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家族が精神疾患になったら…あなたが最初にすべき3つのこと
家族の様子がいつもと違う……そんな変化に気づいたとき、どう対応すればいいのか戸惑う方は多いでしょう。
「もしかして精神疾患?」と思っても、焦って間違った行動をとると、本人の負担が増し、関係性が悪化することもあります。
本記事では、家族の異変に気づいたときの最初の対応として「観察すべきポイント」「避けるべきNG行動」「正しい最初の一歩」について解説します。
家族の健康を守るためには、正しい知識を持ち、適切な対応を心がけることが重要です。
いざというときに慌てないよう、まずはこの記事で、家族を支えるための基本を学んでおきましょう。
1.家族の異変に気づいたとき、どうする?
①「もしかして精神疾患かも?」と思ったら
家族の様子がいつもと違うと感じる瞬間は、さまざまな形で現れます。
例えば次のようは変化に現れます。
行動の変化:急に無気力になったり、反対に落ち着きがなくなったりする
感情の変化:些細なことで怒ったり、涙もろくなったりする
生活習慣の変化:食事をとらなくなる、夜眠れなくなる、昼夜逆転する
コミュニケーションの変化:話すのを避ける、誰とも会いたがらない、被害妄想的な発言をする
このような変化が「一時的なもの」なのか、「継続的に続いているのか」がポイントです。
1週間以上続く場合は、注意が必要です。
そして変化に気づいたら、次のようなことを試してみましょう。
「最近、何かあった?」と穏やかに声をかけてみる
普段の生活や行動をよく観察する(後で専門家に相談するときに役立つ)
急いで結論を出さず、様子を見る期間を設ける(ただし深刻な症状ならすぐに受診を検討)
②不安・混乱の中でやりがちなNG行動とは?
家族が異変を見せると、「どう対応すればいいの?」と焦ってしまうのが普通です。
ただし、焦りや不安から次のような行動を取ってしまうと、本人の状態を悪化させてしまうことがあります。
NG行動①:気のせいだと決めつける
→「そんなの思い込みだよ」「考えすぎじゃない?」
→「最近、ちょっと元気がないように見えるけど、大丈夫?」と気遣う形で伝える
NG行動②:無理に励ましたり、厳しく叱る
→「頑張れ!気合が足りないだけ」「甘えてるだけでしょ」
→「何が一番つらい?何か手伝えることはある?」と本人の気持ちを尊重する
NG行動③:すぐに病院へ連れて行こうとする(本人が納得していない段階で)
→「病院に行こう!」と強引に勧めると、余計に抵抗感を持たれることがある
→「最近、体調どう?ちょっと専門家に話を聞いてみるのもいいかもね」と提案する
ポイントは、「家族が変わることを強要せず、まずは寄り添う姿勢を示す」ことです。
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③”正しい最初の一歩”が、家族の未来を左右する
精神疾患は、本人だけでなく、支える家族にとっても大きな影響を与えます。
しかし、最初に適切な対応をすることで、回復への道がスムーズになります。
(1)まず心がけるべきこと
焦らず、落ち着いて状況を観察する(感情的にならない)
本人の話を否定せず、ゆっくり聞く(共感的な態度を持つ)
必要なら、第三者のサポートを早めに探す(家族会・専門家・支援機関)
精神疾患は長期的なサポートが必要なケースも多いため、最初の対応で家族の関係が悪化しないようにすることがとても大切です。
ポイントとしては、「どう対応するか?」の正しい知識を持つことが、家族全員の負担を軽減するカギになります。
(2)家族の異変に気づいたら…
まずは冷静に観察し、記録する
「気のせい」などと否定せず、寄り添う姿勢を持つ
強引に変えようとせず、時間をかけてサポートする
この最初のステップが、家族の未来を左右します。
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2.すべきこと その1:情報を集めて正しく理解する
家族が精神疾患になったとき、最も大切なのは「正しい情報を知ること」です。
精神疾患に対する誤解や偏見があると、本人の気持ちに寄り添えなかったり、不適切な対応をしてしまう可能性があります。
まずは冷静に情報を集め、病気を正しく理解することが、家族としての第一歩となります。
①精神疾患とは?病気の種類と特徴
精神疾患は一つではなく、さまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。
代表的なものを知っておくことで、適切な対応がしやすくなります。
ただし、本当に病気なのか、病気だとしたら何の病気か、を診断するのは医師です。
インターネット上の診断テストなどで決めつけず、医師の診断を仰ぐのは必須なので、ご注意ください。
【うつ病】
主な症状:気分の落ち込み、意欲の低下、疲労感、食欲低下、睡眠障害
特徴:「怠けている」と誤解されがちだが、本人の意思ではコントロールできない状態
【双極性障害(躁うつ病)】
主な症状:気分の波が激しい、ハイテンションな時期と落ち込む時期を繰り返す
特徴:躁状態のときは浪費や過活動が見られ、うつ状態のときは極度に落ち込む
【統合失調症】
主な症状:幻覚(幻聴)、妄想、感情の平板化、思考の混乱
特徴:病識がないことが多く、本人は「自分が病気」と自覚しづらい
【不安障害(パニック障害、社交不安障害など)】
主な症状:極度の不安、動悸、息苦しさ、パニック発作、対人恐怖
特徴:「気の持ちよう」と言われがちだが、脳の機能の問題であり意志でコントロールできるものではない
【適応障害】
主な症状:ストレスが原因で抑うつや不安が強くなる、仕事や学校に行けなくなる
特徴:ストレスの要因を取り除くと改善しやすいが、放置すると悪化することも
このように、精神疾患は多様であり、それぞれ対応の仕方が異なります。
家族が「どの病気の可能性があるのか?」を知ることは、適切なサポートをするうえで重要です。
②誤解や偏見をなくし、冷静に向き合う
精神疾患は、長年の誤解や偏見が根強い分野です。
家族として、まずは「正しい知識」を身につけ、無意識の偏見をなくすことが重要です。
【精神疾患に対するよくある誤解と真実】
誤解:「精神疾患は甘えや気の持ちようで治る」
真実:「脳の機能や神経伝達物質のバランスが崩れることで発症する。意志の力だけで回復できるものではない」
誤解:「元気そうに見えるなら大丈夫」
真実:「表面的に普通に見えても、内面では大きな苦痛を抱えていることがある」
誤解:「家族がもっと頑張れば治る」
真実:「家族のサポートは大切だが、治療は医療機関の専門的なアプローチが必要」
誤解:「精神疾患の人は危険な存在」
真実:「統計的に、精神疾患のある人が暴力を振るう割合は一般人口と大差ない。むしろ、自分自身を傷つけてしまうリスクのほうが高い」
精神疾患に関する正しい知識を持つことで、家族の間に無用なストレスや誤解を生まず、冷静な対応ができるようになります。
③信頼できる情報源(医師、専門機関、書籍など)を活用する
インターネットやSNSでは、精神疾患に関する誤った情報も多く流れています。
間違った情報に振り回されないためにも、信頼できる情報源から知識を得ることが大切です。
【信頼できる情報源の例】
(1)医療機関や専門家
精神科・心療内科の医師
カウンセラー・臨床心理士・精神保健福祉士
地域の精神保健福祉センター
専門家の意見を聞くことで、家族としてどう対応すればいいのか具体的なアドバイスをもらうことができます。
(2)公的機関の情報
厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」(https://www.mhlw.go.jp/kokoro/)
日本精神神経学会「精神疾患について」https://www.jspn.or.jp/modules/about/index.php?content_id=3)
地域の保健所・精神保健福祉センターの相談窓口
公的機関の情報は、科学的な根拠に基づいた信頼性の高いものが多いため、参考になります。
(3)専門的な書籍
本を読むことで、より深く病気について理解できます。
おすすめの書籍には以下のようなものがあります。
『精神疾患をもつ人の家族のためのガイド』(精神保健福祉センター監修)
『うつ病の家族を支えるために知っておきたいこと』(精神科医・カウンセラー著)
『統合失調症の理解と家族の接し方』(精神科専門書)
また、家族向けの支援団体や当事者の体験談も参考になります。
精神疾患にはさまざまな種類があり、それぞれの特徴を知ることが重要
誤解や偏見をなくし、冷静に対応することが回復を助ける
信頼できる情報源を活用し、正しい知識を得ることが家族の負担を減らすカギ
「正しい情報を知ること」こそが、家族にとっての最初のサポートになります。
まずは情報を集め、家族としてどう接していけばいいのか、少しずつ理解を深めていきましょう。
3.すべきこと その2:自分一人で抱え込まず、相談する
精神疾患を持つ家族を支えることは、時に想像以上の負担がかかります。
「自分がしっかりしなければ」と思いすぎるあまり、一人で抱え込んでしまう人は少なくありません。
しかし、自分自身が疲弊してしまうと、適切なサポートを続けることは難しくなります。
ここでは、サポートを受けることの大切さと、具体的な相談先について詳しく解説します。
①相談できる人を見つける(家族・友人・専門家)
(1)まずは身近な人に相談する
最初に考えたいのは、「この状況を話せる相手がいるか」ということです。
家族や親戚:「一緒に協力できる人はいるか?」
友人や同僚:「気軽に悩みを話せる人はいるか?」
精神疾患を持つ家族を支えることは、孤独になりやすいものです。
「相談することで楽になる」「聞いてもらうだけでも安心する」という効果は大きいです。
(2)相談するときのポイント
「全部を話す必要はない」…具体的な症状や状況を詳細に話さなくても、「今少ししんどい」と伝えるだけでもOK
「相手の負担を気にしすぎない」…「こんな話をしたら迷惑かも」と思わず、信頼できる人を頼る
「共感してくれる人を選ぶ」…「気の持ちようだよ」と言われると逆効果なので、理解のある人に話す
(3)専門家に相談するメリット
身近な人に話しづらい場合や、より専門的なアドバイスが必要なときは、専門家を頼ることが重要です。
【相談できる専門家】
心理カウンセラー…家族のストレスケアや対応の仕方を一緒に考えてくれる
精神保健福祉士…医療や福祉サービスの利用について相談できる
精神科・心療内科の医師…家族としての接し方や治療方針について助言をもらえる
専門家に相談することで、「一人で抱え込まなくてもいい」という安心感を得られます。
②支援機関や家族会を活用するメリット
家族が精神疾患を持ったとき、「同じ立場の人と話すこと」は大きな助けになります。
(1)家族会(家族向けの自助グループ)とは?
家族会とは、精神疾患のある人の家族が集まり、情報交換や悩み相談をする場です。
「同じ経験をしている人と話せる」という点で、大きな安心感があります。
【家族会のメリット】
「自分だけじゃない」と思える
他の家族の体験から学べる
病気の対応方法や制度の情報を得られる
安心して話せる場ができる
代表的な家族会には、以下のようなものがあります。
全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)
NPO法人べてるの家(北海道)
各自治体の精神保健福祉センター
(2)支援機関の活用も有効
家族だけで支えようとすると負担が大きくなります。
福祉サービスや公的支援を上手に利用することで、少しでも負担を軽くすることができます。
【利用できる支援機関】
精神保健福祉センター…精神疾患に関する相談・情報提供を行う
地域包括支援センター…生活全般の相談に対応
障害福祉サービス…訪問看護・就労支援などのサービスを提供
【どうやって支援を受ければいい?】
まずは自治体(市区町村)の窓口に問い合わせる
「精神保健福祉センター」などの支援機関を訪れる
「家族会」などの当事者団体を調べてみる
知らなかった制度やサービスを利用することで、家族の負担が軽減される可能性があります。
積極的に調べてみましょう。
③「助けを求めること」は弱さではなく、適切な対応
「家族だから頑張らなきゃ」
「自分が何とかしなければ」
「助けを求めるのは甘えかもしれない」
こう考えてしまう人は多いですが、これは大きな誤解です。
(1)ひとりで抱え込むとどうなる?
精神的に疲弊し、共倒れのリスクが高まる
適切な対応ができず、本人の回復にも影響を与える
自分自身の生活や健康が悪化する
家族の健康が損なわれると、結果的に本人の回復も遅れることになります。
(2)「支えられる側」から「支え合う関係」へ
「助けを求めること」は、家族としての責任を果たすために必要なこと
「適切なサポートを受けること」が、長期的な支え合いにつながる
「助けを求めるのは家族として当然の行動」と考え、必要な支援を受けることが大切です。
≪まとめ≫
一人で抱え込まず、家族・友人・専門家に相談する
家族会や支援機関を活用し、同じ立場の人とつながる
助けを求めることは弱さではなく、家族としての適切な対応
家族が心身ともに健康でいることが、精神疾患のある本人の回復にもつながります。
一人で頑張りすぎず、支え合いながら向き合っていきましょう。
4.すべきことその3:自分自身の”ストレスマネジメント”を始める
精神疾患のある家族を支えることは、長期的なケアが必要になることが多く、支える側の心身にも大きな負担がかかるものです。
「自分のことより家族を優先しなきゃ」と考えるかもしれませんが、支える側が心身ともに疲れ切ってしまうと、結局、家族を支え続けることができなくなります。
ここでは、「支える家族自身のメンタルを守るために、できるストレスマネジメント」について詳しく解説します。
①家族が病気になると、自分のメンタルも影響を受ける
家族が精神疾患を抱えると、支える側もさまざまな感情に巻き込まれます。
【支える家族が抱えやすい感情】
罪悪感:「もっと支えてあげられるはず」「自分のせいでこうなったのでは?」
無力感:「何をしても回復しない」「自分ではどうしようもない」
怒りや苛立ち:「なぜ私ばかりがこんな思いをしなければいけないのか」
不安や恐れ:「この先どうなるのか」「いつまで続くのか」
家族の精神状態が不安定になると、その影響を受けて、支える側も精神的に消耗してしまうことがよくあります。
②ストレスをためすぎないためのセルフケア習慣とは?
ストレスを抱え続けると、気づかないうちに「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になってしまうことがあります。
そうならないために、日常の中でできるセルフケアを取り入れましょう。
【すぐに実践できるセルフケア】
1日5分のリラックスタイムを作る(好きな飲み物を飲む、好きな音楽を聴く)
身体を動かす(軽いストレッチや散歩をする)
深呼吸を意識する(1日数回、ゆっくり深呼吸する)
感情をノートに書き出す(モヤモヤした気持ちを紙に書くことで整理される)
「今できること」と「できないこと」を分ける(全部自分で抱え込まない)
「自分が楽しいと感じることを、罪悪感なく取り入れる」ことが大切です。
③「罪悪感なく休む」ためのマインドセット
家族を支える中で、自分の時間を取ろうとすると、
「自分だけ楽しむなんて申し訳ない」
「休むなんて甘えでは?」
といった罪悪感が生まれることがあります。
しかし、これは大きな誤解です。
【「自分が元気でいること」は、家族のためでもある】
支える側のメンタルが安定していると、家族にも良い影響を与えられる
自分が疲れ切ってしまうと、結果的にサポートが続かなくなる
「休むことも、家族を支えるための一部」だと考えましょう。
例えば、医療従事者が交代制で休憩を取るのは、常にベストな判断ができる状態を保つためです。
それと同じように、家族を支える立場の人も、意識的に休息を取ることが大切です。
④支援の手を借りる具体的な方法(自治体・カウンセリング・リフレッシュの場)
【支援を受けることは「甘え」ではなく「必要な戦略」】
「家族のことは自分が責任を持たなければ」と思うかもしれませんが、一人で背負い込むと、支え続けることが難しくなります。
公的な支援やカウンセリングなど、使える制度やサービスを活用しましょう。
【どんな支援が受けられる?】
(1)自治体の支援サービス
精神保健福祉センター…相談や家族向けプログラム
障害福祉サービス…訪問支援・日中の居場所づくり・障害者手帳の利用
(2)カウンセリング・心理相談
家族向けカウンセリング…家族としての心のケアや接し方のアドバイスを受けられる
オンラインカウンセリング…時間や場所を問わず相談できる
(3)リフレッシュできる場を持つ
家族会(自助グループ)…同じ悩みを持つ人と話せる場
趣味の時間を確保する…読書、映画、運動、好きなことをする時間を確保
支援を受けることで、「一人で頑張らなくてもいい」という安心感を持つことができます。
⑤「自分が倒れたらどうなる?」家族を支え続けるための心の守り方
「自分が無理をすればなんとかなる」と思っていると、気づかないうちに心身が限界を迎えてしまうことがあります。
もしあなたが疲れ切ってしまったら、どうなるでしょうか?
【自分が精神的に不安定になってしまうとどうなる?】
家族のケアが十分にできなくなる
他の家族や仕事、生活にも影響が出る
最悪の場合、自分も心身のバランスを崩してしまう
このような「共倒れ」を防ぐためにも、「まずは自分のメンタルを安定させる」ことを優先する必要があります。
「自分を大切にすることが、結果的に家族を守ることにつながる」という意識を持ちましょう。
≪支える側のメンタルケアは「義務」ではなく「戦略」≫
家族を支えることで、自分も精神的な負担を抱えやすい
「罪悪感なく休む」ことが、家族を支え続けるための重要なマインドセット
セルフケアを習慣化し、ストレスを軽減する
公的支援やカウンセリングなど、利用できるサポートを活用する
「支える側のメンタルを守ることが、結果的に家族を守ることにつながる」
あなた自身の心の健康を守ることが、最善のサポートにつながるという意識を持って、無理をしすぎずに向き合っていきましょう。
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5.おわりに:”長期戦”だからこそ、今すぐできる一歩を
家族が精神疾患になったとき、何をすればいいのかわからず、不安や混乱に襲われるのは当然のことです。
最初から完璧な対応をする必要はありません。
まずは、病気について正しく知り、信頼できる専門家や支援機関とつながること。そして、自分自身の心の健康を守ることが、長期的に家族を支えるために欠かせません。
「自分が頑張ればなんとかなる」と一人で抱え込むのではなく、少しずつできることから始めましょう。
支援制度やカウンセリングなど、利用できるものは積極的に活用し、無理をしすぎないことも大切です。
支える側の心が安定してこそ、家族にも良い影響を与えることができます。
あなた一人で抱え込む必要はありません。
必要なときには専門家の力を借りながら、家族とともに少しずつ前へ進んでいきましょう。
~心の病になった家族と社会復帰を目指す方へ~
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