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家族を支えるのがしんどい… 無理なく向き合うための心構え

家族の誰かが心の病を抱えたとき、支える側大きな負担を感じます。
「家族なんだから支えなければ」と思う一方で、「どうしてこんなにしんどいの?」と悩むこともあるでしょう。でも、それは決しておかしいことではありません。支えたいからこそ苦しくなる。これはとても自然なことです。

しかし、「支えなければ」という気持ちが強すぎると、自分自身を追い込み、孤独感を抱えてしまうこともあります。本当に必要なのは、「無理をしない支え方」を知ることです。

今回のブログでは、なぜ「しんどい」と感じるのかを整理し、支える家族が無理をしないための心構えについてお伝えします。
あなた自身の心を守るために、ぜひ最後まで読んでみてください。


1.家族を支えるのが「しんどい」と感じるのは自然なこと

①「支えたい」と思うからこそ、しんどくなる

「病気の家族を支える」と聞いて、まず何をイメージしますか?
専門知識と献身的な対応、本人が満足するくらいの十分な共感と理解をもって対応すること、などでしょうか。
これが無理なくできるならいいと思います。
この「無理なく」が重要ですよね。無理なんです。

まず家族は医療や福祉、心理の専門家ではないことがほとんどです。
仮に専門家だったとしても自分の家族相手だと葛藤が増えます。
「完璧に支えたい」と思うことが、しんどさのスタート地点です。

②「家族なのに、こんなふうに思ってはいけない?」→そんなことはない!

次のキーワードは「家族」です。
実はこの概念が、ケアラーの心を強く縛ります。

  • 家族だから献身的に支えて当然

  • 辛さを理解してあげて当然

  • 自分が辛いなんて感じてはいけない。ましてや人に愚痴をこぼすなど言語道断

かなり強い書き方をしてしまいましたが、これに近いことを感じているケアラーは多いです。

私も同じようなものでした。
また、「夫がうつ病になって、支えるのが辛い」とこぼすと、「でも家族なんだから頑張って」と言われることも多かったです。
当然こちらは「そうだ、家族なんだから辛いとか言っちゃいけない」と考えて、辛さを感じることすら押さえつけるようになります。

しかし、家族だろうが何だろうが疲れたり不安になったりすれば辛くなって当たり前なのです。相手が家族だから「思ってはいけない」という理屈はありません。
ネガティブな感情が湧き上がってきても否定する必要はないのです。

③ずっと頑張り続けるのは誰だって無理

家族のケアに限らず、生きていれば何かしら無茶や我慢が必要な場面と遭遇します。
多いのは仕事上での無理・我慢ですよね。繁忙期や年度初め・年度末などは「今はしんどいけど頑張らなきゃ」と奮起するでしょう。
でもそれが出来るのは「有期」だからです。
仕事でも家族のケアでも勉強でも、期間が限定されていれば頑張れるし、ある程度の無理も可能です。
しかしそれがいつ終わるか見えないもので、最悪の想像をしたら一生続くのでは、と考えたらどうでしょう。

その想像をした時点で意欲も自信も無くなってしまいます。

心の病になった家族を支えるのがしんどいのは、無期限、終わりが見えないからなのです。
だから決して、頑張れない自分が情けないとか愛情がないとか責任感がない、という問題ではないのです。

2.「しんどい」と感じる理由を整理してみよう

①何をしても報われないと感じる

家族を支えている時に、どんなことを意識しているでしょうか。
それはきっと「少しでも早く元気になって元通りになること」、ですよね。
元通りがどんな状態を示すか、は個々で違いますが、症状が減って、安定している日が増えて、社会復帰したり家事が出来たり、生活リズムが朝型になって、以前のように一緒に外出を楽しめるようになったり、と言う姿を目標にしているでしょう。

だからそれに近づいた感じがすると嬉しいしやり甲斐も感じるし、状態が後退するとがっかりします。
そして心の病は一進一退を繰り返します。長い目で細かく見れば回復している部分もあるはずですが、「元通りになる」ことを意識しすぎて気づきづらくなっています。

そして「こんなに頑張ってるのに結果が出ない」と感じてしまいます。

②「支えなきゃ」と自分を追い込んでしまう

心の病も病気なので、体の怪我や病気と同じです。回復には必ず医療の力が必要です。
身体の病気を治療するのが医師なのと同じです。
家族の役割も同様で、出来ることは「病気によって患者が出来なくなっていることをフォローする」ことです。
一人で抱えきれなくなったネガティブな感情を、話を聞くことで一緒に受け止めたり、家事を多めに請け負ったり、いつもは一緒に行っていた場所に一人で出掛けたり。

家族を支える、とは、フォローすることです。
それ以上の役割を背負い込むとしんどくなってしまいます。

③自分の気持ちを誰にも話せず、孤独を感じる

先ほどもお話しましたが、家族を支える、という現状をどう認識しているか、によって、支える家族側の孤独感が変わってきます。
「家族なんだから文句ひとつ言わず支えてあげなければいけない」と思い込み過ぎると、辛い気持ちを自覚するより前に否定する習慣がついてしまいます。

そうするとどうなるか。
辛いのに辛いと感じないので、セルフケアが出来ません。
助けてほしいと言えないので、過負荷状態が続きます。
それが続くことで「誰も私の気持ちなんてわかってくれない」と思うようになり、孤独感を募らせてしまうのです。

3.無理をしないための心構えとは?

①「家族の問題=自分の問題」と考えすぎない

ではしんどさをため込み過ぎないために、家族はどうすればいいでしょうか。
まずは家族の病気を丸ごと自分の問題と認識しないことです。
心の病は、生活習慣病のようなものです。ずっと続けてきた生活や自分に負荷をかけがちな思考、環境の変化に対する不適応または過剰適応によって発症します。
だからどうしても家族は「この人が病気になったのは自分のせいだ」とか「もっと早く気づいて話を聞いてあげたらよかった」と考えて、家族の病気=自分のせい、と考えてしまいます。

しかし当然ながら、家族の病気を支える側が「自分だけの問題」と考えるのは筋違いです。
病気を治そうと思って行動するのは患者本人です。そして治療するのは主治医です。専門的な相談先はカウンセラーです。
家族は「病気によって出来なくなった部分をサポートする」立場だ、ということをしっかり認識する必要があります。

②「できること」と「やってはいけないこと」を分ける

長年一緒に生活してきたから、患者本人のことはよく知っていますよね。そして一緒にいる時間が長いから、やってあげられることも無数に思いつくでしょう。
そして今もすでに辛いから、これ以上自分も辛くなりたくないこともあって「もっと悪くなったら怖い」ので、あれこれ先回りしてお世話してあげたり助言をするかもしれません。

ですがそれはやめておきましょう。
まず本人が望んでいないことまで手を出すことは、本人の存在意義ややる気を奪うことになりかねません。
直接「~~をやって欲しい」と言って来たわけではないのに「きっとそう思っているだろう」と思い込んで動くことですれ違いが起こる危険もあります。

そして本人が出来ることまで家族が背負い込むことは、当然家族側の負荷を高めることになります。だから「しんどい」のです。

③自分を犠牲にしない!「支える側のケア」も大切

そして一番やってしまうのが「自分の生活を丸ごと犠牲にしてケアをする」支え方です。
病気本人への思いやりがたっぷりあって、責任感が強く、生活力がある家族だからこそ陥りやすい落とし穴です。

  • 自分は病気ではないのだから、無理をしても大丈夫

  • 自分の疲れは寝たら回復する。今は自分のことどころじゃない

  • 本人が辛い思いをしているのに、自分だけ楽しいことをするのは申し訳ない

と考えて、趣味や友人関係を手放す人も少なくありません。

しかしです。
支える人が無理を重ねて元気が無くなれば、支えるどころではなくなりますよね。今目の前にいる人と同じ状況になってしまいます。
「老々介護」ならぬ「病病ケア」になってしまいます。
ケアする側の心身を保つことが、様々なサポート活動の土台なのです。


4.「支えたいけど、しんどい…」と思ったときに試したいこと

①「ひとりの時間」を意識的に作る

「しんどい」「辛い」「疲れた」と感じるのは、悪いことでも不吉な予兆でもありません。
今以上に悪くならないために、今の生活を守るために必要な心のSOSです。
本格的に「もう嫌だ」と思ってしまう前に、そのSOSに気づきましょう。

そして一人の時間を作って、自分のためにリソースを使いましょう。
リソースとは「時間・体力・思考力・お金」です。
普段これらを全部患者本人へ向けていませんか?
それを自分のために使ってください。
1日30分でいいのです。希死念慮が高まっているわけでないなら、1,2時間放っておいても何の問題もありません。
こういう時に活用できるのが趣味です。昔好きだった本や映画、アクティブを楽しむのでもいいです。好きなことを大事にすることは自分を大事にすることに繋がります。

②信頼できる人に話してみる(カウンセリング・家族会)

自分のしんどさを誰かに聞いてもらうのは、想像以上に効果があります。

私はカウンセリングをしていてしょっちゅう経験するのですが、話し始める前は「どうしたらいいか分からない…」と頭を抱えていた人が、状況を説明してもらったりその時に感じたことを話してもらっているうちにどんどん思考が整理され余裕が生まれて「話していてわかったんですが…」と、ご自身で解決先を見出したり、「何とか出来そうな気がしてきました」と言って終わります。かなりの確率で自己解決していきます。

身近な人に話して心配させたくない、または邪険にされたくない、と言う場合は、カウンセリングがおすすめです。
または家族会に参加して同じ経験をした人に話を聞いてみましょう。または経験者の話を聞きながら、第三者的に自分の状況を分析することもできます。

③公的な支援を活用する(家族の負担を減らす方法)

家族をメインとした公的支援はまだ少ないですが、患者本人を支援する制度を使うことで間接的に家族の負担が減ることも多いです。

例えばメンタルクリニックの通院やお薬代に負担を感じているなら、「自立支援医療(精神通院医療)」を申請しましょう。窓口での自己負担額が3割から1割/限度額に抑えることが出来ます。その手続きも本人にやってもらうことで、リハビリ代わりになります。

精神保健福祉センターと言う、精神疾患・障害に関する専門の公的機関があります。各県に1か所ずつ設置されていて、家族の立場から相談することが可能です。単発相談なので継続的な相談は出来ませんが、今のお悩みに対してどんな制度やサービスが使えるか、家族が出来ることは何か、社会復帰や収入補償についても相談が可能です。

5.まとめ|「支えること」と「無理をしないこと」は両立できる!

「家族を支えるのがしんどい」と感じるのは、あなたの心が弱いからではなく、むしろ「支えたい」と思う気持ちが強いからです。しかし、その気持ちだけで乗り切ろうとすると、いつか限界がきてしまいます。

大切なのは、「できること」と「やるべきでないこと」を明確に分けることです。あなたは医師でもカウンセラーでもなく、「家族」として支えている立場です。その役割を冷静に認識することで、必要以上に責任を背負い込むことを防ぐことができます。

また、気持ちを誰かに話すことも重要です。「家族だからこそ誰にも言えない」と抱え込まず、信頼できる人や専門家に相談することで、心の負担を軽減できます。

あなた自身の心を守ることが、結果的に家族を支え続ける力になります。「支える側の心のケア」について、もっと詳しく知りたい方は、ぜひ下記の無料メルマガをチェックしてください。あなたの負担を少しでも軽くするヒントをお届けします。


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