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デザインって結局 「見た目」のこと?

「デザインって見た目を作ることですよね」
デザイナー以外の方々は、このように思っているのではないでしょうか。 たしかに、デザイナーは見た目を作っていますよね。


では、デザイナーはどう思っているのでしょうか。
「デザインは、情報設計・コンセプトメイキング・体験設計・リサーチ・コミュニケーション・ブランディング・課題解決….」

とても多くのことをやっているようです。周りからは「見た目を良くする人」と思われていますが、自分たちはそうではないと主張しています。



そんな私も心の中では「見た目を良くすることだけではなく、デザインの役割は沢山あるよ」と思っています。ですが、「むしろ見た目で勝負している」と思っている自分もいます。



そこで今回は「デザイン」と「見た目」の話です。「デザインって見た目のこと?」という問いに対し、なぜ私は「見た目で勝負している」「勝負すべき」と思っているのかについて言語化したいと思います。

そのためにはまず、デザインが完成するまでの過程を説明していく必要があります。



1. どこにゴールを設定するのか

自分の気持ちが動くものでなければ、
世の中の人たちの気持ちを動かすことはできない。

佐藤可士和 氏(Adobe MAXにて)

作り手側として何かをアウトプットをしていると、この言葉の重要性がとても良く分かります。

どこにゴールを設定しているのか

ということです。制約もクリアしている、伝えたいことも表現できている、他社との差別化もできている。そのうえでさらに上を目指し、どれだけ気持ちが動くクリエイティブになっているのか。ゴールの設定をしています。

この言葉のなかの
「自分」とは、プロフェッショナルであるデザイナー。
「世の中の人」とは、デザインに全く興味の無い人も含めた世の中の人。
2者の立場で「デザインを見る」必要があります。


2. ふたつの立場を行き来する

2者を少し言い換えて
1  デザイナーの自分(プロフェッショナル)
2  非デザイナーの自分(架空)

つくり手と受け手、
ふたつの立場を何度も何度も行ったり来たりすることが大切です。

これはどの職種にも当てはまると思います。
「相手の立場になって考える」ということです。見た人がどのように感じるかをよく考える。とても大切なことですね。

デザインといっても、UIデザイン、工業デザイン、空間デザインなど…様々なデザイン領域があります。ここでは私がキャリアを築いてきたグラフィック領域、コミュニケーションデザイン領域についてのお話をします。

デザインをするときに考えることは主に以下です。

・納期(設定された期日に間に合うのか、延ばすことが可能か)
・予算(理想ドリブンで考えたのち、交渉できる余地はあるのか)
・クライアントからの要望(全てを受け入れるべきか、懐疑的に検討)
・社内メンバーの意見(デザイナー、非デザイナー)
・コンセプト(シンプルでコアなキーワード)
・理想のアウトプット(ゴールを設定)
・理想が社内のスキルで実現可能なのか(協力会社に依頼するのか)
・優位性 / 差異性をどこまで言うのか、表現するのか(何を言わないのか)
・今回のミッションに沿ったアイディア、構成、デザインになっているか
・誰をアサインするか(カメラマン、イラストレーター、レタッチャー)
・ブランディング観点、マーケティング観点、双方に不都合はないか
…など

PJが動き出すと上記の項目がそれぞれうごめき出し状況が随時変わっていくので、その都度臨機応変に最善の判断をし進めていく必要があります。

上記の項目を何も知らない、そもそもデザインに全く興味がないであろう世の中の人たちに「見てもらう」ことを目指します。

常に「見てもらえない前提」で考えます。

人は物事を捉える際に、最初の0.2秒で感覚的な取捨選択をします。(心理学:初頭効果) 0.2秒で自分に関係のあるもの・魅力的な情報として捉えられ、デザインが選ばれなければいけません。


3. 優位・差異を土台にする

アイディアが出ない、コンセプトが決まらない、ということはありません。製品そのものや企業の内側に魅力(答え)があるので、それを表現します。時間がかかったり悩んだりしますが、結局考えの土台となるのは「優位・差異」の部分です。他と比べて何が優れているのか、何が異なるのか、を「独自の切り口」且つ「気持ちが動くかたち」で表現し着地へ向かいます。


4. 中間を探る

デザインは相手に何かを伝えるときの手段です。そのとき当然「伝わる」必要があります。ではどのような表現であれば伝わるのでしょうか。

私は常に「中間」を探しています。
ビジュアルや言葉の表現、情報整理でも、「中間」の程良い情報量は内容理解を可能にし、伝わる速度を上げます。

●情報量が少な過ぎる(図:左)
何が言いたいのか理解できない。説明が無く、不安な気持ち。

●情報量が多過ぎる(図:右)
多くの情報が見えるが、結局何が一番言いたいことなのか理解できない。美しくない。見る気持ちにならない。


5. デザインの二面性

最後に。デザインはリリース前とリリース後で扱いが異なります。

●リリース前(社内)
社内メンバーに、デザインのコンセプト・ロジック・展開・体験を言語化し意味を分かりやすく説明・プレゼンします。1〜4で説明したようなことを踏まえ、なぜこのデザインであるべきなのかを伝えます。

●リリース後(社外)
リリース前に社内で説明してきたことは、リリース後世の中の人たちに説明することはできません。且つ、多くの競合デザインが周りに溢れるなか、0.2秒という一瞬で直感的に選ばれる必要があります。

「表現」→「表に現れる」
デザインを世の中にリリースした後は、
目に見える情報のみでメッセージが伝わることを目指します。

見た目で勝負しなければならない理由はここにあると思います。


5. リリース後は見た目で勝負

デザインとは結局は見た目のことである

ある著名なデザイナーの方がこのようにおっしゃっています。
この言葉をそのまま受け止めるのではなく、リリース後は説明できない、結局は見た目で選ばれるか否かが決まる、という背景を含めて理解し責任を持つ必要があるということです。

みなさんはどう思いますか?

もちろん見た目だけでなく、デザインを語るうえで必要な工程・要素は沢山あり、そのすべてが大切だと思います。
役割と魅力が拡大しているデザインと真摯に向き合い、考えを常にアップデートしていきたいと思います!



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