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芸術の秋に観たい、ちょっと切ない映画 3本

「芸術の秋に観たい、ちょっと切ない映画を選んでほしい」というリクエストをいただいたことをキッカケに、これまでに観た映画の記憶をひっくり返してみて、コメントと共に3本選んでみました。

日が落ちるのがはやくなり、日が落ちてからは肌寒さすら覚える季節。
そこから連想されたのは「死」のイメージ、もっと言うとそれに向かう過程、
つまり「老い」や「枯れ」といったイメージが頭を離れませんでした。

しかし、ただ「死」を悲観的なものとして捉えるのではなく、
「死」後に広がる世界を音楽で繋いだり、
あるいは「死」に近づくことですばらしい音楽が生まれることになったり、
または「死」して尚、語り継がれる物語が写真を通して残されたり。

結果的に、そんな芸術が「死」を彩るような3本が選ばれたようにおもいます。
芸術の秋の映画選びのひとつのキッカケになれば幸いです。


リメンバー・ミー

年に一度、祖先を迎える行事の裏側に生み出された美しき世界観は、
なぜひとがこの世を去ったひとのことを想い、想い出を語り継ぐのか?
という根源的な問いに、あたたかな答えを歌いあげてくれます。

そして嫌っていたはずの音楽が家族をひとつに繫ぎとめるとき、
その瞬間にこそこの世に芸術が存在する意味を考えざる負えないのです。

そして思い返します。
この長く豊かな家族の繋がりに、ちゃんと向き合ってこれていただろうか?と。


ブルーに生まれついて

ジャズトランペッター、チェット・ベイカーの再起の過程を悲しくも美しく描く本作。

キャリアの全盛期から一度は地に落ち、そこから再び立ち上がろうとするその姿、
そしてその先に行き着いた彼の弱さが招いた悲劇。

最期、彼にとって最も重要な、しかし最もプレッシャーのかかる演奏で魅せた
美しくも素晴らしい演奏の裏側に秘められた悲しい出来事、
愚かな男の弱さが招いた悲しいものがたりに、
人生における秋の気配を感じるのです。


マディソン郡の橋

アイオワ州マディソン郡の片田舎に住む主婦と、
世界を旅しながら写真を撮りつづけるカメラマンの4日間の恋を描いた本作。

至極普通な、平凡な人生を送っていたとおもわれていた女性が
「生涯に一度きりの確かな愛」を知り、
彼女自身も知り得ていなかった自分自身の想いに気づいていく。

写真を撮るという行為が、
一瞬で目の前を通り過ぎてゆく人生の一片を、せめてすこしでも残したい、
という祈りのような行為に見えてくる。

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