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メンバーシップ型採用×ジョブ型採用で“配属ガチャ”問題を解決。これからの採用を考えてみた

日本において度々議論される、「メンバーシップ型採用(雇用)」or「ジョブ型採用(雇用)」どちらを推進するべきか?という議論。

元来、新卒を総合職として採用する「メンバーシップ型採用」が主流であった日本においては、職務や勤務地を入社時点で明確にする「ジョブ型採用」を推進するべきという声が大きくなっています。
特に問題視されているのが、学生の間ではいまや共通語となった“配属ガチャ”問題。

今回は“配属ガチャ”と揶揄されるこれまでの取り組みと、各社の対策から、これからの配属について考察してみました。

1. 配属ガチャとは

配属ガチャとは、特に新卒入社時に「職種や勤務地が希望とは異なり、会社の都合で決定されてしまうこと」を指します。
配属される社員から見ると、辞令が出るまで職種や勤務地が分からないという状況が、まるで当たりが出るか分からないソーシャルゲームの「ガチャ」のようだと感じるさまから生まれた言葉です。

“配属”自体は新卒一括採用が始まった20世紀初頭から当たり前のように行われてきた行為ですが、なぜ“配属ガチャ”と揶揄されるようになってしまったのでしょうか?

そこには冒頭でも触れたジョブ型採用が台頭しつつあることで、メンバーシップ型採用を前時代的な手法と捉えられる機会が多くなったことと関係していると言えるでしょう。

果たしてメンバーシップ型採用は前時代的と言えるのでしょうか?
そうだとすれば、これからの日本企業はどのように採用を行なっていくべきでしょうか?

改めて各採用パターンを整理して、考察していきます。

2. 人材採用のパターン

まず、人材採用のパターンは大きく分けて下記の3つに分類できます。

いわゆる日系企業に多い、メンバーシップ型
海外や外資系企業で一般的な、ジョブ型
コンサルティング業界などで主流の、プロジェクト型

それぞれ特徴が異なりますが、特に“配属”と密接に絡んでくるメンバーシップ型採用においては、入社後の配属パターンも多岐に分かれます

まずは下記の表で各採用形態の特徴についてまとめました。

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「何を評価基準とするか」が各方法で異なるため、求められるスキルやキャリアップのプロセスにも大きく違いが出てきます。

その中でもメンバーシップ型採用に関しては、配属パターンもまとめましたので、以下で改めて各方法の違いを見ていきます。

■メンバーシップ型採用とその配属パターン

新卒一括採用をベースに、人物ベースで職務を定めないメンバーシップ型採用。
日本においては約1世紀に渡り主流な採用手法であったため、メンバーシップ型採用とは切っても切れない“配属”も下記のように多種多様です。

・事業部(カンパニー)配属型
日本において最も一般的な配属パターンと言えるでしょう。扱う商材や担当顧客で大枠の配属が決まり、その後は同じ事業部内でジョブローテーションが繰り返されるパターンです。
商材が多岐に渡る総合商社や大手メーカーなどで採用されやすく、一つの業界/商材に造詣が深まる反面、職種の専門性が磨かれづらい特性があります。

・特定部門一斉配属型
金融機関や小〜中規模のメーカーなどで採用されやすいパターンです。「新入社員はまず工場で製造の知識を学ぶ」といったように、特定の部署に社員を一斉に配属します。
効率的に必要な知識/経験を教育できる反面、社員の納得度によってはミスマッチを発生させる原因となり得ます。

・スペシャリスト配属型
職種を固定し、各事業部をローテーションさせるパターンです。入社直後こそ、事業部配属型と同様ですがその後のキャリア形成は大きく異なります。
各商材の特性が近いSIerなどで採用されやすいパターンで、最もジョブ型に性質が近いものの、担当業界や商材などの知識が深まりにくいという特徴があります。

■ジョブ型採用

ジョブ型採用は職務を明確に規定するため、いわゆる入社後の“配属”は存在しません。
特に外資系の企業では一般的に用いられますが、近年ではジョブ型採用を取り入れる日系企業も増えつつありますので、代表的な企業をご紹介します。

・NEC(日本電気株式会社)
大手SIerであるNECでは2020年度からジョブ型採用を一部導入しています。

特徴としては、
・技術系の新卒採用では、希望する事業領域ごとにジョブマッチング制での選考を実施
・優秀な人材に対しては、学歴別初任給ではなく、ジョブディスクリプションに基づいて報酬を決定。1年目で年収800万円を超える社員も存在する
・創薬、データサイエンスなど一部の領域においてはキャリア採用のポジションをオープンすることで、キャリア採用の報酬体系を新卒社員にも適用可能とする

<参考>
日本電気株式会社:「ジョブ型人材マネジメントの加速に向けた採用方針について」
日経クロステック:「NECが21年度に新卒500人採用、ジョブ型で年収800万円超も」
・KDDI株式会社
大手通信会社であるKDDIでは、2019年度から職種確約型採用「WILLコース」を導入しています。

特徴としては、
技術系、事務系を問わず、一部の職種で専門分野を活かせる配属確約コースを設定
・給与は一般的な総合職とは差がない
2021年度は4割の新入社員が「WILLコース」で入社

<参考>
KDDI株式会社:採用情報 募集要項


■プロジェクト型採用

プロジェクト型採用は、コンサルティング業界など単一職種での採用が多い場合に用いられる場合が多いです。
事業部単位ではなく、プロジェクト毎に配属されるパターンで、入社後にある程度、業界やクライアントを絞るパターンもあれば、数年間は特定の領域を絞らず、様々なプロジェクトを経験させるパターンもあります。

ここでは各パターンの代表的な企業を紹介します。

・PwCコンサルティング合同会社(PwC)
会計事務所系コンサルティングファームの一つであるPwCでは、入社後の研修/面談を経て、会計部門、組織改革部門などまず特定の領域に配属を行い、
そのうえで、各領域内におけるプロジェクトへの配属
を行います。

<参考>
PwCコンサルティング合同会社「Be started to move to the future self
・デロイトトーマツコンサルティング合同会社(DTC)
同じく会計事務所系コンサルティングファームのDTCでは、新入社員は原則Poolユニットという部門に配属されます。
若手コンサルタントの間は専門領域を限定せず、様々なプロジェクトで基礎能力を磨く方針を取っていることが特徴です。

<参考>
デロイトトーマツコンサルティング合同会社:新卒採用ページ

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ここまでの各社の取り組みを見ると、徐々に大手企業の間でもジョブ型採用にシフトする企業が増えてきているように感じます。

しかし、ここで注意しておきたいのはジョブ型採用だとしても、あくまでジョブディスクリプションが規定されていない場合が多いという点です。

したがって入社時の職種が確約されていたとしても、異動・転勤などが起こり得る可能性はゼロではありません。
つまり、明確なジョブ型採用への移行が起こっているわけではなく、あくまで採用優位性を保つための各社の採用戦略と言えるでしょう。

3. 各採用パターンのメリット/デメリット

ここまで各採用パターンの特徴を見てきましたので、各パターンのメリット/デメリットについてまとめていきます。

・メンバーシップ型採用

<企業にとって>

メリット
・長期的な人材育成計画が立てやすい
・企業状況に応じて、柔軟な人員配置を行える
・新卒一括採用を行うことで、給与/採用費用がかさみやすい中途採用に比べ費用を抑えられる

デメリット
・能力や業務内容に関わらず、年齢によって人件費が高騰するため費用がかさむ
・長期雇用を前提とした教育/報酬体系のため、人材の流動性が低い
・入社時点で能力が高い若手社員のモチベーション低下につながる可能性がある

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<新入社員にとって>
メリット
・教育/研修制度などが充実しており、幅広いキャリアを積みやすいため、自身の適性をある程度探りながら就業できる
・能力に関わらず、解雇されにくい
・成果に関わらず、年功序列で賃金が上がっていく

デメリット
・年功序列制のため、若手のうちに成果を出しても昇給/昇進を望みにくい
・勤務場所や業務内容を選べない場合があり、自身の望むキャリアを歩めない可能性がある
・専門性が磨けず、採用市場で評価されづらい場合がある
・ジョブ型採用

<企業にとって>
メリット

・ジョブディスクリプションに則り、明確な基準を持って採用するため能力面のミスマッチが起こりづらい
・成果が評価基準となりやすいため、納得性のある解雇を行いやすく、人員調整が容易

デメリット
・人材の流動性が高いため、採用コストがかさみやすい
・容易な配置転換を行えないため、ポジションや勤務場所によっては欠員が発生してしまうこともある

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<新入社員にとって>
メリット

・明確な評価がされ、自身の望んだキャリアを実現しやすい
・成果/スキル次第で、年齢に関わらず賃金の上昇が見込める
・専門性を磨ける

デメリット
・成果によっては解雇もあり得るため、ライフプランを形成しづらい
・学生時代など、比較的早い段階で自己のキャリアの方向性を定める必要がある
・自身の志向と適性がマッチしていない場合でも、ジョブチェンジがしづらい
・プロジェクト型採用

<企業にとって>

メリット
・柔軟な人員配置を行いやすい
・成果主義的ではあるが、ジョブ型と異なり、ジョブディスクリプションが規定されているわけではないため、新卒/中途を問わず採用がしやすい

デメリット
・人員計画がプロジェクトに左右されてしまうため、余剰な人員を抱えてしまうリスクがある

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<新入社員にとって>
メリット

・職種を変えることなく、幅広い経験を積める
・接するメンバーが固定化されづらく、人脈を構築しやすい

デメリット
・自身の専門性やキャリアが、自身の望みだけでなく経験したプロジェクトによって方向づいてしまう
・成果によってはプロジェクトから放出されるリスクがある

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各パターンのメリット/デメリットを整理すると、企業側にとっては採用コストを抑え、柔軟な配置転換が行えるメンバーシップ型採用は非常に合理的な手法だと言えます。

また新入社員側に取っても、明確なスキル/希望ポジションがない場合には、キャリアの幅が広がり、時間をかけて教育を行ってもらえるメンバーシップ型採用はメリットのある手法と言えるでしょう。

したがって、技術系など明確なスキルを持っている際にはジョブ型採用は相性が良いですが、諸外国のようにインターンでスキル習得→就職といった流れにならない限りは、一般的な新卒採用においてはむしろメンバーシップ型採用(単一職種であればプロジェクト型採用)が適していると考えられます。

4. これからの配属をどうするべきか

ここまでの意見をまとめた結論としては、日本企業は引き続きメンバーシップ型採用を中心に行うべきと考えます。

理由は前項で述べたとおり、日本の大学における現行の教育システムにおいては、ある程度企業に教育を委ねられるメンバーシップ型採用は合理的と言えるためです。

ただし、重要なのはメンバーシップ型採用が抱えるデメリットを、ジョブ型採用を組み合わせて解消すること

具体的には、
・若手のモチベーションを減退させ、企業のコスト負担となり得る年功序列型賃金
・技術職など、専門的なスキルを持った社員を関係の無い部署に配属してしまう可能性がある、一律の配属制度
といった点を解消すべきと考えます。

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したがって、
専門的なスキルを持った社員は、ジョブディスクリプションを規定し、ジョブ型採用を行う

それ以外の社員はメンバーシップ型採用を行い、教育を行う

一定の年齢を超えた時点で、スキル/経験に応じてジョブディスクリプションを規定し、ジョブ型へと契約を転換する

以上のように、入口と出口にジョブ型採用を組み合わせることで、より多くの社員に納得感のある配属となるのではないでしょうか。

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とは言え、ここまで見てきたとおり、最適な採用や配属は各社によって異なりますし、人の数だけ理想のキャリアが存在します。

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