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レビュー「わたしの好きな映画10作品」 第十回 男はつらいよ お帰り 寅さん

「男はつらいよ お帰り 寅さん」

予期せず、公開のニュースを知った際の驚きや喜びは大変なものでした。号泣を充分過ぎるくらい予想ができたので、家族とは座席を離れての鑑賞、映画館は温かい歓迎のムード、終演後、あちこちからの拍手はこれまでになかった体験でした。意外にも満男は小説家に、とは言え、身内に寅さんみたいな人がいたら、話のネタはいっぱい、寅さんの血筋、そんなことも考え納得ではありました。一方、泉とは結婚に至らず、シングルファーザーという展開には意表を突かれました。泉と再会、後に空港での別れの場面は一線を超えた行為、でも、精一杯の優しさ、別れを惜しむ寂しさ悲しみ、いくつの事柄が浮かぶ感動的な場面でした。本作に限らず鑑賞後に解釈を求めてあれこれと考えるのは楽しいですが、あの場面は個人的には新たなそんな代表例になりました。本作は老いる寂しさ、やがて訪れる悲しみが強調されていますが、付随して、瀬戸際に立たされた人の、ある種、見苦しさも印象に残りました。橋爪功が演じる泉の父は、かつて、あのように惨めで憐れではなかったはずです。何が彼をそうさせたのか、罰なのか、時の流れのせいなのか、仕方がないことなのか、これもまた、あれこれと考えさせられる場面でした。笑いと涙の男はつらいよシリーズ、本作に限っては涙の方が勝ってはいましたが、あれこれと考えさせられ、そんな後押しもあって素晴らしい作品になりました。日本映画に限っては本作が一番好きな作品になりました。それまでのNO.1は、同シリーズの48作目でした。

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