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「最後の一般研修」
一般研修 最終回
今日で、私が担当する一般研修、全30回は最終日を迎えました。4人の新人先生たちは、元気に研修を終えました。
最後の研修のテーマは「学び続ける教師」。
「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」や「教育課程企画特別部会」の資料から1月に行われたBett UKのことなども話題にしながら、これからの教育に思いを馳せました。そして、今、話題のドキュメンタリー映画「小学校、それは小さな社会」の短編版「instruments of a beating heart」を観ました。
instruments of a beating heart
この作品は現在、第97回アカデミー賞 短編ドキュメンタリー賞にノミネートされており、海外からも高く評価されているそうです。
先生たちはストレートに、子どもたちの仲間を思いやる行動や担任の先生や音楽の先生の優しく細やかな配慮や声かけ、そして毅然とした対応と成功体験に導く手腕に感動したようでした。
日本の集団性の強さと協調性の高さは世界が真似たいことの一つ
確かに、映画の中の先生たち、そして子どもたちは本当に素晴らしい。
また、こういう積み重ねがOECDのPISA調査の高い結果に結びついたり、日本人の美徳とも言える、協調性、慎ましさ、思いやりやホスピタリティーの高さにつながっていることの間違いがないことでしょう。
長編版の映画予告の中で「日本の集団性の強さと協調性の高さは世界が真似たいことの一つ。これは実は諸刃の剣であることはよく知っておく必要があります。」と國學院大学の杉田洋先生はおしゃっています。
どういう意味かを深く考えるために、新人先生たちにダウトを投げかけてみました。
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新人先生へのダウト
この映画を「良い」とする人へ
◇ここまでするのが先生の仕事なのですか
◇失敗に終わったら心の傷になりませんか
◇たまたま結果がよかっただけではないですか
◇同調圧力を強めていませんか
◇ほぼ不登校になっていたのではないですか
◇児童が「やめる」と言ったらどうするのですか
◇途中で保護者からクレームが入りませんか
◇全ての先生がこんなことができるのでしょうか
◇保護者が同じことを求めるようになりませんか
◇同じことを求められてクレームが増えませんか
この映画を「問題がある」とする人へ
◇日本の教育は世界的でも抜きん出ていませんか
◇日本の教育の良さがあるのではないですか
◇良さを受け継がなくてよいのですか
◇責任感を育てることは必要ないのですか
◇思いやりが育っているのではないですか
◇成功体験が子どもに必要ではないですか
◇将来、社会を作る力は育てなくていいのですか
◇集団性の強さは必要ないのですか
◇協調性は社会でも大切ではないですか
◇先生の仕事の魅力が広まるのではないですか
ダウトに大きく揺さぶられながら、新人先生と対話する機会になりました。
特別活動のこれから
戦時中、学校は軍事教練の場となり、先生たちは教え子を戦場に送りました。戦後、そのことを痛切に反省しました。
新しい社会を作る。未来の主役は子どもたち。学校は子どもたちのもの。そして、小学校という小さな社会は、やがては未来の社会になる。これが戦後の先生たちの思いでした。
その活動は、「特別教育活動」と呼ばれ、「特別活動教育」から「特別活動」と脈々と受け継がれてきたのです。日本の集団性の強さと協調性の高さを養ってきたのは、特別活動の成果だと思います。
しかし、その素晴らしさは「諸刃の剣」でもあります。これからの時代を担っていく新人先生も含めて、現場でも議論する必要がありそうです。
この映画は、初任研の最後に、これからの教育の在り方について対話するきっかけを与えてくれました。
今、学習指導要領に向けての議論が始まっています。現場としては、学校の文化に特別活動が果たす役割は大きいと思います。
これまでの良さを生かしつつ、新しい社会を作る教育課程を目指して議論の場で扱われることを期待して、初任研は終わりました。
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