あの日のトトロたち
不思議なことに、小学生ぐらいからずっと同じ夢を見ている。
となりのトトロのアナザーストーリーを描いた夢だ。
舞台はねこバスを待つあのバス停の前。
夜も深くなった山中のバス停で、メイちゃんとトトロが並んで待機している。トトロの足元ぐらいの背丈のメイちゃん。たった一つしかない田舎の街灯に照らされて、ぼんやりと浮かぶ大きな体と小さな体。呼吸音の輪郭がはっきりするくらいの静けさ。
待ちに待ったねこバスは、映画で観たとおりの大きな目から、真っすぐな黄色の光を夜空に伸ばしてバス停へ突進してくる。目を輝かせてねこバスを見つめるメイちゃんと、夢の中で見切れている図体が規格外のトトロ。
ここで、ねこバスに乗ってあのふかふかの椅子に座るのが映画本編の流れであるが、夢の番外編には先客がいた。
ねこバスから、大量のトトロがとめどなく降車してくるのだ。しかも、あのトトロとは、ビジュアルも少々異なる。お腹が白くなくて、目だけがはっきりと分かる、影を表象させたような姿をしている。そいつらがドドドドドドドドドとねこバスから降りてくる様子を見て、メイちゃんが大興奮の中で子ども特有の発狂を披露して夢はいつも幕を閉じる。
その夢の内容が忘れられず、友人や親に、
「ねこバスって、もともとトトロがいっぱい乗ってたっけ?」
「トトロってもっといるよね?」
と、謎のトトロクローン説を提唱する旨の質問をすることがあった。
もちろん、決まって心配そうな顔をされる。
でも、夢にしてはリバイバル上映され過ぎている。それにこんなにはっきりと夢を思い出せるのも、私にしては記憶力の出来が良すぎる。
そんなもやもやを抱えながらも、トトロのクローンたちは私の中にずっと居座っていた。
そして、2021年の秋。
これじゃん。
ジブリ美術館に奴らはいた。
影みたいなトトロのクローン。どうやら私のイマジナリーフレンドでもなく、ハヤオ・ミヤザキがちゃんと創り出した生き物だったようだ。
ジブリ美術館で限定上映の短編だったらしく、その名は
ちなみにジブリ美術館に行ったのはこれが初めて。
いつこれ観たん。全然記憶がない。
地元でジブリ展が開催されていると決まって家族で行っていたので、それが知らずにリフレインしていたのか。それとも謎の電波を受信していたのか。
とりあえず、「夢だけど、夢じゃなかった。」
まさにそんな出来事が起きたのでした。ちゃんちゃん。
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