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2021年6月の記事一覧
(詩)忘れることはできない
忘れることはできない
忘れることなどできない
ただのひとつもない
忘れようとして
忘れられるものなど
何をもって
忘れたということになろう
せいぜい
たまたま
起こってしまったことを
覚えてしまったものを
三日分の新聞紙にくるみこみ
ビニール袋に詰めこんで
かたく口を縛り
段ボールとガムテープで
がんじがらめに包みたおし
物置へ乱暴にほっぽりだして
やがてそこにあることを
意識しなくなる
その程
かけらだけ置いてゆく
みんなみんな
かけらだけ置いてゆく
わたしもそう
かけらだけ置いてきた
がらくたなどと
誰が決める
ひとつやふたつ
じゃまになんてなるか
わたしのものなどと
誰が決めた
おまえが手にしたのなら
誰のものでもない
かけらだけ置いてきた
それで充分
かけらだけを置いてゆく
それだけ そっと
世界には名前がついてない
世界には名前がついてない
そういえばそうだった
あたりまえなのに気づけなかった
世界には名前なんてついてない
ただただ概念についた名前で
呼ばれるだけの広い場所
世界には名前などついてない
だれも名前をつけもしない場所に
ぼくらは生きていた
世界には名前すらついてない
そんなことに気づいて
無邪気にはしゃいだ
これでやっと
悪者の心理がわかるようになったと
(詩)土曜の昼にはいつもチャーハンを作って食う
土曜の昼にはいつもチャーハンを作って食う
ひとりぐらしを初めてからずっとそうだ
なぜなのかは覚えていないしどうでもいい
塩けがいつもたりなくてもどうでもいい
うまいとかまずいとかもどうでもよかった
土曜の昼にはいつもチャーハンを作って食う
自衛隊の船乗りは
曜日を海に落っことさないために
金曜には必ずカレーを食うらしい
しかしおれの土曜日のチャーハンに
そこまでの意味があるはずもない
そんなはず