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なぜ“大人こそ”心理・統計・哲学を学び直すべきか──学校で教わらない“三つの思考の武器”
はじめに──「大人になってから学ぶ学問って、いったい何がいい?」
「社会人として、そろそろ本気でスキルアップしたい」「日々の仕事や人生に『これだ!』と思える軸がほしい」……そんな気持ちを抱いたことはありませんか?
一方で、「忙しくて、どこから手をつけたらいいのか分からない」「何を学んだら変化を実感できるの?」というモヤモヤを感じる人も多いと思います。私自身、大学院で分子生物学の博士号を取りながらも、その後ブロックチェーンのITベンチャーに転職し、今は習慣形成のコンサルタントとして独立する──そんな浮き沈み(?)の多いキャリアを歩む中で、「これこそ大人の学び直しに最適だ!」と強く思った学問があります。
それが「心理学」「統計学」「哲学」の三つ。
「えっ、それって何だか一見敷居が高そう……」と敬遠されがちですが、実は私が出会ってきたあらゆる業種・職種の人に役立つ“思考の武器”になり得るのです。仕事でも、人生設計でも、さらには自分の心の取り扱いにも。一方で、学校教育の現場では不思議なほどメインストリームにならない──そこには政治・文化・社会構造といった“大人の事情”が潜んでいるわけですが、やはり「学ばないのはもったいない!」と思わずにはいられません。なぜこんなにも人生を豊かにする三科目が、これまであまり注目されなかったのでしょうか?
この記事では、そうした疑問に対して、分子生物学研究で培った論理的思考と、習慣形成コンサルタントとしての経験をフル稼働しながら、「心理学」「統計学」「哲学」の醍醐味や、なぜいま大人こそ学ぶ価値があるのかを壮大かつ分かりやすく解説します。そして最後には、「なるほど、これなら自分にも取り入れられるかも」と思っていただけるような具体的な学び方のヒントもご用意しました。どうぞお付き合いください。
1. 人の心を“操られずに”、かつ“上手につかむ”──心理学という武器
「他人の心がわからない」という悩みの深さ
私は以前、研究室にこもり、毎日分子モデルやタンパク質の構造を眺める生活をしていました。周囲は研究者や大学院生ばかりで、コミュニケーションは実験データの報告と雑談程度。ところが、いざITベンチャーに転職してみると、一気に「営業」「マーケティング」「社内調整」など、人間関係が複雑に絡む仕事に直面することになったんです。
「どうしてみんな、こんなに違うことを考えているの?」
そんな戸惑いを抱えていたときに出会ったのが、心理学の知見でした。特に役立ったのは「認知バイアス」や「自己効力感」の考え方。認知バイアスを知ることで、他人が何に不安を抱き、何にモチベーションを感じるのか──そのヒントが得られ、営業トークやチームビルディングに大きく活かせたんです。さらに自己効力感のコントロールによって、自分が新しいタスクに直面したときでも「やってみたい」「できるかもしれない」という心の動きを作れるようになりました。
マーケティングや人間関係に翻弄されない「予防線」にもなる
私たちは常に情報や広告に囲まれています。「今すぐ買わないと損する!」「限定セール!」とあおるマーケティングも多いですよね。心理学を知ると、こうした“人を惹きつける仕掛け”に踊らされにくくなります。逆に、自分が発信する側に立ったときは、相手の興味や不安をどこまで汲み取って寄り添うべきか、“嫌らしくならない”コミュニケーションのヒントが見えてくる。
要は、「他者の心を動かす力」「他者の誘導から身を守る力」を同時に得られるのが心理学。学校では保健体育や道徳の一部で断片的に扱う程度ですが、「もうちょっとちゃんと教えてくれよ!」と思うくらい大人の実生活で大きな効果を発揮する学問だと痛感します。
2. 情報氾濫の時代を泳ぎ切るための羅針盤──統計学
データに基づく判断の重要性
研究室時代、私は論文を出すために実験結果を統計解析し、学会発表で検定結果をプレゼンするのが日常でした。一方で社会に出てみると、「データを活用しきれていない」現場が想像以上に多い。たとえば、ちょっとアンケートを取っただけの結果を鵜呑みにして、「やっぱりこの施策は失敗でした」と極端な結論を出してしまったり、逆に「なんとなく上司が好きだから」という曖昧な理由で方針が決まったり……。
統計学を学ぶと、「因果関係」と「相関関係」の区別や、「サンプルサイズが妥当かどうか」「有意差は本当に有意か」といった基礎知識が身に付きます。これはビジネスでも日常生活でも、たくさんの情報から“今本当に信じられるデータ”を見極める羅針盤になってくれます。私も習慣形成のコンサルティングでデータを扱うとき、「この結果には偏りがあるかも」「そもそも母集団の取り方が正しいか」と考えるクセをつけることで、より精度の高いフィードバックをクライアントに提供できるようになりました。
「数字嫌い」は学校教育の弊害かも?
「統計ってなんだか難しそう……」と思う人が多いのは、おそらく学校教育で学ぶ“数式暗記中心”の数学に苦手意識を感じたトラウマが影響しているのかもしれません。けれど実際は、日々のニュースやSNSで流れてくるデータを批判的に読む程度なら、そこまで高度な数学はいりません。
例えば「○○を食べるとガンが増える!」という記事を見ても、「サンプル数が少なすぎない?」「因果ではなく相関の話では?」と突っ込めるようになるだけで、ずいぶん安心して情報を扱えるようになりますよね。学校ではあまり教えてもらえない“実用的な統計リテラシー”こそ、いま大人になってからでも学び直す価値があると強く思います。
3. 「どう生きるべきか」を問い続ける──哲学の底知れぬ力
一見実用性がなさそうに見えて、じつは一番強力
私が大学院で研究にどっぷりハマっていた頃、ふと疑問が湧きました。「このまま博士号を取って、研究職に進むのが本当に自分の幸せなんだろうか?」「社会や人の役にどれだけ立てるのだろう?」──そんなときに手を伸ばしたのが哲学や倫理学の本。最初は「仕事と直接関係ないから、読んでもムダなんじゃない?」とさえ思っていました。しかし、そこで得られたのは「思考の軸」を持つことの強さでした。
哲学では「何のために生きるのか」「正しい行動とは何か」を根源的に問い続けます。そのプロセスは抽象的で難解に思える一方、「あ、自分はこれを大切にしたいんだ」「この価値観を犠牲にする働き方は嫌だな」といった“自分の人生観”へのヒントを与えてくれます。私の場合、「新しい知識や技術に触れて、未来に希望をつなぐ」ことが大事だと気づき、研究職からITベンチャーへ。そしてさらに独立する道を選ぶ後押しになったのです。
学校で深く扱われないワケ
政治的・歴史的に見ても、哲学は「権力や体制を根本から問い直す」要素を含んでいます。したがって学校教育の枠組みでは“扱いづらい”領域だったと言われます。批判的思考が強まると、従来の権威や体制に疑問を抱きやすくなるからです。
でも、だからこそ一個人として主体的に生きるためには欠かせない力が備わるとも言えます。「人生をどうデザインするか」「自分が責任を持てる生き方は何か」を真剣に考える手段として、大人の学びとして哲学ほどワクワクするものはそうそうありません。
4. それでも“なぜ習わないのか”──測定の難しさと社会の構造
測定しにくい=評価しにくい?
学校で教えやすいのは、テストで数値化しやすい教科です。暗記中心の科目や、数学の問題を解いて「正解か不正解か」がハッキリ分かるものは扱いやすい。一方、心理学や哲学は「答えが一つではない」「成果を定量化しにくい」ために、カリキュラムのメインにしづらいのです。統計学は数式が絡むので評価自体は可能ですが、高度な内容になると指導体制や時間配分が難しく、結局「中途半端な形でしか触れられない」ままになりがち。
社会の“権力構造”と批判的思考
もう一つは先に述べたように、批判的思考を促す学問は、国家や組織の都合からすると“扱いにくい”という事情もあるでしょう。結果として、心理学も哲学も「大学や社会に出てから好きな人が自由に学んでくださいね」という扱いで終わってしまう。しかし皮肉なことに、大人になってから必要性を痛感するのもまた、この二領域だったりするわけです。
5. 大人として学び直す「心理学・統計学・哲学」の始め方
ここまで読んで「なるほど、学ぶ意義は分かった。でも具体的にどう学べばいいの?」と思う方に、私が実際に取り入れてきた方法を少しだけご紹介します。
1. 心理学
• ビジネス本や自己啓発だけに偏らず、学術系の入門書を混ぜる
たとえば『影響力の武器』は読みやすい名著。学術的エッセンスと具体的事例がバランスよく学べます。
• 自分の習慣や感情の動きを観察してみる
「なぜ今日はやる気が出ないんだろう」「なぜあの人の言葉にイラっとするのか」など、日常で実験的に自己分析すると、心理学の理解が深まります。
2. 統計学
• ビジネスデータや日常のニュースをネタにする
新聞やネット記事で頻繁に見かける統計情報に目を向け、「このグラフはサンプル数はいくつ?」「相関と因果をごっちゃにしていない?」と問いかけるクセをつける。
• ツールを使ってカジュアルにデータ分析
ExcelやPythonなど簡単なツールで、小さなデータセットでもいいので「平均・分散・標準偏差」などをいじってみる。体験を通じて「意味ある差」と「たまたまの差」の境界が掴めるようになります。
3. 哲学
• 古典から入らなくてもOK
いきなりカントやニーチェを読むと挫折しやすい。まずは現代の哲学エッセイや対話型の入門書(「史上最強の哲学入門」はおすすめ)から始めて、「問い続ける」「考えを深める」体験を味わう。
• “自分は何を大切にしたいのか”を定期的に書き出す
哲学的思考の出発点は、抽象的な世界観よりも「自分の価値観」を問い直すところから。書き出してみると意外な発見があるはずです。
6. まとめ──「学ばない理由」を捨てて、自分だけの思考のアップデートを
心理学・統計学・哲学の三つは、どれも大人の人生を“快適”にし、“納得感”を高め、“自分で決める力”を育んでくれます。にもかかわらず、学校教育であまり真剣に学ぶ機会がないのは、測定の難しさや社会的背景が大きく関わっている。でも、だからこそ大人になった今、あえて手を伸ばしてみる価値があると思いませんか?
私自身、東京大学の大学院を経て、ITベンチャー、そして独立……というふうに“キャリアの冒険”を続けてきましたが、その根底には常に「自分自身の好奇心」と「どこかにあるかもしれない、より良い選択肢を探り続ける姿勢」がありました。心理学のおかげで人の心を捉える本質を学び、統計学のおかげで情報を扱う土台を作り、哲学のおかげで「自分はどう生きたいのか?」を問い続けられた。おかげで、習慣形成をサポートするコンサルタントとしての道も、自信を持って選びとれたのです。
• 心理学は「他者を知り、自分を知る」基盤。
• 統計学は「情報を精査し、誤った結論から身を守る」盾。
• 哲学は「人生の意味や価値観を問い、真の自分と向き合う」ための灯。
もし少しでも「これは意外だった」「自分も始められそう!」と思っていただけたなら、今日から気になる本を一冊手に取ってみてください。あるいはYouTubeの無料講座を探してみたり、近所の市民講座に参加してみてもいい。誰かのすすめを鵜呑みにする必要はありません。あなたがワクワクするところから、どんどん触れてみればいいんです。そうした小さな一歩が、「こんな見方があったのか!」と驚く発見につながり、気づけば自分の人生そのものがアップデートされているかもしれません。
おわりに──新たな好奇心を、あなたの次の一歩に
大人になってからの学びって、受験のためでも成績のためでもない分、むしろ“自分の人生にダイレクトにつながる”実感が得られます。私も研究室時代は「これ、本当に意味あるのかな……」と自問自答を繰り返しましたが、心理学・統計学・哲学のいずれかに触れるたびに「もっと広い世界を見てみたい」「もっと深く考えたい」と好奇心がかき立てられました。結果、月に10冊の本を読む習慣や、朝のルーティン、さらには独自の習慣形成AIエージェントの開発へとつながっていったんです。
あなたも、これから迎える新しいチャレンジや環境変化のなかで、強い武器や羅針盤を手にしたいと思いませんか? 心理学・統計学・哲学は、まさにその三種の“知的神器”。学びの入り口はたくさんありますが、どこから始めてもきっと「意外と身近」「やってみると楽しい」「自分の軸が磨かれる」と感じられるはずです。
もしこの文章を読んで「なるほど、ちょっとやってみようかな」と思っていただけたら、ぜひ“いいね”やコメントで教えてください。あなたの学びが、次のワクワクや充実感を連れてきますように。そして、今の激動の時代を、自分らしくしなやかに渡っていくために──一緒に“学び直し”を楽しんでいきましょう!