有隣堂マーケティングトレース
ハロー、皆様。
私のnoteをご覧頂きありがとうございます!
都内の自動車部品の商社にて営業企画や広報などをやりながら、中小企業診断士の勉強中のイズケンと申します。
2022年9月に黒澤友貴さんの「マーケティング思考力トレーニング」を読んでから、気になった企業の成功事例の裏側を分析する「マーケティングトレース」を行っています。
今回は、書店の有隣堂さんを取り上げたいと思います。
取り上げた理由
まず取り上げた理由ですが、先述の黒澤さんが2022年9月21日に登壇されたマーケティング関連のセミナーで有隣堂についてお話されていたからです。
最近興味を持った黒澤友貴さんのお話を聞いてみたくて視聴したセミナーでしたが、有隣堂のオウンドメディア戦略がめちゃくちゃ面白かった(!)ので今回早速取り上げてみることにしました。
では早速行ってみましょう。
■企業情報
■会社名 株式会社 有隣堂
■業界 書籍販売、ソリューション事業、音楽教室など
■代表取締役 松信 健太郎
■ビジョン・理念
1. 「有隣」の精神にもとづき、文化、教育に関する商品の販売を通じて地域社会に貢献する。
2. 会社永遠の発展と、従業員の福祉向上のため経営の効率化に努力する。
3. 大専門店の誇りを堅持し、最高水準の仕事を目指して絶えざる研究、努力を行なう。
■売上金額 668億(2021年8月期)
■社員数 正社員360人 全従業員2,429人(2020年10月)
注目したいのがここ数年の業績。
2020年は、
とのことでしたが、2021年には大幅に業績を回復しています。
一体どのような取り組みが成功したのでしょうか!?
早速分析を進めて行ってみましょう!
■PEST分析
まずはマクロ要因を探っていくために「PEST分析」を行ってみましょう。
政治(Politics)
日本の書籍販売は、再販売価格維持制度により、書籍は全国どこでも同一価格で販売されています。こちらがあるために、書籍・雑誌は日本全国どの書店で購入しても同一の金額で購入となるわけですね。
この「再販制度」と、「委託制度」が日本の書籍販売の大きな特徴となっています。
経済(Economy)
スマートフォン、タブレット等で読める電子書籍・雑誌の台頭は挙げておかないといけないでしょう。2022年には6,000億円の市場になることが見込まれてとのこと。2022年、紙書籍は6,800億、紙雑誌は5,300億程度の様ですから、紙雑誌市場は抜かされることになります。
社会(Society)
言うまでもないですが、書籍もECで購入される方が増えて来ています。
経済産業省が公表しているデータによると、「書籍・映像・音楽ソフト」のEC化率は2021年で46.2%となっています。
また、最近めっきり浸透してきた感のあるSDGsへの意識の高まりで、紙を使った印刷物への反発も増えてきているのも無視できないでしょう。
技術(Technology)
メルカリや、バリューブックス等、スマホ撮影で下取り価格がわかる技術の登場により、二次流通量が増加。
バリューブックスに関しては下記の記事がめちゃくちゃ面白かったです。
加えて、NFTを利用して「電子書籍の二次流通」のサービスも始まる様になります。
ざっとPEST分析をしてみても、昔ながらの「書店」というあり方では生き残りは難しいことがわかります。
有隣堂はどの様に対策を取っているかと言うと、オフィスや公共施設向けのソリューション販売や、音楽教室・カルチャースクールも運営しており、店舗の書籍販売だけに頼らないポートフォリオを形成しています。
先ほど見たように2021年の業績は対前年比で大幅に改善していましたが、日本政府の打ち出したGIGAスクール構想による学校へのタブレット端末の案件を受注できた様で、全社の売上を押し上げている様です。多角化経営が上手くいっている見本の様な事例ではないでしょうか?
さて、続けて5フォース、3C分析と行こうかと思ったのですが、ちょっと長くなりそうなので割愛し、今回のメインテーマの「プロモーション」を含む「4P分析」に移りたいと思います。
■4P分析
商品(Product)
書籍、雑誌、オフィス用品・事務用品(アスクルの代理店)、楽器販売店、音楽教室など
面白いと思ったのが、アスクルの代理店をやっていると言うところ。
と言うか、そもそもアスクルって代理店制度なんかあったんですね!
(めっちゃ興味あるので、アスクルもトレースしたい・・じゅるり)
加えて、2018年には東京ミッドタウン日比谷に書店・飲食店・理髪店(!)まで入った複合施設「HIBIYA CENTRAL MARKET」をオープン。
価格(Price)
書籍に関して言えば先述の再販制度があるから関係ないのかなと思います。他の事業に関しても価格が、有隣堂の他社との差別化において重要な役割を果たしている様には見受けられなかったのでスルーします。
流通(Place)
駅周辺の商業施設や郊外ショッピングセンターへの出店が多い感じがします。出店しているのは本社のある神奈川を中心に、東京、千葉です。
自社ECサイトも運営している様です。
プロモーション(Promotion)
でました本命のプロモーション!
ご存知の方もいるかも知れませんが、有隣堂さんはYoutubeを使ったプロモーションで大成功している企業さんなんです。
どんなチャンネルかですが・・・、
多分実際の動画を見て頂いた方が早いと思います。
歯に衣着せぬ口調のミミズクのパペットがMCを務め、マニアックな店員さんやゲストと共にマニアックな商品やテーマについて話すという、かなり風変わりな、というかはっきり言うと「頭のおかしい」チャンネルです。(褒めてます)
どれ位頭おかしいかと言うと、記念すべき一回目は「キムワイプ」という研究・実験室等で使われる高性能ティッシュを取り上げているのですが、なんとこの商品、「有隣堂」では買えません。なんだそりゃ!
それでも、まるでマツコ・デラックスさんの様な「遠慮のないトーク」で切り込んでいくパペットの「R.B.ブッコロー」とマニア心をくすぐるニッチなテーマが大ウケして、現在では17.4万に登録者・動画の再生数はコンスタントに10万回を超える、という非常に優秀なパフォーマンスを見せています。
個人的に好きな動画はこちら。
こちらのYoutubeの効果として、有隣堂の知名度向上はもちろんなのですが「R.Bブッコロー」のグッズ販売や、他県からの来店もあり直接売上の方にも貢献していることが見受けられます。
有隣堂はもともと書店とカフェを融合した店舗も展開していましたが、その目的は書店を単に本を売る場所でなく「体験」を提供する場所にしたい、と言う考えが基にあったはずです。こちらの取り組みにより、YOUTUBEで馴染みのある店舗に「聖地巡礼」し、運が良ければ出演していた店員さんにも会えるかも知れないという、まさに「体験」の価値を生み出せたことは、大きな成功の一つとも言えるのではないでしょうか。(私も改めて訪問したいですもん!)
では、このチャンネルはどういう経緯で生まれたのでしょうか?
気になる方は是非こちらの記事もおススメです。
詳しくは記事を読んで頂ければと思いますが、こちらのプロモーションは2020年7月に社長になった松信健太郎社長の肝いりの企画の様です。
「新しいことにチャレンジして社員さんたちの成功体験を作りたい」と言う社長の思いを受け、じゃあ動画をやってみよう、と言う流れになったそうです。
ちなみに、この「有隣堂しか知らない世界」に上げられている動画ですが、全て製作チームに委ねられている様で、検閲は一切かかっていないそうです(笑)結構きわどい内容もあるのにすごいですよね・・・。
制作環境について、プロデューサーのハヤシさんはこう語ります。
ここまで権限を与える社長の漢気と、それにこたえるハヤシさんの力量、かっこよすぎます!
最後に
厳しい外部環境の中でも生き残っていける様に、様々な取り組みを行い実績を上げている「有隣堂」。必死さの中にも遊び心も光っていて、応援したくなる企業さんでした。今回もやってみて楽しかった!
最後まで見て下さったあなた、本当にありがとうございました!
これからもこんな感じで「マーケティングトレース」
を続けて行けたらと思います。
良かったら、過去の投稿も見てみてくださいね。
それでは!