最頻値、中位値、平均値
つまり、市場が所得を分配すると、次の図のような分布になる(右の裾野を右に引っ張った分布を右に歪むと言う)。
このように、右に歪んだ分布の下では、左から、最頻値(mode)、中位値(median)、平均値(mean)の順番に並ぶ。そして、この分布の時に、平均値で話をすると、その左側にいる圧倒的多くの人たちは大いに驚く――2019年の2000万円大騒動の時をおもいだせば想像できるはず。
驚かせて、騒動をおこすことを目的としていない限り、報道のあり方は工夫をした方がいいのかもしれない。なお、社会保険料は、賃金に比例保険料率を掛けて、労働者と使用者が労使折半で負担する――よく、社会保険は逆進的と言われるが、たとえば、公的医療保険の標準報酬月額の上限は139万円である。つまりほとんど所得比例で負担される社会保険料を、平均額はいくらと話をされても、何を言いたいのか、僕らにはよくわからない。中には定額負担、人頭払いと思う人もいるようで、いつもながら、初動の誤解は、伝言ゲームの力も借りて、底なし沼になっていく。
はじまった財源話
ところで、こども・子育て政策の財源をどうするかが、こども未来戦略会議で議論されたりしている。どうなることやら。5月22日の第4回会議に提出した、当日の資料9「第4回こども未来戦略会議への意見書」に書いていたように、「少子化の原因であり、かつ少子化緩和の便益を受ける既存の医療、介護、年金保険などの社会保険制度の活用」を、これまで長く言ってきた。社会保険制度の費用負担は、労使折半である。このことについては、第3回会議(5月17日)で次のように発言している。
ビスマルク社会保険のロジックと現在
労使折半とは
社会保険の仕組みのもとでは、費用負担は労使折半になる。ゆえに、事業主負担を負うことになる使用者は、この方式には反対する。
現時点では、「賃上げのモメンタムに水を差すな」というのが今の定番の批判になっている。経団連、日商、同友会が揃って、そういう。そこで、第2回こども未来戦略会議(4月27日)で次のような発言をしていた。
本格的に労働力希少社会に入ってきている
この日は、社経営共創基盤 IGPI グループ会長であり経済同友会の副代表幹事でもある富山和彦構成員も、私と同じような話をされていた。
子育て支援、財源の行方は
さてさて、財源の話、いつものようにスマートボール状態で、どこに転がっていくのやら状態。しかし、労働市場が、本格的な「労働力希少社会」に入っていく中で、賃金上昇のモメンタムというのは、こども・子育て政策に経済界が求められる支援金の規模くらいでは水は差されないのではないだろうか。
ちなみに、次は、今から15年ほど前、経済界が、みんなそろって、基礎年金の租税方式化を唱えていた頃の記事である。
このあたり、次のインタビューの中では、下記のように答えている。
「専業主婦の年金3号はお得だ」って誰が言った? 慶応大・権丈氏が語る「年収の壁」論議の愚かさ | ニュース・リポート | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)
最後に、労働力希少社会とは
次は、『もっと気になる社会保障』の「はじめに、そして勤労者皆保険の話」からです。