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世界的なパンデミック下におけるコミュニケーションの改善

この記事は以下の記事の翻訳となります。

ドイスト(Doist)がリアルタイムコミュニケーションから脱却した理由

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ドイストは典型的なソフトウェア会社ではありません。本社はシリコンバレーになく、ベンチャーキャピタルからの資金調達もありません。従業員はリモートファーストで、各地に分散しています。彼らは「出口戦略」を持っておらず、それを持つことに興味もありません。彼らは急速な、やる気重視のメンタリティを実践しません。そして、「データに基づく情報」を持っているものの、それらの指標と数値によって一喜一憂することもありません。

しかし、それは会社が野心的ではないという意味ではありません。実際には、真逆なのです。CEO兼創設者であるアミール・サリヘフェンディック氏は、会社が6か月間実施したOKRの実験は、会社が当初の目標よりも「より多く」を達成し、「10%ではなく10倍を達成する」ためのインスピレーションであると評価しています。Googleベンチャーズのシニアパートナーであるリック・クラウがYouTubeビデオで検索エンジンの巨人がOKRを使用して目標を設定する方法を説明したものによって、彼は2015年にこの概念を偶然見つけました。彼は会社でそれを試しに実装することに決めたものの、6か月間のみの実践となりました。

同社は、ドイストの編集者であるベッキー・ケインがOKRの「ライト」バージョンと呼んでいるもの、つまり「ドイスト式 目標(Doist Objectives)」を採用することになりました。当時、 ジョン・ドーアのベストセラー本 『Measure What Matters(メジャー・ホワット・マターズ)伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR』 はまだ出版されていませんでした。サリヘフェンディック氏がOKRを実装する前に本を読んだとしたら、彼はおそらく別のことをしていたでしょう。それでも、彼はドイストでの実験中にいくつかのことを学び、今日に至っています。

サリヘフェンディック氏は、OKRを「意欲的」だと捉えていると話します。なぜなら、全てを達成することができなくとも、70%を満たすことで多くの成果を見込める期待があるからです。サリヘフェンディック氏曰く、それが目標の設定に関してドイストが現在持っている考え方です。「実際に私たちの製品や市場についてどう考えるかを設定する際、それらは非常に野心的です。何かに取り組むのであれば、10%の改善をしたいのではありません。私たちが目指すのは、現在よりもすばらしいバージョンになる可能性があるもので、それによってより多くの人々にリーチする方法なのです。」

リアルタイムコミュニケーションからの脱却

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これらの野心的な目標の1つは、リアルタイム通信(多くの職場でのデフォルト)から非同期通信に移行することでした。つまり、デフォルトでメッセージへの即時の応答が期待される環境ではなく、全メッセージへ即答しなければならないとのプレッシャーを従業員に感じさせない構造を確立したいと考えました。

多くのハイテク企業と同様に、ドイストはSlackの初期の採用者でした。Slackは、多くの職場でリアルタイムコミュニケーションを標準としたメッセージングアプリです。当初、彼らはSlackのチャットルームのような機能を革新的だと感じていました。 サリヘフェンディック氏がブログの投稿に書いているように、「大陸全体のチームメンバー間のコミュニケーションが爆発しました。アイデアやgif(大量のgif)を共有しました。バグを報告し、仲間内のジョークもできました。私たちは成功を祝い、仕事を改善する方法について話し合いました。ほぼ一晩で、30人のグループから真のチームになりました。」

しかし、Slackを使用してから2年後、会社はSlackを完全に中止することを決定しました。サリヘフェンディック氏は、30か国以上に拠点を置く完全分散型チームのCEOとして、常にオンラインでいなければならないように感じていました。彼は、エンジニア、ライター、デザイナーなど、じっくり仕事をする必要のある者たちが、1日中チャットルームを確認しながら最高の仕事をするのは難しいと感じた事にも言及しています。

同社のマーケティング責任者であるブレナ・ローリー氏は、Slackは当初、離れたチームメイトに親しみを感じさせていたが、すぐにストレスの原因となったと語りました。「米国のドイストと太平洋のタイムゾーンにいる数少ない人々の1人として、朝起きると終わりが見えず次々と湧いて出るメッセージをふるいにかけていました。すべてのGIF、おしゃべり、複数のトピックが入り乱れる中で、関連性を見つけて会話を理解することは、信じられないほどの負担でした。私が眠っている間に決断が下され、それもフラストレーションを高めました。」

サリヘフェンディック氏は、インスタントコミュニケーションをデフォルトにすることは分散型企業にとって持続可能ではないことに気づきました。それでも、Slackの競合他社の提供内容を確認し、いずれにも非同期通信を提供する能力はないことに気付きました。彼は、彼のチームと一緒に、独自のツールを構築することが何を意味するのかについて長く、そして一生懸命考えました。

「私たちはより大きな物事のスキームの中にある、非常に小さな会社です。私たちは市場に参入し、何千人もの人々が働いている数十億ドル規模の企業であるマイクロソフトやSlackと競争しようとしています。ビジネス的には、参入して競争しようとしても意味がありません。」しかし、彼らはとにかくそれをすることを選んだのです。

データ主導のアプローチではなく、データにヒントを得るアプローチを取る
ドイストは、サリヘフェンディック氏が「北極星(North Star)」と呼ぶものに基づいて目標を設定します。これは通常、特定の目的のために高品質の製品を作成することを中心に展開します。会社が非同期通信から離れたとき、彼らには数値の北極星がありませんでした。

彼らは単に「いつもつながっていることにストレスを感じ、圧倒された」と感じました。しかし、Twistと呼ばれる新しいツールを構築することを決定するとすぐに、北極星の目標は、「最も有用な製品を作成すること」になりました。それを評価するために、彼らは彼ら自身が使用するであろう製品の構築に焦点を合わせました。

サリヘフェンディック氏は、ドイストでのアプローチをビル・ウォルシュの著書「スコアは自分で世話をする( “The Score Takes Care By Itself)」に倣っています。この本はウォルシュが元NFLコーチとしてサンフランシスコの49ersを弱小チームから一強へと変換させた軌跡を記録したものです。サリヘフェンディック氏曰く、ウォルシュはスーパーボウルでの勝利に焦点を当てるのではなく、ロッカールームが清潔であることを確認したり、毎日の練習に参加したりするなど、基本的なことを重視していたと話します。「私たちの目的はそれに似ています」とサリヘフェンディック氏は言います。「スコアのために行動することが目的ではないのです。」むしろ、絶えず彼らが最善の仕事をしているかどうかを自問し、彼らが進むにつれて結果を評価することにあります。

もちろん、それを行うために、サリヘフェンディック氏には数字を見る必要があります。たとえば、彼らが定期的に監視するものの1つは使用パターンです。幅広いレベルで、会社は毎月の定期的な収益をすべての従業員が見ることができるようにしています。しかし、この指標に注意を払うことは会社の健全性と持続可能性にとって重要であると彼は認めていますが、これらの数字はすべてではなく、市場の有効性の1つの指標にすぎないと強調しています。

サリヘフェンディック氏は、ドイストの製品開発へのアプローチを「データ主導」ではなく「データにヒントを得るもの」だと表現しています。 これは急成長しているスタートアップの間でしばしば見られる手法とは非常に異なるアプローチであり、これらのスタートアップでは非現実的な傾向のある指標を中心に目標と優先順位を集中させることが多いと、サリヘフェンディック氏は述べます。その結果、顧客に利益をもたらさない戦略を採用してしまう可能性があります。

「シリコンバレーのスタートアップは、資金調達を正当化するために年間2〜3倍の成長を促進する必要があるため、最適化戦略を使用します。たとえば、彼らのアプリの使用時間を増やしようとします。製品を常習的に使用させることが、爆発的な成長への近道なのです。それは私たちがドイストで行うことではありません」とサリヘフェンディック氏は言います。

実際、それはドイストがTwistで実現しようとしている現実とは正反対です。Twistを構築する主な理由は、企業が腰を据えて仕事するための余裕を作ることができるようにすることです。これは、インスタントコミュニケーションを行う職場では起こり得ないことです。

「現在の世界では、実際に素晴らしい仕事をしたいのであれば、本当にじっくりと集中する必要があります」とサリヘフェンディック氏は言います。従業員が常にメッセージを確認しなければならない場合、それは不可能です。困難な問題の解決に専念する時間を見つけるのが難しくなるだけでなく、ストレスや不安の状態が常に続く可能性が高くなり、実際に重要な仕事をする精神的能力が枯渇してしまいます。」

Twistに関して言えば、製品の成功に関係する指標は、「デイリー・アクティブ・チームズ(Daily Active Teams)」でした。 サリヘフェンディック氏は次のように述べています。「この指標は、チームがTwistをワークフローに統合し、チームにとってTwistが定期的に有用性を持つことを示しています。」もちろん、このプロジェクトの成功は、サリヘフェンディック氏自身の従業員が製品をどのように見るかにもかかっており、それは必ずしもスムーズな移行ではなかったと認めています。

同社がダイレクトメッセージングシステムを構築し、全員をSlackからTwistに移行したとき、「多くの不満がありました」とサリヘフェンディック氏は言います。Slackのような洗練された機能はなく、当初は社内に不要な部門間の断絶を生み出しました。そのとき、サリヘフェンディック氏は、非同期通信とリアルタイム通信のバランスをとらなければならないことに気づきました。今日、サリヘフェンディック氏は、ドイストの通信の70%が非同期で行われていると推定しています。彼らがまだリアルタイムのコミュニケーションを使用している数少ないものに、1対1のフィードバック、緊急事項についての議論、および年に数回行われる物理的な「チーム結合」活動が挙げられます。

企業文化の重要性

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サリヘフェンディック氏は、他の目的を達成するのと同じ方法で、Twistの構築と非同期通信への会社の移行に取り組みました。すべてのコストで単一の指標を用いるのではなく、野心的な目的に触発された有機的なプロセスに焦点を当てています。Slackから離れて4年、サリヘフェンディック氏はプラスな結果を出しています。特に、10年間の自発的定着率が97%という点も、それを実証している1つの指標です。サリヘフェンディック氏は、「デフォルトとして非同期通信を使用すると、非常に良い環境が生まれます」と語っています。

ローリー氏もこれに同意しています。「非同期でのコラボレーションにシフトすることは、個人にもチームにとっても大きな変化をもたらしました。人々はすぐに対応しなければならないとのパニックを感じないため、私たちはより思慮深く包括的な会話ができます。ディスカッションには少し時間がかかるかもしれませんが、人々が実際にどのように対応するかを検討するための余裕と時間があるので、ディスカッションは最終的にはより豊かになると確信しています。」

Twistの構築は、ドイストの野心的な目標でした。しかし、同社はこれに投資をする選択をしました。それは、彼らが世界で見たいと願うものについての哲学と一致していたからです。そして、それこそがOKRが推進する考え方です。つまり、企業の「より高みへの希望」を達成するための要になり得る何かを構築することへの志向と、野心です。

OKRは、企業がその目標に近づくために何が重要で、何が必要かを識別するためのツールを提供します。ドイストにとって、それは彼らの仕事の文化をより良く、そして他の職場のために変える新しい製品を作ることを意味します。サリヘフェンディック氏がブログの投稿に書いているように、「穏やかな、非同期通信は標準ではありません。集中とバランスは企業が成功するために担保しなければならない重要な資産であると認識することには、大きな思考の変化を伴うものです。我々はその変化をもたらすことができる企業が、将来的に最も成功するだろうと期待しています。」

(Publisher: Anisa Purbasari Horton)

(翻訳者:石川佳那様)

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