「日が昇るたかまど山」ってどんなトコ?
日が昇る たかまど山に
さわやかに 草木はのびる
中高生のころ、ことあるごとに歌った「学友の歌」の冒頭。
奈良を歩いていると、街の東南に高円山(たかまどやま)がよく見えます。
毎年8月15日には「奈良大文字送り火」が行われるのもこの山。
つまり高円山は、奈良にとって、僕にとって、非常に馴染み深い存在なんです。
しかし僕は、いまだに高円山に登ったことがなかった。
そんなわけで昨日、行ってみることにしました。
この日も奈良の街からは高円山が見えています。
頂上付近に木がなく、野原になっているのが高円山です。
登山口付近ですでに結構な標高があります。
街から見ると、ここも「山の裾野」に見えているかもしれない。
登山口はかなりあっさりしています。
特に大きな案内板があるわけでもなく、舗装された道の脇にひっそりとある感じ。
よく見ると「大文字山登山口」という小さな板が貼ってありました。
ここから木々が鬱蒼と生い茂る登山道へ出発です。
ところで、「道」ってどれ?
登山開始5秒で道に迷いました。
一緒に行った友人によると、ここは「左」が正解とのこと。
「右」が正解ですよ、と言われたら信じてしまいそう。
この山にはいわゆる「分かりやすい登山道」というのはなくて、「先人が歩いた足跡」が頂上への道となっているようです。
小川を越え、倒木をくぐりながら頂上を目指します。
写真では分かりづらいですが、かなりの急勾配が続きます。
特に休憩できる場所もないので、一心不乱に登りました。
森の中を歩くこと40分…。
うおおおおおおおおお!!!
「大文字火床」に到着しました。
大文字送り火で「大」の字が灯されるところで、下から見たときに高円山の目印になっているところでもあります。
ここは開けているのでとても景色がいい。
奈良の市街地が一望できます。
ですが、ここはまだ「頂上」ではありません。
この辺りには「奈良奥山ドライブウェイ」という有料道路が整備されており、その途中に「頂上展望所」があるのです。
一旦火床を後にし、頂上展望所へと向かいます。
この道はあまり傾斜がなく、登ったり下ったりという感じです。
火床から歩くこと20分…。
頂上展望所に到着しました。
自然の中を歩いていたら、唐突に人工の道路が出てくるのでちょっとびっくりします。
さて、どんな眺めが待っているのか?
確かに景色はよく見えます。
けれどもあまり開けているわけではないので、僕は火床からの眺めの方がお気に入りかなあ。
頂上展望所には歌碑があるため、歌碑巡りが好きな人にはおすすめです。
写真では歌碑の文字がほとんど読めませんが、書かれているのは高円山にちなむこの歌でした。
高円の秋野のうへの朝霧に妻呼ぶ牡鹿出で立つらむか
大伴家持(「万葉集」巻20-4319)
涼しくなってくると朝に霧が立つんですよね。
僕は飛火野のイメージが強いですが、霧が立つ野原で佇む鹿の様子は印象的です。
1300年前の家持も、同じ様子を思い浮かべていたのでしょう。
秋は鹿の恋の季節(交尾期)であることもポイントです。
広いところで昼食を食べたかったので、火床に戻ります。
腰を下ろすのにちょうどいい木陰もありました。
隣の若草山がよく見えます。
高円山(432m)は若草山(342m)を見下ろせる数少ない場所かもしれません。
奈良市街を望む。
平城宮跡や生駒山、京都府の南部が見渡せます。
こう見ると奈良って広いですね。
昼食を買ったコンビニのある交差点が下の方に小さく見えました。
こんなに遠くまで来たのか…。
南の方も見てみました。
葛城山、金剛山は見えている気がします。
大和三山は、かろうじて畝傍山が見えるかといったところでした。
鹿と遭遇することはありませんでしたが、鹿のフンは各所に見られました。
家持の歌の通り、この辺りにも鹿が来ているのは間違いないようです。
火床で2時間近く過ごし、下山しました。
登りが急勾配だったので下りはどうなるかと思いましたが、転げ落ちるように勢いよく下りてきたので、20分ほどで登山口に帰ることができました。
この日、他の登山者とは1度も会うことがありませんでした。
インターネットでも情報が少なく、真夏の平日ということも影響したかもしれません。
道が険しく分かりにくいので、1人で登るには厳しい山だと思います。
しかし、火床から見える景色は他では見ることができないものです。
なにより奈良にとっては大切な「日が昇る山」。
人混みは避けたいけど外出したい。
そんな今こそ、高円山に足を運んでみてはいかがでしょうか?
【おまけ】
火床からスマホのパノラマ機能を使って撮りました(使いたいだけ)