「年金財政における経済前提に関する専門委員会」というのが、社会保障審議会年金部会の下にある。5年に一度の公的年金の財政検証という投影(プロジェクション)を行う際の経済前提を議論する会議である。
第4回専門委員会(2023年6月30日)では、法政大学の山田久先生が招かれ、「スウェーデンの賃金・雇用システムとわが国への含意」を話された。
山田先生の話の核は、「産業、雇用構造がダイナミックに変化して実質労働生産性が向上する。その実質労働生産性の向上の果実を賃金という形で労働者に適正に配分してきたという、まさに経済原理そのものに忠実にやってきたというのが、一言でいえば、スウェーデンの少なくともこれまでの成功の背景にあった」というものであった(講演録を含む全体の議事録)。
そのとおりで、あの国は、レントシーキング社会という性質とはほど遠いところにいる――『もっと気になる社会保障』知識補給「成長はコントローラブルなものなのだろうか」などを参照。
あの会議が開かれた6月末頃、いわゆる「年収の壁」対策として補助金を出す案を年金局が検討しているという話がメディアで報道されていた。そこで、日本のように、企業、支援者から求められたら、はいはいと補助金を出す、市場規律とはほど遠いレントシーキング社会を続けていたのでは(付加価値)生産性というのは上がらないよっというコメントをする。
第4回年金財政における経済前提に関する専門委員会における発言(2023年6月30日)
いま、何が起こっているのか
レントシーキングをキーワードとする「年収の壁」の話は他にも
「年収の壁」話と最適不明瞭性の原理(2023年3月3日)
社会保障への政策スタンスと経済政策
あの日の発言の中にある「30年ぐらい前に、どうして大きな福祉国家が生まれてくるのだというのを分析していた」という話は、次にまとめている。
『再分配政策の政治経済学Ⅰ――日本の社会保障と医療』(2001)「第3章 社会保障と経済政策――平等イデオロギー形成の事実開明的分析」