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底つき体験が習慣を生む

私は週に2回ジムに行く.ジムに行く勢の中では大した頻度ではないが
運動習慣をつけたいつけないと思いながらつけられない人もたくさんいる.
私もかつてはそっち側で,自分に運動習慣がつく未来がくる自信がなかった.
定期的に運動する人というのは,なんとしっかりした人なのだろうと思っていた.
なぜ運動習慣がついたかといえば,底つき体験である.
人は,もうこの状況が本当に,死ぬほど,嫌だ!ここから逃れられる方法があるなら,やる!!という状況になると,変われるなと思う.
もっとちゃんとした人ならそんな状況になる前に変われるのかもしれないが,人間にはエネルギーリソースの限界があって,それをそれぞれの状況で必要なところに配分して使ってると思う.
私は,それまで他のところに使っていたリソースを,運動に配分することにしたのだろう.底つき体験によって・・

私は,自分は運動とかしなくていい,運動とかいらないタイプの人生だと思っていた.両親も運動習慣はなく,母親は料理を作ればあげもの,強火で加熱して焦がしたカレー,週に4,5回以上の外食,土日の昼は必ずマックかファミレスのモーニング,平日の朝ごはんは菓子パン,お弁当には冷凍食品の揚げ物とグラタンとご飯,というタイプの健康意識が異様に低い家庭だった.
そんな家庭だったので,私は常に体がだるく,眠くて,脳が朦朧とし,体育も異様にできない子供時代だった.階段を登ると身体中が重たく,目眩がした.クラスで一番太っているわけでもないのに,短距離走も長距離走もクラスで一番おそい部類だった.なんでなのか当時は脳が朦朧として考えようとも思わなかったが,圧倒的に筋肉不足だと思う.運動部に入ろうとはゆめゆめ思わなかった.

そうして大学に入り,自己管理能力は最底辺だった.朝大学に行けないし,課題も頑張れない.お菓子を主食にしていたところがあり,道を歩いているだけで異様にだるくて死にそうになる時があった.あのまま拗らせていたら糖尿になっていた気がする.大学院に進学したが,周りは本当に体力おばけだった.私は体力もないが,ストレスホルモンをエンジンにして頑張っていた.体が弱いという自覚があったからか,不健康な生活の割に,健康オタクなところはあった.幼いながらに怪しい健康の知識を仕入れては,それを実践したり,プロテインダイエットをしたりしては挫折していた.

博士課程はひどいもので,最強に体力がある人と張り合って大変なことになった.ウイスキーを一気飲みすれば3時間で目が覚めるから,そうやって毎日3時間睡眠で研究しろと言われていた(できなかった).今思うと私を潰そうとしていたと思う.その中で,当然ながら心身は限界を迎え,種々のうつ症状が出てきた.この時の鬱症状は,早めに帰宅して,たくさん寝るようにして,銭湯に通うことによって,なんとか悪化させずに乗り切ることができた.銭湯やサウナは,運動によって得られる各種の良い効果を,いっとき得られることができるのだ.

その後問題になったのは,助手時代である.私は博士号が取れず,働きながら取ることになった.博士号の研究と,全く別の大学の仕事を同時並行でしないと行けない.詳細は省くが,色々とトラブルがあった.このまま学位が取れなかったらアカデミアに残ることはできない.
この辺のストレスというのは,多分アカデミアにいないとわからない気がする.そして,アカデミアで順調だった人にもわからないだろう.別にいける企業に就職すればいいじゃんとも思う.人生が究極的に自分にとって何がいいかなんてわからない.アカデミアの方が優れている進路なんてことはない.だけど当時の私は,アカデミアじゃなければ自分はとても適応できない気がしていて,当時はそれがめちゃくちゃな苦しみだった.自分だけの苦しみというものがあるし,それはたとえもっと世界が見えている人が私を愚かに思ったとしても,確かに自分で対処するべき自分だけの確かな苦しみなのだと思う.
これに加えて20代後半で,結婚しろと言われる時期である.今思えば若いし,焦ることもないのだが,20代後半というのは確かに女性として市場価値が高くいい時期ではあるので,周囲は焦らせようとするし,ここで流れに乗れた人はいい結婚もできることは統計的にいえば事実なところはある.これも,ものすごいストレスだった.何もかも諦めて,結婚して別の人生をスタートしようかとも思った時もあった.だけどそれが向いてないし,そうしたいと思える人と縁はなかった.
この年に失恋もあり,犬も死んだ.
とにかく,ストレスで精神的に,苦しくて,限界で,もう嫌だ,もう悩みたくないという欲求があった.
そして,やはり体が悪くて,ものすごい倦怠感で動けないみたいな日がちらほらあったのだ.アカデミアに残らないとしんどいと思ってるのに,こんな人間が,元気な人の巣窟のアカデミアで,やっていけるわけがない.

その時に,ようやく運動しなくては,と心から思ったのだった.
運動の効果というのは,至ることろで言及される.
様々な効果がある.
体にも,メンタルにも効果がある.
辛くて死にそうな時も,運動するとどこかスッキリする.
大学のジムに通うようになった.
青学のジムは素晴らしいところで,私のような運動習慣皆無で
何したらいいかわからない,つまんなくて続けられない人が
続けられるような声掛けとかイベントが結構あった.
若いマッチョのひしめく中で,自分のような脂肪袋が筋トレするのが
気恥ずかしい,と自意識過剰になっていたが
あの時の自分がなんて初心者なんだろうと思う.
学生と一緒に行ったりもできて,孤独が和らいだ.
かなりありがたかった.
当時の体重と今の体重は同じくらいなのだが,当時は太っていてやばいと言われまくっていた.今もちょっと減らした方がいいレベルだが,太っているとはあまり言われない.多分脂肪が筋肉に変わったのだと思う.

そんなこんなで,青学に6年お世話になって,別の大学に移動になり
なかなかジムに行けなくなった.
やはりすごく調子が悪くなってしまった.
2ヶ月あけて,近くの別のジムに登録することにした.
こうして,ジムに行かないと不安になりお守り的な行動として
ジムに行くことが習慣となったのだった.
なんか調子が悪かったり,心配事が多い時も
とりあえずジム行っとくか・・と行くと,いい効果があると思う.
そして,筋肉があるかどうかが本当に健康に寄与するところが大きいし,見た目年令にも本当に効いてくると思う.

だけど私の人生が順調だったら,多分今も運動習慣はなかったと思う.
こんな感じで,人生で,うわああああ嫌だ・・つらい..しんどい・・
と心から思ったときに私は変化してきたなと思う.

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