見出し画像

必死なリーダーは人の短所なんかみている暇はない

経営学者として有名なピータードラッカーは、成果をあげる為には強みを活かすことだと言われていました。そしてその際、「自分とうまくいっているか」を考えてはいけないとされています(「経営者の条件」)。
 
私はこれを読んだ時、徳川家の歴史を書いた徳川実記の一節を思い出しました。それは徳川家康が次のように言ったくだりです。
「人の善悪を察するに、ややもすれば己が好みにひかれ、わがよしと思う方をよしと見るものなり。人にはその長所のあれば、己が心を捨て、ただ人の長所をとれと仰せられし事もあり。」(人の良し悪しを見る時に、どうかすると自分の好みに引っ張られて、自分が好きな方を良いとするものである。人にはそれぞれ長所を持っているので、自分の心を捨てて、ただ人の長所を活用すべきだと(家康は)言われていた。)
 
まさにこれは、ドラッカーが言っている、強み(長所)を活かすべき、その際に「自分とうまくいっているか(自分の好みに引っ張られて)」と考えてはいけないと通じるものだと思います。
 
戦国時代の武将、大名の中には、これと同じことを言っている人が散見されます。関東を支配していた北条氏の2代目北条氏綱は次のような遺書を書いています。
「その者の役に立つところを召しつかい、役にたたざるところをつかわず候にて、いずれも用に立て候をよき大将と申すなり」(その人の長所を活用して、短所を使わない。どんな人も活用することこそ名将という者である。)
私はこの遺書を読んだ時は鳥肌さえ立ちそうな気がしました。
 
なぜ戦国時代の武将、大名はこのように考えたのでしょうか。それは、文字通り生死をかけた事業運営を行っていたからではないでしょうか。もし平和な時代で生死がかかっていないと、短所しか見当たらないと思う人は「あいつは使えない」と放置しても、死ぬことはありません。
 
しかし、生き死にがかかっていたらどうでしょう。
生き死にがかかっていたら、どんな人でも長所をみつけて活用し、総力戦で勝たないといけないのです。つまり、多くの人の長所を見つけ、活用した武将、大名こそ勝利し、生き残り、名将として評価されるのです。
 
これは、文字通りの生き死にまでいかなくても、現代にも通じることではないでしょうか。必死の事業運営をしていたら、リーダーはメンバーの短所なんか気にしている暇はなく、いかにメンバーの長所を活かし、事業を成功に導くか考えるでしょう。メンバーの短所を気にしているうちは、そのリーダーは必死さがなく、心の余裕さえあるのです。
 
メンバーの短所が気になりだしたら、私もですが、本当に必死に生き抜こうとして事業運営しているのか、内省したいものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?