選手のプレーから思考を理解する

　今回のテーマは「選手プレーから思考を理解する」です。指導者の多くは「ボールを持っているときのプレー」や「ボールがないときの動き」について、選手にアドバイスをします。ドリブルで相手を抜くときのフェイントや、センタリングに合わせるシュートの蹴り方、相手のディフェンスを剥がすための動きや、オフサイドにならないための動きなど、教えてくれるものはいつも「認知」「思考」「判断」「実行」の4つのうち「実行」のことばかりです。

　「実行」とは「できるかできないか」であって、このレベルを上げるトレーニングは「できる回数を少しでも増やす」が目的です。

　スペインとアルゼンチンでプレーしていて「実行」のレベルよりも大切なのは「認知」や「思考」「判断」のレベルだということがわかりました。どれだけ「できるプレー」が多くても、間違った思考でプレーを実行していたなら、それは価値がないプレーになってしまいます。

　だからこそ「認知」や「思考」のレベルを上げるためのトレーニングが大切です。選手がどこでミスをしてしまっているのか、正確に理解していくことが指導者の仕事なのです。

　これまでたくさんの子供たちと関わりながら、サッカーを教えてきました。そこで保護者からよく聞く話があります。それは「うちの子、みんながボールに集まってボールの取り合いをしているときに、一歩外に引いて、全然ボールを取りに行きません。」「参加しないです。」という話です。つまり多くの保護者が「みんなと一緒にボールの取り合い合戦に参加してほしい」「たくさんボールに触って欲しい」と考えていることがわかります。子供の親やサポーターであれば、こんな意見もありだと思いますが、指導者であればこの考えはよくありません。優れた指導者は、選手のプレーを見てその選手の「思考」を理解する必要があります。

　「一歩外にひいて、全然ボールを取りに行かない」という動きは、どんな思考から来ているのかわかるでしょうか。

　子供の中には「怖くて入れない」とか「そもそもサッカーに興味がない」という子もいますが、そういった子は選手としてのレベルアップをする前に、サッカーを好きになって、ボールに触りたくなる必要がありますよね。

　ただ、こういった理由で、みんなの輪に入ってボールを取りに行かない選手は、実は少ないです。これは無意識のうちに「これ以上近寄るとボールに反応できない」ことがわかっていたり、無意識のうちに「自分がボールを持ったときのスペースと時間を確保しよう」としていたりすることが多いです。実はとても良い動きだったりするのです。

　「ボールに触りたい」という気持ちを抑えきれずに、密集地に入っていってしまったり、「パスが欲しい」という理由で、どんどんボールに近づいてしまう選手は多いです。そんな選手が多い中、距離感を大切にしているのはすごいことです。

　しかし、子供たちの親は「我先に」とボールにさおりに行ってほしいと願っています。これは成長ではなく、退化を願っていることになります。むしろ、この選手を成長させるのであれば「これ以上近寄るとボールに反応できない」と言う今のレベルを「どれだけ近寄っても相手のパスドリブルに対応できる」というレベルにしてあげれことが大切です。そうすれば、自然と自分のタイミングでボールに近づくことができたり、ボールから離れることができたりするのです。その上で、ベストの立ち位置の見つけ方を教えていかなければなりません。みんなが密集しているのであれば、近寄る必要はありません。むしろ、一歩外でボールがこぼれてくるのを待つ方が良い時が多々あります。

　この話はひとつの例に過ぎませんが、僕が言いたいのは、「どうしてそんな動きをしているのか」「どうしてそんなプレーをしたのか」を考えていくと、その選手の思考がわかるということです。指導者は選手の思考を正しく理解して、正しいアドバイスをすることが大切ですよ、というお話でした。

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VORAZ FUTBOL CLUB(ボラスフットボールクラブ)は、スペイン産ポゼッションフットボールを体現する、滋賀県大津市のサッカークラブです。現在は、日本サッカー協会にチーム登録し、滋賀県・社会人サッカー連盟に加盟しています。活動の場は、主に日本サッカー協会主催の関西社会人サッカー・滋賀県社会人サッカーリーグ戦です。

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