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コーヒーのエトセトラ


以前『砂糖のグルーバル史』を書いた。また『紅茶のミニ歴史』も書いた。
砂糖のグローバル史|kengoken21go (note.com)
砂糖の歴史は、特に欧州において、紅茶とコーヒー(もう一つ加えればチョコレート(飲料→固形物)の消費拡大と切離せない。そこで今回はコーヒーを取り上げる。但し、歴史を主体にはしない。

日本茶、紅茶、コーヒーの中で、日本で(少なくとも自宅外は、或いは全体を通して)コーヒーが一番飲まれているはず。スターバックス、タリーズ、ドトールのように、それなりに値の張る店もよく利用されているのに加え、コンビニでは100円コーヒーも出すようになり外で飲む人が更に増えていると思われる。調べてはいないが、インスタントコーヒーは嘗てのように飲まれていないのではないか。

我が家は以前はコーヒー豆(大抵は専門店で買うスペシャルティコーヒーの豆)を買ってきて手動のミルで挽いていた。茲許は半ばプロ用?の電動ミルを使っている。電動ミルは便利な一方で、手動ミルで挽くときに漂う豊かな香りを味わう良さには少し劣る。

さて、コーヒーの栽培方法・産地、加工・焙煎方法、流通ルート、取引市場については専門業者でもないので述べる立場にはない。一方、飲む側から見て少しは興味を持って頂けそうなことを書く。

1.カルディ
キャメル珈琲グループが運営するカルディ(カルディコーヒーファーム)は面白い食材を置いてあることで人気がある。元はコーヒー専門店。同企業名はコーヒー発見譚から来ている(実際は創作とされる)。即ち、コーヒーの原生地エチオピアのカルディという名の山羊飼いが、藪に生えている赤い実を食べた山羊が興奮し飛び跳ねたのを見たのが珈琲発見のきっかけいう話からとっている。

2.コーヒー種の大分類
専門家から文句が出ることを気にせず、細かいことは捨象する
(1)品種分類
実態的には
 〇アラビカ種(熱帯でしかできない)
 〇ロブスタ種
の2品種に大別される。コーヒー発祥の地と言われるエチオピアで採れたのがアラビカ種で長い間コーヒーとはアラビカ種であった。1800年代の後半、さび病でアラビカ種が壊滅的な打撃を受けた際、これをカバーするため生まれたのがロブスタ種。高級コーヒーとして出すのは原則アラビカ種である。ロブスタ種は味が劣ると言われている。アラビカ種は病気や気候に影響を受けやすいのに対しロブスタ種は強い。英語のRobustからネーミングされたという説がある。

(2)豆の用途の大分類
豆のままか、粉にするか、ソリューブル(所謂インスタンドコーヒーの類)にするかはさておき、豆の用途としては2つに分かれる
<スペシャルティコーヒー>
原則一つの産地(一地域)で生産された(原則一つの品種の豆)のコーヒーでワインと同様にテロワール(気候風土)が重要視される。アラビカ種が使われると思ってよい。
<コモディティコーヒー>
ロブスタ種とは必ずしも限らずアラビカ種もあるが、価格がスペシャルティコーヒーのように高くないもの。複数の種、複数産地の豆、採れた時期が異なるものを混ぜることが多い。

スペシャルティコーヒーは小規模農園で栽培されることが多く、ブラジルのような大農園=ファゼンダで栽培されるのはアラビカ種であってもコモディティ向けが主。
アラビカ種とロブスタ種では生産量はアラビカ種が多い一方で、世界のコーヒーの90%はコモディティコーヒーであることに鑑みれば、アラビカ種でもコモディティ向けに使われることが多いことの証左。日本でいうレギュラーコーヒー、ブレンドコーヒーは和製英語。インスタントコーヒーも然り。

(3)豆にする工程の大分類
コーヒー豆専門店で「アンウォッシュド」と書いてあるものがある。洗ってない」いう意味は分かるが、どういうことか暫くの間知らずに買っていた。コーヒーの実(コーヒー・チェリー)と言えば赤い実というイメージがあるだろう(実際は赤くないものもある)。これを所謂、生豆にする際に果皮、その他の不要物を取り除くが、その方式で大きく二つに分かれる。

〇乾式(ナチュラル・プロセス)・・アンウォッシュド
〇水洗式(ウォッシュド・プロセス)
簡単に言えば、乾式は乾燥させて不要物を取り除く方式。水洗式はコーヒーチェリーを水につけて不要物を除去して乾燥させる方式。水洗式の方が手間はかかるが味がよいため高級とされる。スペシャルティコーヒーは水洗式が望ましい。チーズにもウォッシュタイプがある。

3.積み出し場所によるネーミング
コーヒーの発祥の地はエチオピアであり、言わずもがなアラビカ種である。この命名はエチオピアの豆をアフリカ以外へと出荷する場所であるイエメン(イエメン自体も生産地)から来ている。イエメンはアラビア(半島)なのでアラビカとなった。

これと同じようなことは多くの人がその名を知っている「モカ」であろう。モカはイエメンの積出し港乍ら豆の種類と思われるようになった。コーヒーのモカはイエメンとエチオピア産の豆をいう。コーヒーを本格的に飲みだした元祖はイエメンと言われている。また、流通させたのはアラビア商人。

ブラジルはコモディティ向けが多いので、産地名を付けた豆は殆ど見ないと思う。偶にサントス(Footballの王様ペレがプレイしていた地)という名があるのは、これも大産地サンパウロ州で採れたコーヒー豆の積出し港であるから(有田焼と伊万里の関係も似たようなもの)。

4.コーヒーハウスの原点はトルコ
コーヒー伝播を超ザックリと言えば、エチオピア→イエメンに広がり、サウジアラビアに伝わり、メッカ巡礼を介しアラブ諸国、及びオスマントルコ、イラン(ペルシア)他に伝わった。アラブ諸国では浅炒りの豆を使い半透明のものを飲んだ(飲む)ようだ。因みに現代の北欧も浅炒りが好まれる。

一方、オスマントルコで黒い液体と呼ばれた。ここで生まれたのがコーヒーハウスである。コーヒーハウスといえば英国のイメージがある。同国で最初にコーヒーが飲まれた記録は1673年。西欧で最も早い記録はヴェネチアの1575年。フランスは1644年。トルコでコーヒーは大流行したものの、同国は今では世界一の茶(チャイ)の消費国である。

欧州で「イスラムのワイン」と言われたコーヒー文化が生まれて以降、西欧の植民地としてジャワ島、カリブ海、南米(スリナム、ブラジルなど)、及びエチオピア以外のアフリカ等へ生産地が広がった。

世界のコーヒーベルト地帯 松浜珈琲焙煎所Webサイトより転載
FAO 2023年1月公表統計資料より作成

5.その他雑件
(1)砂糖の使用
今の日本でコーヒーに砂糖を入れて飲む人はマイノリティであろう。世界の各地でどうか
は知らないが、少なくとも17-19世紀はどこでも砂糖(国によりミルク)を入れていた
ようだ。紅茶も同様である。
紅茶のミニ歴史|kengoken21go (note.com)
嘗て出張の際のパリ→ブラッセル行き特急列車上でカフェオレを注文したところ、白とブラウンの角砂糖がついてきたので、フランスでは砂糖を入れるのが一般的なのかと思ったが正しいか不明。ニューヨークのベトナム料理屋では今では日本でもよく知られているコンデンスドミルク入りの超甘いコーヒーを飲んだ。甘みと関係ないが同じくニューヨークのギリシャ料理店(料理はGood)で泥水を飲んでいるようなコーヒーもあった。

(2)フラッペとカプチーノの原点
ギリシャのテッサロニキの見本市でネスレ社員がネスカフェと冷水を混ぜてシェイクして泡立たせ人気を呼んだのがフラッペの原点。
カプチーノは本来コーヒーにミルクを入れたものであったのものが、スチームドミルク=蒸気で温めたミルクを加えたエスプレッソに変わってしまった。名前に由来はカプチーノ修道院。

(3)蜀山人も飲んだコーヒー
江戸時代の狂歌師・戯作所として著名な蜀山人こと太田南畝は御家人であり、長崎奉行所に
赴任した際にコーヒーを飲んでいて、「焦げくさくして味ふるに堪えず」と書いているそうである。多くの人が子供の時に初めてインスタントコーヒーを飲んだ際、そう感じたのではなかろうか。

(4)メリタとペーパーフィルター
珈琲機器・用具のメーカーとして有名なドイツのメリタ社を創業した普通の家庭夫人であったメリタ・ベンツがペーパーフィルターの発明者である。今世界に広く普及している円錐形にしたのは息子のホルスト・ベンツである。

(5)食べても美味しい豆🫘
コーヒー豆をフライパンで炒って食べるのはオツなもの。苦味がなく美味しい。

(了)


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