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考えるヒント35 一燈を提げて暗夜を行く

 最近ふと思ったことです、たしか、2018年くらいから東京と軽井沢を行き来して、6年近く経ちました。そのなかで、振り返ってみると、「火起こし」が身近になった気がします。そりゃそうですよね、東京では、「火起こし」をすることはほぼないです。基本的にはガスコンロでスイッチをオンにすれば、「火起こし」をしてくれます。
 
 まあ、日本全国でガスが通っていない、火が通っていない箇所は少なくなりました、軽井沢ももちろんインフラはありますが、たとえば、冬であれば薪に火をつける、夏であればBBQなど、生活必需ではないですが、「火起こし」の場面が増えました。
 
  この「火起こし」、最初は結構苦戦しました、新聞紙を入れても一瞬燃えるだけでなかなか火がつかないし、火がついたと思ったら、すぐ消える、炭にも火がつかない。いろいろ試行錯誤するなかで、だいぶ、コツがわかってきました。そのコツは、「小さく火を起こすこと」。やはり、いきなり大きな薪には火はつきません、だから、枝のようなすぐ火がつく木を燃やす、さらには、小枝を大きくした大枝、それを重ねていくと、だんだん、火に勢いがつき、温度が上昇し、やがて、大きな薪でも火がつきます。
 
 さて、この話、ビジネスも似たところがあるのではないでしょうか。自分の理解では、どんなビジネスもスタート同時にメラメラと燃えることはないと思います。よく言われるのは、イノベーター理論ですよね。新しいサービス・製品は、最初は新しいものに目のないイノベーターが興味を示し、そこから新しいものを許容するアーリーアダプター、その後、一般普及に近づくアーリーマジョリティ、レイトマジョリティになると。この火の起こし方のアナロジーでいえば、マジョリティは大きな薪と言えるかもしれません、つまり、まず、小枝たるイノベーター、大枝たるアーリーアダプターで火をつけて、そこから温度が上昇し、マジョリティまでたどり着くと。
 
 ただ、火起こしとビジネスの違いは、火起こしの場合、火が消えるケースはだいたい限れていますよね、外であれば雨が降る、風が強くて火が消える、あるいは、薪が十分乾いていない、くらいでしょうか。一方、ビジネスの場合は、火が消える要素がたくさんあるように思います、思いつくところだと、景気が悪くなった、競合にシェアを奪われた、内部組織が上手くいかなくなった、協業先が立ち行かなくなった、おカネがなくなった、などなど。枚挙にいとまがありません。なので、イノベーター、アーリーアダプターで付いた火を絶やさず、アーリー、レイトマジョリティ層まで燃やしつづけるのは並大抵のことではないと思います。
 
 でも、火起こしとビジネスのもう一つの違いは、ビジネスの場合、どんな困難があっても、「やらなければならない」という強い使命感・リーダーシップがあれば、火を絶やさず、燃やし続けることができるのではないでしょうか。江戸時代の儒学者佐藤一斎先生は、こう仰ってます「一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うることなかれ。」 景気が悪い、シェアを奪われた、組織が上手くいかない、協業先が立ち行かない、おカネがなくなった、いろいろ課題はあると思います、ただ、そうした暗い暗夜を憂うるのではなく、提灯の僅かな光、一燈、を信じて迷わず進めと。信じる者は救われる、でしょうか。というわけでオチです、火起こしができるようになった要因は、小さな意味で、付いた火、一燈を提げて暗夜を憂うることがなくなったと、ビジネスもこうありたいものです。

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