相続時精算課税の選択とアドバイス
😉相続時精算課税の概要
特定の贈与者からの贈与について、その贈与者から1年間に贈与を受けた財産(「相続時精算課税適用財産」といいます。)の価額の合計額を基に贈与税額を計算し、将来その贈与者が亡くなった時に、その相続時精算課税適用財産の価額(贈与時の時価)と相続または遺贈を受けた財産の価額(相続時の時価)の合計額を基に計算した相続税額から、 既に払った相続時精算課税適用財産に係る贈与税相当額を控除した金額をもって、納付すべき相続税額とする方式です。
相続時精算課税による贈与税は、贈与財産の価額の合計額から、2,500万円(特別控除額)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出することとされています。
また、適用対象となる贈与者は、60歳以の父母または祖父母、受贈者は、贈り者20歳以上の子である推定相続人、または孫となります。
😘暦年贈与との違い
①相続時精算課税の特別控除額(上限2,500万円)は、贈与の時に贈与税の課税がないだけであり、贈与者の相続開始時には、特別控除額を含めた相続時精算課税適用財産価額の全額が相続税の課税に取り込まれる。
すなわち、控除になる金額は2,500万円あるものの、相続時には改めて加算されるものなのです。
これに対して、暦年贈与では、
②暦年課税における基礎控除額(年 110万円)は、相続開始前3年以内の贈与を除き、贈与税はもとより相続税の課税にも関係しない。
😁相続時精算課税を適用した方が有利なケース
①値上がりが予測される財産
相続時精算課税適用財産は、相続開始時にはそのまま相続財産に組み込まれます。
また、その際の相続財産としての評価額は、贈与時の時価となります。
したがって、相続時精算課税適用財産が、贈与時から将来に向けて時価が上がることが予測される場合には、相続時精算課税を適用することは節税対策になります。
②賃貸不動産や高配当の株式
賃貸不動産や高配当の株式などは、その財産自体の価値に加えて、賃貸料や配当といった果実を生み出す財産といえます。
これらの財産は、贈与者にとっては、所有しているだけで自己の相続財産を増加させることになるため、早めに推定相続人に承継させることが考えられます。
推定相続人の家計を助けるという意味合いもあります。
③オーナー会社の株式
贈与者が会社のオーナーであるような場合には、推定相続人(後継者)への代替わりなどの機会に、贈与者は有する会社の株式を相続時精算課税を適用して贈与することが考えられます。
古参の役員がいる場合にも、後継者が会社の株式を所有しているか否かは、後継者のリーダーシップに大きな影響があるものといえます。
④相続税課税がないと見込まれる場合
相続税の課税がないと見込まれる場合にも有利といえます。
相続時精算課税を適用すれば、2,500万円内の贈与時では贈与税は当然かかりませんし、相続開始時になっても相続時精算課税適用財産を加算して、なお相続税の基礎控除内であるならば相続税課税もないわけです。
😎相続時精算課税を適用する場合の留意点
①暦年贈与に戻ることができない
相続時精算課税による贈与を一度選択すると、その贈与者からは暦年課税による贈与税の基礎控除(年110万円)を受けることができなくなります。
②相続時には相続時精算課税適用財産の全額が課税対象になる
相続時精算課税適用財産が無税で移転できるわけではなく(結果的に無税になる場合もありますが)、税金の支払いを先延ばしにしているすぎないということです。
③相続開始前3年を超える場合も課税対象となる
暦年贈与ではあれば、相続開始前3年を超える贈与は生前贈与加算の対象にはなりませんが、相続時精算課税では贈与の行われた時期に関係なくそのすべてが相続財産に加算されます。
④相続時精算課税による受贈者が贈与者よりの先に亡くなった場合
例えば、父から子へ相続時精算課税による贈与を行ったのち、子→父の順でなくなると、相続時精算課税適用財産について、子の相続で課税され、父の相続で再び課税されるという二重課税の問題が発生します。
相続時精算課税の選択に関しては、メリットとデメリットを十分検討すべきであり、税理士などの専門家にご相談されることをお勧めします。