新たな出発に際して
4月20日で朝日新聞社を退職しました。節目に、今の思いと今後の活動について記したいと思います。
4月7日早朝に拙noteにアップした「朝日新聞社による不公正な処分についての見解」はたくさんの方々に御覧いただきました。会社による午前5時の発表を受け、慌てて書いたうえ、転職先への妨害行為が確認されていたこともあり、感情的かつ乱雑な文章になっていたことは否めません。改めて自らの軽率な行動によって皆様にご迷惑をおかけしたことを深く反省しています。
四半世紀に渡る記者生活の最終日、寂しいというよりは、ホッとしたというのが率直な気持ちです。危険地でのルポや、政府や企業の調査報道、外国政府を含めた権力を相手に取材をしてきたことは、日々緊張の連続でした。
その最たるものは、昨年取材をした「LINEの個人情報管理問題のスクープと関連報道」でした。英語や韓国語、中国語のネット上の情報を徹底的に調べました。集めた千数百枚の資料を読み込んで、LINEが中国法人でソフト開発をしており、利用者の個人情報が含まれている日本のサーバーにアクセスできる状態だったことを突き止めました。
リサーチから執筆まで約3か月。「記事にひとつの事実の誤りがあっても調査報道は成りたたない」という朝日新聞社の先輩でリクルート事件を報じた故・山本博氏の言葉を思い出しながら、集めたファクトを徹底的に精査しました。今思い出しても吐き気がするほど、孤独で辛い作業でした。
一方、取材を通じて自らの限界も感じたのも事実です。1週間近く続いた徹夜は、体にこたえました。始まりかけていた老眼に拍車がかかり、白髪も増えました。新聞協会賞をいただいたことで、四半世紀に及んだ記者生活に終止符を打つことを決心できました。
次のステージでは、北京・ワシントンの両特派員として得た知見や経験、人脈を活用して、米中関係を中心とした国際関係の研究を進めていきたいと思っております。米中対立の行方が、新たな国際秩序の動向を握るようになりました。ロシアがウクライナ侵攻につまずいたことで、ますます中国依存が強まることは必至で、米中二大大国の存在感が高まることでしょう。その狭間にいる日本は、どのように生き残ればいいのか。皆様と考えていきたいと思います。
どうぞ引き続きよろしくお願い申し上げます。
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