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ryuseizan
孔子の人生を踏まえて『論語』を読む
先週、中国古代史を題材とする小説家・宮城谷昌光さんの『孔丘』(文春文庫)を読み終えました。上下巻にわたる作品でしたが、大変読みやすく、興味深い内容でした。本書は、『史記』などの史料をもとに、孔丘、つまり孔子の人生を創作した歴史小説です。
読んでいて特に印象的だったのは、『論語』の教えが確かに示唆に富んでいる一方で、孔子自身の人生を理解しながら読むことで、その言葉の重みや背景への理解がより深まるのではないか、という点です。
『史記』などから伝わる孔子の人生は、決して順風満帆なものではありません。祖国への忠誠を貫きながらも、何度も追放や流浪を経験しました。また、家庭においても決して恵まれていたとは言えず、妻との離別や子育ての苦労など、数々の困難に直面しています。
こうした苦難や葛藤の中から、何千年もの間、多くの人々に影響を与えてきた『論語』が生まれたのだと感じます。それは、単なる机上の理論や理想論ではなく、人生の試練を経て培われた、リアルな知恵なのではないでしょうか。
『孔丘』の中にも『論語』の言葉が随所に散りばめられていましたが、改めて孔子の人生を踏まえながら『論語』を読み直してみたいと思います。