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歴史の中の人物達から学ぶ

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歴史好きが高じて40年。歴史番組、歴史ドラマ、歴史書、歴史小説、とにかく歴史に関わることにいつも興味をもって接してきました。そこで感じたことをご紹介させて頂きます。少しでも歴史に…
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血を吐くほどに自分を磨いた中国皇帝

日本ではそこまで知名度が高くありませんが、中国の長い王朝史のなかで屈指の名君と評価が高いのが清王朝(1644年~1912年)の康熙帝(こうきてい、1654年~1722年)です。中国では近年、長編歴史ドラマの主題となるなど、改めて注目が集まっています。 先週は執筆のなかで康熙帝について調べ、書いてみました。元々、世界史のなかでも尊敬する人物ではあったのですが、改めて偉大さを感じました。   中央集権化を目指した内乱の鎮圧、人材の登用、黄河の治水工事、宮廷経費の大幅縮小、そして大

酔っ払いが変えてきた歴史

先週は『酔っ払いが変えた世界史』(原書房、ブノワ・フランクバルム著)を読みました。訳本としては読みやすく、かつ面白かったので、もしもこの題名で興味をもたれた方はおすすめします。   本書を読むと、酔っ払いやアルコール中毒により世界史が変わったことが想像以上に多いのだな、と気づかされます。 それも、多くの方の予想通りですが、良くない方に変えています。 若死、座礁、転倒、敗北、暗殺、、、、だいたい良くない二文字のオンパレードです。 そして20世紀後半から、アルコール中毒は「核戦争

偉業を成し遂げることと、人としての幸せ

最近、ガンディーの本を読むことが多いのですが、そのなかで衝撃的だったのは、ガンディーの長男は最後乞食のようになり、ガンディー暗殺後の数か月後にアルコール中毒で亡くなっていたことです。   なぜ「インド独立の父」であるガンディーの子供がそうなってしまったのか。もし興味があれば『ガンディーの真実-非暴力思想とは何か』(間永次郎著、ちくま新書)をお読み頂ければと思いますが、   一言で言えば、ガンディーが高い理想を目指し、追求すればするほど、犠牲になった家族や周囲がいたのかな、と感

新規事業はリーダー自身が入り込み、学んでこそ

ロシア皇帝だったピョートル1世(1672年~1725年)はロシアをヨーロッパの大国とした人物として現代でも評価が高い人物です。 このピョートル1世が若い時、イギリス、フランス、オランダなどの「先進国」に訪問し、「先進文化」を直接学んだことがあります。それも形ばかりではなく、海軍力増強のために自分自身が「船大工」となり、軍艦の進水まで働くなど、造船技術を直接理解しようとしたのです(冒頭の絵は「船大工」をしていたピョートル1世の絵です)。 この後、ピョートル1世の指導のもとにロシ

信長の手紙から感じるリーダー像

細川家の文化財を所蔵する永青文庫にて開催中の「信長の手紙」に昨日行ってきました。 織田信長から、当時の細川家の当主、細川藤孝(幽斎)宛に送られた手紙が主に展示されていました。   感想として、「信長は部下に頻繁に指示を出す人だったのだな~」ということでした。決して細かく指示をだす、ということではないのですが、家臣が取り組むべきことの指示を常に出し続けていました。有名な印「天下布武」も、情報共有などの時は黒、命令の時には赤で押されていたのは思わず笑ってしまいました。   ただ、

2015年大河ドラマ「花燃ゆ」

2015年の大河ドラマ「花燃ゆ」がNHKオンデマンドで公開されています。幕末の吉田松陰先生の妹であり、久坂玄瑞や吉田先生の同志であった楫取素彦(かとりもとひこ)の妻であった美和子さんの生涯を描いたものです。視聴率は残念ながら低調だったのですが、松陰先生好きな私としては印章深い大河でした。 松陰先生を描いた伊勢谷友介さんは、彼自身も松陰先生を尊敬していたこともあり、大変好演でした。伊勢谷さんは残念ながら2020年に大麻所持により逮捕され、執行猶予付有罪となっています。罪は償い

アタチュルク、父なるトルコ人

昨日、今日とトルコ共和国の初代大統領ムスタファ・ケマル・アタチュルク(1881年~1938年)について集中して執筆しました。 日本では知名度が必ずしも高くないかもしれません。しかし、第一次世界大戦で消滅の危機に直面したとき、戦勝国のイギリスやギリシャと戦い抜き、国を守り切ったこの英雄は、トルコでは「アタチュルク(父なるトルコ人)」と今でも尊敬されています。 ややローテンションではじめた執筆も、徐々にハイテンションになりました。 書き終わったとき、ふと思いました。 日本の

『歴史街道 2024年10月号』に記事を掲載頂きました

9月6日発行のPHP研究所さん『歴史街道 2024年10月号』に私が書いた記事を掲載頂きました。 P97の「私の一冊」というコーナーで、渋沢栄一氏の自伝『渋沢栄一自伝 雨夜譚・青淵回顧録(抄)』(角川ソフィア文庫)を紹介させて頂いています。 1万円札の顔となったこのタイミング、改めて渋沢栄一氏を学ぶ機会となれれば、という想いで書きました。もしよければ書店で手に取って頂けるとうれしいです。

カエサル・シーザーから考える、突き破った時に気を付けないといけないこと

先日、『カエサル 内戦の時代を駆けぬけた政治家』(小池和子著、岩波新書)を読んでいて、心に残る一節がありました。 それは、古代ローマにおいて外征で実績をあげ、政敵を倒して独裁者となったカエサル・シーザーが、共和制を維持しようとする人たちに殺されるに至るまでになぜシーザーが嫌われるようになったかについてです。原文をそのままご紹介します。   「傍目にはきわめて順調に出世を遂げ、かなり自分のやりたい放題にしていたように見えるカエサルが、内心では自分に不満があり、ひょっとすると劣等

「キングダム」は読んでいませんが、始皇帝について

中国の初代皇帝である始皇帝、というと日本では「キングダム」がすぐに連想されます。残念ながら私自身は「キングダム」を読んでいませんが、始皇帝については長年興味をもち、いくつかの書籍を読んできました。「キングダム」の解説本なども書かれている渡邊義浩先生の著書などは分かりやすく、愛読しています。   毀誉褒貶はありますが、始皇帝、というのは本当にすごい君主だったと思います。 最もすごいと感じる点を一点あげよ、と言われれば、紀元前221年、つまり今から約2250年前に中央集権国家を創

総理大臣は本意では退任できない。再び。

今週の最大のニュースといえば、やはり岸田首相の退任表明だったでしょう。支持率は非常に低かったものの、首相本人は再選に向けて動いていていると多くの人が感じていただけに、唐突、かつ驚きをもって受け止められました。   首相の事績については、岸田首相に限らず、常にいろいろな評価はあります。ただ、国が破滅したとかであれば別ですが、一国のリーダーを担われたということに対しては、どういう立ち位置からであれ、敬意と感謝をもつべきだと私は考えます。岸田首相に対しても今は同じ想いです。   実

松下村塾を未来につなぐプロジェクト

著書『リーダーは日本史に学べ』でも取り上げさせて頂いたのですが、私にとって吉田松陰先生は歴史上のなかでも最も尊敬する人物の一人です。 その松陰先生が多くの若者を育てたのが、山口県萩市に現存する松下村塾です。私も2度ほどお伺いしたことがあります(なお、世田谷の松陰神社にも実物大レプリカがあります)。   現在、この萩の松下村塾を保存しようとするプロジェクトが立ち上がっており、クラウドファンディングでご支援を呼び掛けています。なにせ誕生から180年経過していることもあり、老朽化も

著書『リーダーは日本史に学べ』紹介のダイヤモンド・オンラインさん記事(24/8/14)

連載でダイヤモンド・オンラインさんで著書『リーダーは日本史に学べ』のご紹介をして頂いています。 本日は12番目の見出し「内部はもちろん、外部に味方がいないか探してみよ 島津斉彬」の後半部分で、島津斉彬が近代化のために進めた集成館事業を踏まえつつ、新しい事業を進める時にリーダーが果たすべき役割について考えてみました。 新しいことを進める時には、どうしてもリーダーは孤独になりがちなものです。その孤独を受け止めつつも、いかに外部からの協力を得るかが、リーダーとして大事な役割とも感

知るべき歴史は1941年12月から45年8月だけではない

1945年8月15日から79回目の8月15日が近づいてきました。1945年に生まれた方でも今年79歳となります。もし1935年生まれであったとしても終戦時は10歳となります。 残念ながら、戦争中の記憶がある世代はかなり少なくなっています。   でも、だからこそ、あの時代に何があったか意識的に知り、これからの時代にも活かすべきではないでしょうか。なぜなら、あの時代、多くの罪がない人たちが死に追いやられ、国家全体が破滅の淵をみたのですから。   戦争での悲劇というと、太平洋諸島で