シャルル・ドゥ・ゴール、強烈な情熱と信念でフランスを取り戻した英雄
先週は直木賞作家である佐藤賢一さんが描かれた「シャルル・ドゥ・ゴール」を読んでみました。シャルル・ドゥ・ゴール(1890-1970)とは、フランスの軍人、政治家であり、第二次大戦でフランスがナチスドイツに支配された時に海外からフランス解放の為に戦った人で、戦後は大統領にもなります。佐藤さんは小説家ですが、本書は小説というより偉人伝に近く、基本は歴史に忠実な作品です。
私は、歴史において逆境の中、特に巨大な敵を前にして不屈の精神で戦い抜いたような人物に惹かれます。ドゥ・ゴールと同時代人であるイギリスのウィンストン・チャーチル(1874-1965)はこの人物像の典型です。ナチスドイツの攻勢を戦い抜き、イギリスの独立を維持した英雄でした。
しかし、本書を読んで、ドゥ・ゴールはチャーチル以上にこの人物像に当てはまるのではないか、と感じました。
それはなぜか。チャーチルはイギリスという国が残っている中で戦いました。それに対し、ドゥ・ゴールはフランスという国が残っていない中でナチスドイツと戦ったのです。もしかしたら、永遠にフランスが取り戻せないかもしれない中でナチスドイツと戦わないといけませんでした。
その孤独、不安は想像に絶するものです。加えて、同盟国であるイギリスやアメリカもフランスの国益よりも自国の利益を優先する為、ドゥ・ゴールはその大国エゴとも戦わないといけませんでした。まったく、ドゥ・ゴールがいなければ、フランスは戦後敗戦国の扱いを受けたり、日本と同様にアメリカの占領を受けていた恐れすらあります。
そんな孤独や不安、また大国エゴとも戦いながら、ドゥ・ゴールはフランスという国土を取り戻し、フランスという栄光を取り戻したのです。歴史が一人の人間の強烈な情熱と信念で創られるとするなら、ドゥ・ゴールほどそれを表わす人はいません。
そんなドゥ・ゴールですが、その死に際しての唯一の願いは、英雄としてではなく、一人の静かな家庭人として葬られることでした。大規模な葬儀もノン、大きなお墓もノン。障害をもって先だった娘のそばに葬られることだけを望んだのです。
あまりに激しい人生だっただけに、その静かな葬られ方はあまりに対照的な中、なんとなく心穏やかな気持ちで本書を読み終えることができました。
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