競技人口と負傷発生推移は関連するのか?年代で発生部位は変わるのか?ラグビーの場合
スポーツに怪我はつきもの、ラグビーは負傷が多い怪我
だから、しょうがないではなくやはりできるだけ減らしていかなくてはいけないもの。普段関わっているラグビーでの負傷・疾病発生推移を調べてみました。高校だけだと比較もしにくいので、中学校での推移と比較しています。中学生はスクールもありますが、対象にしている学校安全の災害給付は学校での活動が対象なのかな?ということで。
1.主要負傷・疾病総数の推移
【中学校】
脱臼、靱帯損傷・断裂の数は変わっていませんがその他は減少傾向にあります。熱中症、少ないんだなというイメージです。これは安静にして回復したということも含まれているかもしれません。
【高等学校等】
人数が減っていても負傷数が減っていないだけでなく増えている種別もあることがわかります。負傷では骨折が減っているけど、靱帯損傷などは増加傾向にあります。疾病でも、外部衝撃等に起因するものが増加。
中学校(図表)
高等学校等(図表)
2.部位別推移:頭部・頸部・顔部
【中学校】
母数が小さいので難しいところですが、それでも頭頸部や鼻などは改善傾向にはありません。
【高等学校等】
顔の怪我は減少傾向にあるけど、頭部は増加しており頸部もやや減少にとどまっています。安全対策の中で頭頸部の問題は重傷事故予防でもよく対策が講じられていますが、数値で見ると残念ながらあまり成果が見られていないということも言えます。
中学校(図表)
高等学校等(図表)
3.部位別推移:体幹部
本来、頸部は体幹部に分類されていますが、別で集計しました。
腰部、思いのほか少ないんだなというのが印象です。給付対象になるほどのレベルではないということなのでしょうか。中学校では肩の負傷が高等学校等に比べて上位に挙げられています。
中学校(図表)
高等学校等(図表)
部位別推移:上肢
手・手指部は軽視されがちだけど中学校・高等学校等ともに発生数は最も多い部位。突き指、と思っていたものが骨折だったということも起こりうる部位。ほかの競技でも同様のことが言えるかなと思います。
中学校(図表)
高等学校等(図表)
5.部位別推移:下肢
足関節、膝はどちらの年代でも負傷が多い箇所に入りますし、下肢の負傷は部位ごとでは最も多いですね。高等学校ではここ7年で増加傾向にもあります。ラグビーという特性以外でも下肢はやはり練習量との関連が大きくなるもの。登録人数減っているけど練習量が減っているかどうか、、これは別かもしれませんね。
中学校(図表)
高等学校等(図表)
6.負傷・発生推移と登録人数推移
中学校(図表)
高等学校等(図表)
負傷数と登録数の推移を改めて比較してみると、上記の通りです。それぞれの負傷の発生割合などを比較する必要があるので、上記の数値傾向も増加/減少を語っていいのか、というところは考慮する必要があります。
7.負傷部位上位5項目
7.1中学校
手・手指部,肩部,足関節,膝部,頭部
7.2高等学校等
足関節,手・手指部,膝部,肩部,頭部
ということになりました。関わっていると確かにそうだなぁと思う部位。頸部は少ないけど、やはり起きた時のインパクトというか重大さもある。そして頭部も脳振盪などは経過観察で終わっていたらここに含まれないものもあるんじゃないかなと思います。熱中症もそこに含まれるのではないかと感じます。
中学校と高等学校でも、部位は同じですが発生頻度には差がありました。
まとめ
今回は学校の災害給付データから検証してみましたが、中学生年代はスクール等で行っていたらここに含まれない可能性もあります。
そういう部分では怪我を減らそうという試みと同時に負傷・疾病数を正確に把握することはやはり必要になりますね。軽度のものも含めて。
まだまだこういう数字を出すことにはネガティブなイメージもつきがちですが、実態把握にもっと我々自身も取り組んでいかなくてはいけないと改めて思います。それを抜きに「トレーナーの活用を」と叫んでみてもやはり不十分なように思います。
このような調査が進むと一時的に悪化傾向にみえることも出てきますが、それらの解釈も含めて。