[無料]登山で自分や仲間が死なないために大事な知識、「かも知れない」
Twitterで「登山関係の基礎知識」としてまとめましたが、140文字の制約で細かいことを書けなかったので、もうちょっと解説してみます。これらの知識を知らない人達に届きますように!
晴れてても雨具を持つ
日帰りの登山で当日が晴れていても雨具は必ずザックに入れてください。山の天気は変わりやすく、急に雨が降るかも知れないし、当日は晴れていても遭難して帰れなくなれば翌日や翌々日は天気が悪くなるかも知れないからです。レインウェアは防寒着としても優秀です。必ず持ってください。
ヘッドランプは必須装備
日帰り登山で計画通りに行動できれば、普通は明るいうちに下山できます。じっさい、大抵の登山ではヘッドランプの出番はありません。しかし予定よりも遅れたら日が暮れてしまうかも知れない。夜の山は本当に真っ暗で、明かりが無ければなにもできません。スマホのライトは暗くてバッテリーを消費します。ヘッドランプは必ず持ってください。
モバイルバッテリーも必須装備
スマホは現代登山の命綱です。通報、SNS、メッセンジャー、天気予報、GPSアプリ、決済、乗換案内などなどの機能を担い登山を大いにサポートします。そんな命綱が使えなくなったら死活問題です。バッテリーが切れるかも知れないと考えて、必ずモバイルバッテリーを持ってください。
充電忘れ、ケーブル忘れ、ケーブルの断線にご注意を。ケーブルは予備を持っておくとよいです。余ってるやつをザックのポケットに入れっぱなしにしておきましょう。
↑コスパが良くて推しているモバイルバッテリーです。小型で十分な容量があってコネクタが多くて同時充電、急速充電対応。丸2年使ってますが問題はありません。
パーティーは最後まで一緒に行動する
複数人で登山をするなら最初から最後まで一緒に行動してください。多少離れるにしても、視界から外れない範囲にしましょう。メンバーの中で一時的に単独になった人が行方不明になってしまうケースがよくあります。
ペースが遅いから先に行ってる、トイレに行きたいから先に行ってて、などの理由でパーティーから離れた人がどこかで滑落したり道迷いで間違った方へ行ってしまうかも知れません。それをメンバーなどが見ていればすぐに救助できますが、一時的でも単独だとそのまま行方不明になってしまいます。くれぐれも、最後まで一緒に行動してください。
事故はなんてことない場所で起こる
明確な急斜面や鎖場、ハシゴなどでの事故は意外と少ないもので、多くの事故は「一見なんてことない安全な道に見えて、実は落ちたら大怪我したり死んだりする場所」で起きています。単純に登山道に占める割合の差もありましょうが、緊張が解ける一瞬の隙で事故が起きてしまいます。
下の写真は都民の森の普通の登山道ですが、左が崖で路肩が崩れています。よそ見をしていたり暗い時間にヘッドランプの狭い視界で見えなかったりして、この崩れた場所に足を置いたら…どうなるか想像できるでしょう。なんてことない登山道でも十分死ねます。
例えばこういう感じで、登山道に木や岩が張り出している場所も危険です。避けたつもりがザックが引っかかったり、下を見ていて帽子のつばで見えなくて頭をぶつけたり、不意にバランスを崩したり。
一見なんてことないように見える場所でも、今この場所で落ちたら怪我するかも知れない、死ぬかも知れないと想像して歩いてください。
計画は必ず作って家族に渡す
登山の計画を作ったら、必ず家族に渡してください。紙に書いたならスマホで写真を撮ってLINEなどで送ってください。ちゃんと作ってないなら、せめて行き先の山の名前とコースの名前、予定している経由地くらいは送っておいてください。口頭で「埼玉の山に行ってくる」なんてのは言ってないのと同じです。
遭難して帰ってこられなくなった場合は、その情報であなたを探します。遭難したら残された計画が重要な手がかりになります。自分が遭難するかも知れないと考えて、必ず計画を家族に渡しましょう。
「登山のコンパス」などのサービスで提出すると、警察もアクセス可能だし緊急連絡先の家族にも送られます。
道を間違えたら戻る
登山における遭難の4割近くが道迷い遭難です。道迷いからの滑落や転落、行方不明などもあるし、道迷いで彷徨った挙げ句自力下山したケースも多くあるはずなので、統計以上に多くの道迷いが起きていると思われます。
予定したコースから外れてしまったら分かる場所まで戻るのが基本です。基本なんですが、意外とそれが難しい。
自分が道迷い遭難をしていると気付くのが難しい
道迷いに気付いて後ろを見たらどこから来たのか分からない
いつ間違えたのか分からず、とんでもない標高差を下ってしまい登り返せない
事前に読図をして、自分がどういう道や地形を歩くのか理解していれば早めに間違いに気付けますが、そうでないと「なんか変だな…」と思いつつ深みにハマってしまいがちです。早めに気付くためには、
事前に自分が歩くコースの地形、道の形、方位、太陽との関係を想像しておく
路面の硬さに注意する。登山道外は地面が柔らかい
やけに蜘蛛の巣が多い、鬱蒼としている
通せんぼしている木の棒やロープに留意。会話に夢中だと意外に見過ごしてしまう
沢や尾根を挟む場合は、その先の道がどうなっているか読図して見ておく。間違った沢や尾根に入り込んでしまうケースが多い
こんなところに注意しておく必要があります。地面や地形に違和感があったら、間違ったかも知れないと考えて紙の地図やGPSアプリで確認し、間違っていたら戻ってください。もう戻れないなら救助要請、電話が繋がらないなら運を天に任せて体力を温存するか、他の脱出方法を検討してください。
ココヘリ
小さな発信機から出る信号を、最大で16kmくらい離れたヘリコプターで受信することで、距離と方位が分かるというサービスです。短時間で要救助者の位置を特定することができます。
行方不明になってしまった登山者を探すのは本当に大変な仕事です。計画が出ていても容易ではありません。それが、ココヘリ端末があれば離れた場所から距離と方位が分かるわけです。これはとても画期的なことで、実際に多くの登山者の位置を短時間で特定しています。
短時間で探すための条件は、
登山計画を提出していて、どの山を登ったのか分かっていて家族や本人がココヘリに通報した。家族がココヘリの事を知っている
発信機(会員証端末)を登山者が携帯している
発信機のバッテリーが残っていて信号を出している
発信機が水没したり人間の下にあるなど、信号が届きにくい状況になっていない
などです。
計画を提出していて、ちゃんと充電して忘れずに携帯し、水に沈んでいない状況で、通報があって探し始めれば短時間で見つけてもらえるということです。そんなに難しい条件でもないので、毎回忘れずに携帯しましょう。でないともったいない。
注意すべきは、確かに短時間で見つけてもらえますが、救助されるまでは時間がかかる場合があるというところ。ヘリやドローンで位置が分かっても救助がすぐに来られるとは限りません。それまでは自力で生き延びなくてはいけません。
生き延びるための装備としてレインウェアやヘッドランプ、ツエルト、非常食などを持っているはずですから、それらを使ってなんとか生き延びてください。
自分は遭難するかも知れないと考えて備えてください。
「かも知れない」登山
全ての項目で共通するのは「かも知れない」です。明日は雨が降るかも知れない、日が暮れるかも知れない、スマホのバッテリがー切れるかも知れない…などなど。
「まぁいいや」とか「大丈夫だろう」と楽観的に考えるのではなく、「かも知れない」と考えて、実際にそうなった時に対処できるか想像しましょう。
その想像が、あなたや仲間の命を救うかも知れません。