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消えゆくくらしのモノ事典 岩崎書店編集部/編著 岩崎書店

駅の伝言板。この言葉でああ、あれねとすぐわかる方は今どれくらいいるのでしょう。駅の構内に黒板のようなものがありました。今のホワイトボードのような感じです。           私は昔友人と待ち合わせしたときに伝言板の前で待ちぼうけをしたことがあります。伝言板に伝言はなく立ち尽くすこと30分。もしや裏側もあるのではと気づいて裏に回ったら、友人も裏側でずっと私を待っていました。伝言板には時刻・名前と「 先に行きます」とか、待ち合わせ場所の変更などを書いていました。一定の時間が過ぎたものから駅員の方が消していたようです。ケータイがない時代でした。

とにかくこれはおもしろい本です。あったあったの連続です。

表紙にある黒電話から電話ボックスにポケットベル、ファクシミリ、PHS、ガラケーなど。かんたんなしくみ、名前の由来、そしてそれらがなぜ消えていったのかがわかりやすく書かれています。娘はOHPに反応していました。  見開き1ページでそのモノの写真、テーマ、使われた年代、使い方・使われ方まで書いてあります。  PHSが2021年1月でサービスが終了したことをこの本を読んで知りました。そういえばTVで、070がケータイの番号として使われることになるという話題を聞いたばかりです。                                                   数年前、ケータイを忘れて慌てた私は新宿駅西口地下の公衆電話の前で呆然としていました。公衆電話のかけ方が一瞬わからなくて、そんな己れに呆然としてしまったのです。もちろんすぐにかけることができましたし、公衆電話は令和の今も健在ですが。

昭和から平成にかけて活躍した、けれど最近見なくなったあのモノたちの事典です。

学校のプールの腰洗い槽も載っていました。冷たくてイヤだったことを瞬時に思い出しました。花柄家電もなつかしい項目です。

もちろんブラウン管テレビやビデオデッキ、そしてカーボン紙・青焼きやピア(!)、ワープロ・フロッピーも、駅の有人改札まで取り上げられています。

昭和という時代は長く、どうしても戦争のイメージが強いのですが、100年後昭和を振り返ると、前半の戦争の時代と後半の技術革新の時代とに二分されるのかもしれません。そして平成は通信技術、コンピューターの汎用化の時代だったと。

話がそれました。育児玩具のメリーやカタカタなど、取り上げられているものが片寄っている気もしました。もっといろいろあったでしょう、と言いたくなってしまうのです。

けれどこれだけのモノを見開きで読みやすく歴史的視点から解説してくれた本を作ってくれたことに感謝しかありません。1冊6000円しますが、これだけの内容を本にするにはそれだけかかってしまうだろう、と納得してしまいます。そうしてこういう本こそ図書館で借りて読んでいただきたいのです。シリーズで出ています。『昔のくらしの道具事典』『日本のくらしの知恵事典』などなど。       児童書ですが、子どもより大人のほうがよほど楽しめるのではと思ってしまいました。違う世代の人と一緒に読むと面白さが倍増すると思います。(み)

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