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0334 “エンタメの夜明け”- 傑物たちのノンフィクション物語
読書感想文 “エンタメの夜明け-ディズニーランドが日本に来た日”★★★☆☆
著者は現在はホイチョイ・プロダクションズ代表取締役の馬場康夫氏。アラフォー以上なら”私をスキーに連れてって”などの監督として思い出されるか。初版は2007年とやや古い。が、ディズニーを誘致した昭和の男たちの熱いノンフィクションは色褪せない面白さがあった。
1.6.7章がディズニー誘致の話。面白い。当時は富士山麓への誘致の三菱グループと、浦安誘致の三井グループの激しいプレゼン合戦があったことを知る。勝利したのは三井側。ヘリコプターに乗せて商圏を見せたり、企画書を革の装丁にするなど、できることはなんでもする泥臭さがかっこいい。
2.3.4.5章は、小谷正一と堀貞一郎という2人の傑物プロデューサーと、昭和の出来事と昭和を代表する大クリエイターたちの話。登場人物が多いので、時代背景を知らない人は少し読むのが大変。だが、アラフォー以上の芸能好きなら、当時を馳せながら読み進められる。よくここまでの描写が描けるなと感心する。
個人的には、ここにきて、ウォルト・ディズニーの凄さも思いしる。ディズニーの成功の裏には、まざ、徹底して相手の立場に立って考える精神がある。原作では本来尖っているピノキオの鼻。グッズ販売となることを想定して”危険がないように丸くした”など見事なエピソード。
もうひとつ。成功の最大の理由は、ベタな童話など、元々認知があるものをアトラクションに採用していったこととのこと。来客の”理解するためのストレス”を軽減される。”創作とは、記憶である”は黒澤明の言葉。エンタメの世界は、記憶の再現とオマージュから生まれてくる。
最後にいちばんささったディズニー誘致の功績者、小谷正一の言葉 - ”いつだって時代は過渡期だし、キャンバスは真っ白なんだよ” しびれる。