第3回 ふたりのこども
今日はまずイメージトレーニングをしてみませんか。
あなたの目の前に2人の子供がいます。
彼らまたは彼女たちはいったいどんな格好で、どんな姿勢でいますか?
可能ならその子たちがいる場所も教えてくれると助かります。
その子たちはあなたに話しかけて来ます。
どちらの子が話しかけてきましたか?
それはどんな内容でしたか?
その時もう一方は?
話しかけてくるなら耳を傾けてみて下さい。
性格傾向などを測るものではなく正解は全くないので自由に想像してみて下さい。
境界性パーソナリティ障害は多くの場合「スプリッティング」を起こしています。
スプリッティング。すなわち二つに割れていること。
強く相反する価値観があったり、自分のした行動が後から無価値なものに思えて来たり、他者の評価がある日突然いきなり上がったり下がったり。
それが二面性であったり、気分変調のもとであったり、我を忘れて何かに取り憑かれる原因だったりします。
あるいは…あんまり言いたくはありませんがそれぞれが独立しているかも知れません。
諸説はあるものの今日はいくつかの説を参考にした持論を展開してみようと思います。
思い浮かべた子供たち。
まず一人は
「孤児」
味方がいない子供。
その子は寂しがり屋で人懐っこいくせにその絆が無条件に続く事を信じていません。
なので、あえて嫌われる事をしてみたり、自分から離れたり、寂しくならないように一人でいます。
時たま「ここではないどこか」に行く大冒険をたくらんでいます。
もう一人が
「批判的な子供」
批判的な子供は、一般常識も解っているし大人びています。
努力しようと一生懸命になったり、皆の期待を裏切らないように自分を演じたり、時折自分を捨ててまで誰かに何かを渡そうとします。
批判的な子供は彼または彼女が良くないと感じた事はちゃんと注意して改めさせようとします。
さて。
思い浮かべた子供たちはこんな感じでしたか?
もちろん違ってもいいし、どんな子か思いつかなくても全く問題ありません。
「そうそう!そんな感じ!」
と言ってくれる親切な方のためにもう少しこの子供たちについて理解を進めましょうか。
孤児はあなたの養育者や重要な他者から見捨てられた事を感じている子供。
ある程度それを受け入れている面があるので、自由気ままな部分があると同時に宙ぶらりんで心がからっぽだ、なんて感じていてそれを満たすためにさまざまな手を尽くします。
人を信じていないため、どこか不安定なところもあります。
批判的な子供は、実は「従順な子供」です。
養育者や重要な他者の言いつけを守らないと罰を受けたり、保護を受けられないので言いつけを守ります。
場合によっては自分にとって不利益な提案でも受け入れてしまいます。
そして養育者や重要な他者の言いつけを「孤児」に守らせようとします。
そう。
時たまあなたが罪悪感に駆られたり、自己嫌悪をしたり、誰かに強く頼まれると断れなかったり、自分を罰したくなるのは養育者の影法師であるあなたの中の「従順な子供」がそうさせているのです。
どちらの声が大きいか、どんな性格かは人それぞれだし
もう片方が怖がって隠れていたり、片割れが怒ったり悲しんでいてあなたの気を引くために無視されている場合があります。
二人の子供はあなたの中でくるくる入れ替わったり、ケンカしたりどちらかが何かに夢中になっていて落ち着かないことがほとんどです。
かと言えば二人同時に全力で遊んで同時に力尽きて寝てしまう事もあるんですが。
そしてその二人はひょっとしたら「幼い頃のあなた」や「辛かった記憶」の門番をしている可能性があります。
これは人それぞれなので絶対というわけでもなく、そうかもね、くらいのものです。
境界性パーソナリティ障害はあなたの中にいる、あの日に置き去りになったままの二人または三人の子供に優しく語りかけ、今に連れ帰る作業をしっかりすれば回復を早める事が出来ます。
あ、もちろん「今」は安全な場所じゃなきゃいけないですけどね。
もし冒頭で二人の子供をちゃんとイメージ出来た境界性パーソナリティ障害の方はその子たちを一日一回は思い出して、今日みたいに「今話せる事ある?」とか「今日は話していい?」など優しく頭を撫でる気持ちで話しかけてみて下さい。
案外話してくれる時はあると思います。
話してくれたらお礼なりご褒美なりをちゃんと用意して下さい。
俺の今は一人になった子供はやたらバームクーヘンを食べたがります。
彼または彼女たちはあなたの大逆転の鍵を握ってる存在です。
あなた自身が辛い時は彼らもまた辛いはずなので優しくしてあげて下さい。
そして…。
子供たちがちゃんと成長したあかつきには、とんでもないほど頼もしい味方に変貌します。
参考文献
・境界性パーソナリティ障害
岡田尊司
・内的家族システム療法スキルトレーニングマニュアル
フランク・G.アンダーソン /マーサ・スウィージー /リチャード・C.シュワルツ
・スキーマ療法入門
伊藤絵美 他
差分
なんか自然とこの口調になっちまったけど誰なんキミ 笑
ちなみに臨床心理士にカウンセリングを受ける場合、この「二人の子供」がどんなかを話した方が手取り早かったりします。