僕の好きな町の図書館 第1章 その2
前回のストーリーはこちらです。
今回のストーリー
ある冬の夜、僕はアルバイトを終え、お店を閉めた。
そのままの足取りで近くのカフェに向かった。
カフェは夜も開いており、人がたくさんいた。
カフェの中には先に店長の博子さんが座っていた。
「お待たせしました」
と僕は博子さんに言った。
「こちらこそ、アルバイトお疲れ様。
ところで、相談事ってなにかしら」
博子さんは僕に尋ねた。
「実は僕、店長になりたいのです。
そして、もし店長になれなかったら、
この本屋でのアルバイトをやめようと考えています」
僕は博子さんに言った。
「なるほど、そういう相談事ね。
話が長くなりそうだから、まずは何か食べましょうよ」
博子さんは改まって僕に言った。
「そうですね」
僕は博子さんにそう言われて飲み物を買いに行くことにした。
外は寒かったので、温かいものを飲みたいと思った。
夜にコーヒーを飲むとカフェインが効きすぎて眠れないので、
普段夜遅い時間にコーヒーを飲むことはない。
ただ、今日は博子さんに重要な話をすることになるので、
眠気を抑えて話をすることに一生懸命になりたいから、
ブラックコーヒーとケーキを注文した。
注文したコーヒーとケーキを持ち席へ戻ってくると、
博子さんはスマートフォンを操作しながら待っていた。
僕を見ると博子さんはスマートフォンを置き、コーヒーを見ながら
「あら、この時間にコーヒーは珍しいわね。
よほど本気で話すことがあるということね」
と言った。
博子さんに僕の熱意が伝わったような気がした。
僕が席に座ると、早速博子さんが言い始めた。
「要するに何か野望があるということでしょ。
どんな野望なのか教えてよ」
図星だった。
ただ、早めに意図を理解してもらう方が好都合だったので、
僕は博子さんに話をすることにした。
「実は僕が東京に引っ越し、本屋でアルバイトを始めたのには、
野望というか強い動機があります」
「強い動機って何かな」と博子さんは言った。
「この前うちの書店が図書館を買収したニュースをご存じですか」
「知っているわよ。
ただ、私は店長というだけで経営には関わっていないから」
「その図書館は私が好きだった図書館なのです」
「なるほど。そういうことね。
君が住んでいた町の図書館に携わりたい、というわけね」
「はい、その通りです」僕は言った。
「それで店長になり、やがては経営者になりたい、というわけね」
博子さんは理解した様子だった。
そして、ケーキを食べている僕に何かを言おうとした。
次回へ続く