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ワインに深入りしないワインの話(18)~ 罠に陥ったインテリを見分ける方法
インテリとは、頭を使いたがる人たちと定義することにします。
「頭が良い人たち」ではないことに注意してください。
つまり、頭の良くないインテリが存在するということになります。
モノには、適正価格というものがあります。
良いものは高い。稀少価値のあるものは高くなる。
需要と供給なのだから、それでいいではないか。
そういう考えも、あるでしょう。
さはさりながら、「いくらなんでも、それは高いよね」という水準になってしまっているモノがあります。
お酒の世界では、サントリーウイスキー「山崎」「響」のシリーズとか。
ブルゴーニュやナパのカルト化したワインとか。
当のご本人たちは、真剣に追っかけてますから、外野からとやかく言われることが大嫌いです。
なので、「只今絶賛追いかけ中」の人たちには、こちらから何も申し上げることはありません。
申し上げたいのは、その周囲におられる皆様に対してであります。
絶賛追いかけ中の方々は、「入っちゃってる」人たちです。
言ってみれば、トランス状態です。
その演説が始まると、なにしろご本人から発せられる「氣」の圧力がすさまじいので、思わず圧倒されます。
ちなみに、この「氣」の旧漢字は、四方八方に「気」が出ている象形文字として、気功の世界で好まれるようです。
圧倒されるだけならいいのですが、その言説内容に影響されてしまい、最初は聞いているだけだったのに、弟子入りしてしまう人が散見されるので、要注意です。
こうして、法外な(というと真っ赤になって怒られますが)価格になっている稀少品を追いかける仲間が増えていきます。
料理屋さん、飲み屋さん(銀座の高級店を含む)、日系エアラインなど、「お客様の声を承りますモード」の濃い業態が、こうした人たちの餌食になります。
ご来店の際に切らしていると大きな声でお叱りを頂戴しますので、暴騰している2次流通に手を出すことになります。
こうして、価格が価値の疑似証明書になるという逆転現象が発生します。
このような常軌を逸した世界に足を踏み入れないためには、自分自身の中に常識ラインを構築しておくことが王道です。
確固たる自己規範があれば、間近でそのような偏執に接しても、馬耳東風で平然としていることができます。
猛烈な勧誘は、新興宗教やネットワーク販売ばかりではありません。
声の大きい人は、別に勧誘するわけではないのですが、影響力と説得力が高いために、追随型の人たちを巻き込んでいくのです。
いかにそのモノが優れているか、高くても入手する価値があるか・・・について、熱く語る論理は(一見)明快です。
罠に陥ったインテリは、それが罠ではなく求めていた楽園なのだと理路整然と解説します。
店番は、そうした対象となっているお酒が悪いとか、劣るとか、美味しくないとか、そのようなことは一切申しません。
それどころか、良いもの、高品質のものだと思います。
ただ、妥当な価格帯を飛び出してしまった以上、深追いするのは大人(たいじん)の作法とは思えません。
そこで、星の数ほどもある代替候補のなかから、品質と価格のバランスにすぐれた、筋の良いお酒を選んでお届けしています。
同時に、ご自身の中に正しい鑑識眼を備えていくお手伝いをしています。
味覚の神経と判断の前頭前野を、「筋の良い妥当な価格のワイン」というラインで鍛えていくエクササイズとは、カリキュラムに沿って定期的に美味しいワインを飲むだけです。
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