こえるかもしれませんが、これが私の一年半の田舎暮らしで学んだ草刈りから始めるコミュニケーションです。

* * * * *

今回は田舎の草刈りから始まるコミュニケーションと信用の積み上げについて書きました。田舎の人には何を今更、と思う部分も多かったかもしれませんが、都会に住む方には田舎の実態をイメージするきっかけになれば幸いです。

最後に草刈りの危険性の補足もしました。実際に今後取り組む可能性がある方はご確認ください。


補足:草刈り=危険作業であることの認識

さて、最後に「では、これから草刈りをしてみよう」という方へ。

草刈りは大変危険な作業です。田舎で飄々と草を刈るおじいちゃんたちを見ると楽そうに見えますが、非常にきつい作業です。彼等は熟練の刈り士です。それでも「えらい、えらい」と言っています。

詳細は別のサイトに譲りますが、ここでは私が普段気にしていることを書きます。実施前はご自身の責任で情報を集めてご安全にお願いします。

まずは服装と保護具です。長袖長ズボン長靴と手袋(なるべく草刈り用の)、それからゴーグルあるいはフェイスガードを必ずつけましょう。小石や機械の刃の破片が目に飛んでくる可能性があります。

暑い時期も長袖長ズボンで体を保護しましょう。草むらの中にはマムシなどの毒ヘビ、それからマダニ、ヒルなどがいる可能性があります。私の地域ではブヨが多く、汗に反応して顔をさしにきます。刺されると数日間痛むので、帽子から虫除けのネットを被りましょう。長袖長ズボンで汗を大量にかくので水分補給も入念に。

草刈りに使う刈り払い機も様々な種類があります。肩がけや背負式。出力の強いガソリンエンジン式や、扱いやすい電気式。それから草を刈る刃にももっとも能力が高いが危険性も高い「チップソー」、あるいは安全性がやや高いが能力がやや下がる「ナイロンカッター」など。この辺は用途や好みに合わせてご自身で調べたり詳しい方に質問した上で選んでみてください。

必要な方は保険も検討しましょう。一般の傷害保険でもいいですし、JAなどでは草刈り機の機械自体にかける保険もあります。こちらは機械の型番が必要になる代わりに、かなり少額の掛け金で済むようです。

ただし、いくら保険が降りようとも怪我をした事実は元には戻りません。とにかく無理はなさらず、自分の体力や気持ちと相談して絶対にご無理はなさらずに


* * * 草刈り関連情報 * * *

消費者庁:刈り払機(草刈機)の使用中の事故にご注意ください !

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_016/

刈り払い機の種類について:

マダニについて:


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Kentaro
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