ロングパスの高さにこだわれ！

　今回は「ロングパスの高さの正解」というテーマでお話させていただきます。
　サッカーにおいて、キックの飛距離は重要です。どれだけボールを遠くに飛ばせるのかで、プレーの幅が大きく変わります。単純に、１０ｍしかボールを飛ばせない人は、１０ｍ以上離れた選手にパスを送ることができませんん。味方選手は届く距離まで近づかなければパスをもらうことができず、相手のディフェンダーは、１０ｍ以内の距離にいる選手へのパスコースを全て塞げば、理論上守備が完結するということになります。
　逆に、５０ｍほどボールを飛ばせる人は、ほぼピッチ内にいるすべての選手にパスを送ることができます。裏へのロングパスも選択肢になるため、相手のディフェンダ―は、むやみにディフェンスラインをあげることもできなくなります。
　サッカーの試合をテレビで見ているときを思い出してください。冬になると地方の放送局はテレビで高校サッカーを映します。このとき、ゴールキーパーが蹴るゴールキックやコーナーキックのボールの高さを思い出してください。次に、Ｊリーグの試合です。ゴールキーパーのゴールキックやコーナーキックのボールの高さを思い出してください。すると、気付くと思うのですが、ボールの速さが全く違います。高校サッカーのロングキックは、ほとんどが山なりのボールです。速さが無いボールを遠くに飛ばそうとすると、ロングキックのボールの高さは自然と高くなります。これだと、蹴る前はどれだけフリーで、いい立ち位置に立っていても、ロングキックされたボールが来るまでに、相手ディフェンダーが寄ってきます。
　高校サッカーで、ショートパスを回すチームが強いのは、フィジカル的に出来上がっていない選手が多いことや、ロングパスの高さや速さを調整するテクニックのレベルが、まだ高いレベルに達していないことが原因の一つと言われています。
　ちなみに、チャンピオンズリーグに出場しているような、海外トップリーグに所属するチームの選手だと、多くの選手がロングパスの高さを調整してきます。速いライナー性のボールを、５０ｍ以上飛ばすことができます。特に、縦に速いサッカーができるチームは、ディフェンダーや守備的ミッドフィルダーの選手のロングキックのテクニックがずば抜けています。正確性だけではなく、速さや高さが調整され、様々な球種を蹴ることができます。みなさんが思っている以上に、ロングキックのレベルは「できる人」と「できない人」で、大きく差があるのです。ただ単に、同じくらいの距離を飛ばせるとか、同じ種類の球種が蹴れるとかではレベル判定できないのです。
　さて、ここからまとめに入りたいと思います。テーマになっているロングキック、その高さの正解ってどの高さでしょうか。
　結論から申しますと、ロングキックの高さは「相手選手がジャンプしたときの頭の高さを安全に越えたうえで、低ければ低いほどいい」です。高さ何メートルといった決まりはありませんが、相手の頭さえ超えれば、できるだけ低い方が良いのです。なぜなら、ボールが描く軌道の距離は、低ければ低いほど短くなって、味方選手により「速く」届くようになるからです。山なりのボールは、受け取る側が止めやすいというメリットがありますが、試合のレベルが高くなればなるほど、山なりのボールを味方選手が足でトラップできるような時間はありません。受け取る側は、速いライナー性のロングキックを、簡単に止められるテクニックが必要になります。
　ロングキックのボールの高さが、低ければ低いほどいいというのは、ゴールキックやロングフィードだけではありません。コーナーキックやセンタリングなども同じです。テレビで見てると伝わらないことが多いですが、センタリングやコーナーキックのボールの速さは尋常じゃないです。
　最初に高校サッカーの話をしました。ロングキックのボールの速さがゆっくりという話をしましたが、誤解しないでほしいのは、プロと比べると速いということです。高校サッカーで全国大会に出場しているようなチームの選手たちは皆、他の高校チームの選手とは比べものにならないくらい、速いロングキックを蹴っています。
　話をまとめます。ロングキックのボールの高さは、「相手選手がジャンプしたときの頭の高さを安全に越えたうえで、低ければ低いほどいい」です。覚えておいてほしいのは、みなさんが思っている以上に、ロングキックのレベルは「できる人」と「できない人」で、大きな差があるということです。ただ単に同じくらいの距離を飛ばせるとか、同じ種類の球種が蹴れるとかでレベル判定できることではありません。ロングキックのトレーニングを行う時は、今日のお話を意識して改善してみてください。

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