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2021年10月の記事一覧
(詩)奇跡のなかのきみ
わたしを呼んだ奇跡のなかに
思いがけずきみがいて
Y字路でわかれてそれぞれ
泣き顔困り顔で
道を急いだはずなのに
ひとつところで落合うなんて
互いにそれが幸いだと
なかなか思えなかった
あの日々が
なつかしくて
きみのいないここまでも
考えられないけど
そりの合わない日がないのも
考えられなかった
でも歯車が噛み合うように
きみが出るとわたしは引っ込み
わたしが突っ張ればきみは引く
プラマイゼロ
(詩)ソング オブ バード
ひとり 暗闇を飛ぶ
夜明け前よりも暗いかなたに
虹がぽっかりと浮かぶ
追いつけないそのむこうに
何があるかは知らない
でもわたしは飛ぶ
すべてをなげうっても
みんなのために
だれかのために
そこにあるものに
手を伸ばしたい
そうすることで
あの日裏切ってしまった
わたし自身に
報いることができる
そう思ったから
でもそんなとき
歌が聞こえた
みんなとみんなをつなぐ
みんなとわたしをつなぐ
過去と
(詩)名前のない日々
名前もなく刻をわたり
誰かのなまえに出会うまで
越冬する花の種のように
時をとめたぼくら
あの日出会ったあのなまえの
けがれのない瞳のこと
もう覚えてないはずなのに
いまもわすれられない
追いかけても行けないところまで
刻の河のむこうまで行ってしまって
影だけを残したなまえを忘れて
ひざをかかえてぼくは眠った
名前も忘れたぼくを起こしたのは
芽吹きを戸惑う小さななまえ
きみのくれたくすぐった