人面魚のはなし #9
最終話 エピローグ
あれから霧も人面魚も僕の周囲に現れる事は無くなった。
そして僕もめでたく学校を卒業できる事になり、就職活動を始めている。
視界はクリアに映り、足音もまたクリアに響いている。
だけど、時々――
緊張した僕の傍に、
ヒンヤリとしたヒレが、
柔らかな頬が、
小さな鈴の音が、
――“在る”感覚がする。
それは彼女がいた事の、そして今もいる事の証だ。
人面魚は生き続ける。
僕が生き続ける限り。
――人面魚は僕の心を泳ぐ。