人面魚のはなし #8
第8話 帰還
「イヴ、話があるんだ」
誰もいない公園で、人面魚に声をかけた。
彼女は僕の顔を見て何か察した表情をして、ゆっくりと僕の正面へ廻り、向き合った。
彼女は僕を見つめた。
僕も彼女を見つめた。
霧はぐるぐると渦を巻いて2人を包んだ。
「イヴ、僕は君が好きだ」
僕は彼女をそっと抱き寄せた。
彼女が微笑みながら目を閉じるのを確認して、僕も目を閉じた。
ヒンヤリとした霧の粒が、僕の肌に沁み渡るのを感じた。
目を開けると、彼女と霧は、消えていた。
僕は1人に戻った。