[米国株式市場考察] 2021.4.29
米国株式市場は下落。ダウ平均は164.55ドル安の33820.38ドル、ナスダックは39.18ポイント安の14051.03で取引を終了しました。ニューヨーク証券取引所の出来高は前日比4519万株増の8億5732万株。
FRBは27-28日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、「経済活動と雇用は力強さを増した」と景気認識は引き上げたものの、雇用や物価がまだ目標に到達していないとも判断しました。特に雇用に関しては、多くの人が離職しており、サービス業の労働者は仕事を見つけるのに苦労する可能性にも言及しました。失業率は6.0%まで改善してきたものの、FRBの分析では、所得が低い下位4分の1の層の失業率は今も20%程度に高止まりしているとしています。
これを受け、政策金利の据え置きと量的緩和策の維持で市場から米国債などを買い入れるプログラムの月額購入額の維持を全会一致で決定。事実上のゼロ金利政策である金利は年0~0.25%、プログラムの月額購入額規模は現行の月額1200億ドル(約13兆円)にそれぞれ据え置きました。
このように、FOMCでは大規模緩和の据え置きが決定されたほか、パウエル議長が資産購入の段階的縮小(テーパリング)を議論をするには時期尚早であるとしたため、金融緩和縮小はまだ先との安心感が出ました。
しかし、パウエル議長が米国株式相場について、バブルのようにはじける恐れは低いものの、相場の過熱を示す言葉である市場のフロス( 非常に細かい泡 )を反映している部分があると言及したことがサプライズでした。
債券市場では、当初は2週間ぶりの高水準となる1.661%でした10年米国債利回りはパウエル議長の発言で1.609%に低下。今年に入って、10年米国債利回りがナスダックの株価の重しになっていましたが、昨日の利回り低下に対してナスダックは反応しませんでした。
外国為替市場では、パウエルFRB議長が記者会見で「資産購入の段階的縮小(テーパリング)に関する議論をまだ始める時期ではない」と発言に反応し、金融緩和が長期化することへの安心感から、主要6通貨に対するドル指数は0.3%安の90.576と全面的にドル安となりました。
米国株式市場ではFOMC声明内容よりも、企業決算発表による影響が大きかったです。特にナスダックでは、1株当たり利益が予想を上回ったマイクロソフトは、高値警戒感が広がる中、同社提供のクラウドサービス、アジュールの冴えない伸びが懸念され売りを浴びせられましたが、同利益が市場予想を大きく上回ったグーグルの持ち株会社アルファベットは買いが集まり、ナスダックを下支えしました。
引け後に四半期売上高が市場予想を大幅に上回った増収増益決算を発表したアップルは時間外取引で2%超上昇し、フェイスブックは一株当利益や収益が予想を上回り時間外取引で5%超の大幅高となっています。
ホワイトハウスによりますと、日本時間の29日午前10時すぎからバイデン米大統領は施政方針演説で、子育てや教育に焦点を当てた1兆8000億ドルに及ぶ10年間支援計画を公表する一方、富裕層へのキャピタルゲイン増税や、投資会社の運用マネジャーに適用されている税優遇措置が廃止を打ち出す可能性も示唆しています。
然し乍ら、その実効性に関して疑問視されています。何故なら、バイデン大統領の打ち出す政策が米国議会を通過するかが疑わしいからです。
就任初日から、バイデン大統領は議会での審議を経ずに大統領の権限で政策を進めることができる大統領令に次々と署名し、署名した大統領令は今月26日までに41に上っています。
大統領令の数を同じ時期で比較するとトランプ前大統領が28、オバマ元大統領が19、ブッシュ元大統領が11と、過去3人のいずれの大統領も上回っていて、こうした手法に野党・共和党からは一方的だと批判の声もあがっています。
今後、大統領令の乱発では政策の舵取りはとても難しいです。上院議会ではハリス副大統領が議長を兼務することから、民主党が事実上の多数派として主導権を握るものの、定数100のうち共和党と民主党系がいずれも50議席と同数となっています。また議会下院では定数435のうち民主党が218議席、共和党が212議席、欠員が5と、その差はわずか6議席となっています。
従いまして、バイデン政権の成功は、野党・共和党からどれだけ協力を取り付けられるかにかかっていますが、これまでのところそこには余り力を注げていないどころか、米国内の分断は悪化しており状況はかなり厳しいと言えます。
用語解説
- #FRB ーFRB(The Federal Reserve Boardの略)は、日本における日銀と同じ、アメリカの中央銀行制度の最高意思決定機関で、日本語で「連邦準備理事会」とも呼ばれます。連邦準備理事会は、7名の理事から構成されています。
FRBが開く金融政策の最高意思決定機関に連邦公開市場委員会(FOMC)があり、FRBの理事7名や地区ごとの連邦準備銀行(FRB)総裁5名で構成されていて、アメリカの金融政策やFFレートの金利誘導目標を決定しています。
- #米連邦公開市場委員会 (#FOMC) ー米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)が開催する委員会で、米国の金融政策の最高意思決定機関。政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標、景況判断や今後の政策方針等が決定されます。
FF金利の変更は、短期金利、為替レート、長期金利などに影響を及ぼすため、極めて注目度が高いです。FOMCは12名のメンバーで構成されており、内訳は7名のFRB(米連邦準備制度理事会)理事と、ニューヨーク連銀総裁を含む5名の地区連銀総裁。
ニューヨーク連銀総裁以外は、4つのグループ、(1)ボストン、フィラデルフィア、リッチモンド (2)クリーブランド、シカゴ (3)アトランタ、セントルイス、ダラス (4)ミネアポリス、カンザスシティ、サンフランシスコ から1年交替。
FOMCは年8回、約6週間ごとに開催されるほか、必要に応じて随時開催されます。声明文は、FOMC開催最終日に公表、議事録はFOMC開催最終日の3週間後に公表されます。
- #量的緩和策 ー中央銀行が、景気や物価を下支えするために、マネタリーベースなどの「量」を操作目標として、市場に大量に資金を供給する金融緩和政策のこと。英語表記「Quantitative Easing」の略でQEとも呼ばれます。
日本では、日銀が政策金利を0%近くまで引き下げても景気回復が進まなかったことから、2001年3月に量的緩和策を初めて導入しました。具体的には、公開市場操作で金融機関から国債を大量に買い入れ、銀行などが日銀に開いている当座預金口座の残高を目標額まで増加させることにしました。これにより、銀行に融資の積極化や債券などの資産購入を促し、経済の活性化を図ろうというものです。
- #テーパリング ー英語のtaperingのことであり、taperとは先細り、漸減を意味する英語。
政策金利が実質ゼロ水準にあり、これ以上の引き下げ余地が無い状況下における金融緩和策として、量的緩和策(QE:Quantitative Easing)があります。量的緩和策は、国債や住宅ローン担保証券(MBS)などリスク性のある金融資産を中央銀行が直接買い入れることで、市中への資金供給を増やし景気を刺激することを狙います。
これに対しテーパリングとは、量的緩和策による金融資産の買い入れ額を順次減らしていくことを指します。出口戦略とも呼ばれ、雇用統計などの指標の改善に一定の成果が上がった時点で量的緩和策を縮小していくことを示す用語として使われます。
- #ドル指数 ( #ドルインデックス ) ーユーロやポンド、円など複数の通貨に対する、米ドルの為替レートを指数化したもののことを指し、米ドルの相対的な価値を表します。
なお、日本では、ドル高と言った場合、通常、円安ドル高をイメージしますが、外国為替市場で円安ドル高が進んだからといって、必ずしもドル指数が高くなるわけではないのでご注意ください。
- # 1株当たり利益 ー英語表記「Earnings Per Share」の略で「EPS」とも呼ばれます。EPS(1株当たり利益)は、会社が1年間にあげた利益を発行済株式総数で割って求めます。ただし、ここで言う利益は必ずしも当期純利益とは限らず、翌期以降の予測値を使って求めることもあります。たとえば、2万株発行している会社が年間で1000万円の純利益をあげた場合、EPSは500円(1000万円÷2万株)となります。
これは、株価が収益の何倍まで買われているかを示す指標で、業界平均や過去の水準と比較して割高・割安を判断します。1株当たり利益(EPS)=純利益÷発行済み株式数。
EPS(1株当たり利益)は、株主が持つ1株について一会計期間における会社の成果を示しており、その会社の収益性を分析できる指標です。EPSは、会社の規模にかかわらず1株あたりの当期利益の大きさを表しているため、値が大きいほど良いとされます。
当期の1株当たり利益を前期以前のものと比較することで、会社の収益性や成長度をおおむね把握できます。また、他社と1株当たり利益を比較することで、会社規模の影響を除外した収益性の分析も可能です。そのため、株式投資で銘柄の比較を行う際にも用いられます。一般的に、株価は「EPS×PER(株価収益率)」で計算されるため、EPS(1株当たり利益)が上がれば株価も上がり、EPSが下がれば株価も下がります。
- #時間外取引ー証券取引所 (金融商品取引所)内でオークション(競争)方式による売買を行う立会取引時間を避けた相対取引のことを言います。 立会時間内での取引では、株価に直接、多大な影響を及ぼすこと等が想定される場合等に利用されます。立会取引時間前に行われるものをPre-Market trading、立会取引時間後に行われるものをafter hours tradingと呼びます。
詳細は投資学ゼミにて。
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