【認知的不協和理論】「ネトウヨ」と「リベラル」を分けるもの【脳の構造】/「歴史否認」「陰謀論」はどこから生まれるのか?ーー③「サイコパス」の『脳の構造』
【脳の構造】『理性』と『本能』の関係
『理性』と『本能』の関係
脳は「知性・社会性等」を司る『理性』と、「感情・欲望等」を司る『本能』に分かれていて、『本能』から湧き出る「感情・欲望」を『理性』が制御コントロールすることによって、 人は思考・判断・決定し、行動を起こす。
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『本能』から湧き出る、「○○が欲しい」「△△をしたい」とか、「他者に勝ちたい」「金持ちになりたい」というような《感情・欲望》に対して、“その目的を達成するためにはどうしたら良いか⋯” “今これをしたらどうなるか⋯”など、様々な選択肢の中から『理性』が客観的・俯瞰的・多角的に見て考える。
そこで「今は必要ない」「身体に害をなす」 などと欲望や感情や行動を抑制したり、「他者に迷惑をかけた」「失敗した」などと過去の行動を反省し、もう二度とやらないように注意したり、逆に 「こうすれば解決する」「こっちの方法が良い」などという意欲・創意・工夫が出てくる。
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脳の発達ー「自立するということ」
子供の頃は『大脳辺縁系(本能)』の比重が大きく、生きていくためには、「親に守ってもらいたい。甘えたい。 構ってもらいたい」という思いで一心だったのが、思春期(反抗期)の頃から『前頭葉(理性・抑制機能)』が発達するに連れ、視野を広げ、自分で生き方を判断・選択できるようになり、親の「命令・期待」に対して自分の「意志・信念」を守ろうとする《自立心》が生まれてくる。
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遊びや勉強など、社会で生きていく中でいろんな興味や疑問を持ち、冒険や試行錯誤、失敗や挫折をくり返しながら、危機や困難にぶつかった時、「どうしたら解決できるか?」という、いろんな選択肢や可能性を“柔軟”に広げることができるようになる。
そうして人は、前頭葉(抑制機能・葛藤)が発達していくことで『自立』していく。
◉自立とは
・依存先を増やす
・生きる選択肢を増やす
・自分を客観的・俯瞰的に見ることができる
・相手の立場で考えることができる
・自分の行動を抑制できる
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しかし、その脳の成長(思考の深さ・柔軟さ)には個人差がある。大人になっても、一面的・短絡的思考で、善悪二元論・白黒思考でしか物事を捉えられない人、相手の立場にだって考えられず、すぐにキレる人、常に自分の利益を追い求め、行動を抑制できない人もいる。その個人差はどこから来るのか?
神経伝達物質バランスの異常
その「理性」と「本能」の関係(脳神経ネットワーク)を形作っているものは“神経伝達物質”である。
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そして、その神経伝達物質のバランスは『遺伝的要因』と『環境的要因』で決まり、その中でもストレスへの耐性を決める要因として幼少期の育った“環境”が大きく影響し、特に不適切な養育(マルトリ)によって『脳の構造』が大きく変わってくる。
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人間は『強いストレス』がかかったり、『日常的・慢性的なストレス』がかかり続けると、身体がそれに反応し、神経伝達物質のバランスが変化する。
ストレスがかかると、ドーパミン、ノルアドレナリンが過剰分泌され、セロトニン欠乏が起こる。その反応は、本来、脳を覚醒させ、集中力・判断力を高め、やる気・意欲・闘争心を向上させる。それは危機に対応するための『防衛本能』であるが、一方で、それが慢性的に続くと「不安・恐怖」を感じる《扁桃体》が活性化され、過敏になる。
そうすると、ちょっとしたことでストレスホルモンである「コルチゾール」の分泌量が増加し、その濃度が上昇するにつれて、徐々に脳の神経細胞の活動が低下し、海馬が萎縮し、前頭葉の機能が低下し、感情の制御ができなくなる。
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そのことが、理性的・合理的・抑制的な判断ができなくなり、すぐにキレたり、非行に走ったり、自殺する原因となる。
よく犯罪を起こした人⋯体罰・虐待・あおり運転・窃盗・性犯罪・レイプ・汚職事件など、「記憶にない」と否認し、嘘を付き、「自分は悪くない。誰かが自分を陥れようとしている」と、責任を相手になすりつけ、自分の責任を矮小化ようとする。
それは
1:前頭葉の(認知・抑制)機能低下
2:扁桃体(不安・恐怖)の過敏・暴走・機能異常
3:報酬系(線条体・側坐核)の活性化・暴走・機能異常
3:(短期的な記憶や情報を制御する)海馬の損傷
⋯
などの脳のネットワーク・バランス異常が影響していると考えられる。
そのために、自分の行動を客観的に認識できなく、行動を反省し、欲望を抑制できなくなっていると同時に、都合の悪い記憶を消し去り、都合の良いように書き換える。現実と妄想・願望の区別がつかなくなる。
『感情・欲望』が暴走する中で、自分の行動を正当化するために平気で嘘をつく“サイコパス”になる。嘘をつくことに葛藤がなくなり、嘘と現実の区別がつかなくなり、罪悪感や良心の呵責がなくなる。
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『サイコパス』と【脳の構造】
「サイコパス」は反社会性パーソナリティ障害として分類され、良心の呵責・罪悪感・共感性の欠如といった特徴がある。
サイコパス傾向が高いほど嘘をつく際の反応時間が速い傾向にあり、また葛藤の検出などの心理過程に関わるとされる『前部帯状回』の活動が低いことが明らかになりました。
サイコパスは、ためらうことなく半ば自動的に嘘をついてしまう傾向があり、その脳のメカニズムとして『前部帯状回』の活動低下がある。
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サイコパスの大きな心理的特徴として「・共感性が低い・衝動性が強い・攻撃性が強い」というのがある
『腹内側前頭前野』と『報酬系』の結びつきが弱いと、報酬を目の前にするとドーパミンが多量に放出され、テンションも上がりやすい。なおかつ感情の抑制機能も弱い。
これらのことからサイコパスは報酬を目の前にした時、人一倍衝動的になるのではとないかと考えられている。
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サイコパスは非サイコパスの対照群と比較して、脳の『線条体領域』が平均で約10%大きいことが判明した。これまでの研究で、サイコパスの脳では線条体が過度に活性化していることが指摘されていたが、その大きさが行動に及ぼす影響について決定的なことは分かっていなかった。
サイコパスとは一般的に、自己中心的で反社会的な性格をもつ人物と定義される。彼らは通常、自分の行動に対する後悔の念の欠如、他者への共感の欠如、そして犯罪傾向によって特徴付けられる。
線条体は、大脳皮質と視床・脳幹を結びつけている大脳基底核の一領域で、運動および行動の企画、意思決定、動機づけ、強化、報酬の認識など、認知に関する多面的な調整を行う。
「線条体」が活発な人は、刺激欲しさにスリルある行動に出たり、衝動的な行動を起こしやすい傾向にある。
しかし通常、線条体は大人に成長するにつれて小さくなる。この事実から、サイコパスの脳は、子供から思春期にかけて正常に発達しなかった可能性がある。
衝動的・反社会的傾向は「線条体」が大きさと、ドーパミン放出回路の報酬予想に関わる「側坐核」の脳活動の増加と強く相関している。
また、線条体の活動は、社会的・道徳的意思決定・恐怖学習・共感的反応に関わる「腹内側前頭前野」によって制御されるが、その結びつきが弱い。
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刑務所の受刑者の脳を測定した結果、サイコパスの精神病質レベルが高い受刑者ほど、脳の腹側線条体という領域が活発で、すぐに報酬をもらう選択をする傾向にあった。
また腹側線条体と腹内側前頭前皮質という別の領域とのつながりが通常よりかなり弱いことも判明した。腹内側前頭前皮質は”精神の時間旅行”、すなわち行動の将来的な結果について考える能力に関連する領域だ。
これらの発見は、サイコパスの反社会的行動が、彼らの脳が目先の報酬を過大評価し、同時に将来的なコストを無視してしまうことに起因すると示唆している。
「サイコパスとされる個人の意思決定パターンは、薬物の乱用・過食・ギャンプル依存症といった自己破壊的行動をとる人々のそれとそれほど変わりません。サイコパスになるかどうか分けるのは、感情の欠陥といったことかもしれません」とバックホルツ氏。
阿部修士特定准教授らの研究グループは、機能的磁気共鳴画像法と呼ばれる脳活動を間接的に測定する方法と、嘘をつく割合を測定する心理学的な課題を使って、正直さ・不正直さの個人差に関係する脳の仕組みについて解明しました。
世の中には正直者と嘘つきがいるが、どうして個人差があるのか。
報酬を期待する際の『側坐核』と呼ばれる脳領域の活動が高い人ほど嘘をつく割合が高い。
さらに、側坐核の活動が高い人ほど、嘘をつかずに正直な振る舞いをする際に『背外側前頭前野』と呼ばれる領域の活動が高い
自分は平均より優れていると思う「優越の錯覚」は『前部帯状回』と『線条体』の“機能的結合”の度合いと相関関係にある
機能的結合が弱いと、優越の錯覚は強い
機能的結合が強いと、優越の錯覚は弱い
そして、この機能的結合は、線条体のドーパミン受容体密度に依存している
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以上などのことから
サイコパスは、脳の『報酬系(線条体・即座核)』と『前頭葉(抑制機能)』の関係(バランス)において、『報酬系』の増大と『前頭葉』の機能低下がある。
前頭葉(抑制機能) < 報酬系(線条体・側座核)
そうなると、
・迷惑行動を注意されたら、すぐにカッとなって相手を攻撃する
・自分が侮辱(否定)されたと感じたとき、暴力に走る(煽り運転・体罰・虐待)
・「自分は正しい、間違わない」という『優越の錯覚』が強くなる
・何か問題が起き、うまく行かないと、すぐに「自分は悪くない。悪いのは他者である と、他者に責任を被せようとする(他責思考)
それが、ウィシュマさん入管死や技能実習生問題などにおいて、コロナ禍のダイヤモンド・プリンセス号やモーリシャス沖重油流出事故、福島原発汚染水放出などにおいて、また過去の戦争責任において、「日本は悪くない、悪いのは外国人」となる。
ここから分かるのは、自信満々で饒舌で「優越の錯覚」が強い人ほど、平気で嘘をつける傾向があり、その背景には『前頭葉(抑制)・前部帯状回(葛藤)』の機能低下がある。
またそれが、人が「保守化」する原因ともなる。
人は、自分の行動を正当化するあまり、責任を相手に押し付け、激しく相手を攻撃しようとする
そこでは“受験競争”の中で勝ち残っていったエリートが、権力者や組織を守る為に平気で嘘をつき、不正を働くようになる。
国は『不況・貧困・災害・戦争⋯』が続く中で「右傾化」しやすくなる。それは「不安・恐怖」が増大する中で自分の行動を「正当化したい」という心理的メカニズム(防衛本能)がある。
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