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ちあきなおみ「ドラマチック歌謡」三部作「喝采」「劇場」「夜間飛行」:一戸信哉の「のへメモ」 20241101

2024年11月1日の「ちあきなおみ特集」をお聞きいただきありがとうございました。

「敬和キャンパスレポ」は基本的に一ヶ月前に事前収録を行っています。特に夏休み中は学生が大学にいないため、収録が難しく、今回のようなプレイリスト企画を用意することが多くなります。もともと「年の差プレイリスト」シリーズも、コロナ禍で学生が集まれない時期に生まれた工夫のひとつです。

現役学生にとって、ちあきなおみさんは「おばあちゃん」世代に属するようです。MCを担当してくれた小林さんも、おばあちゃんがきいているという話を教えてくれました。ですので、ゼミ内の聴取レポートからも、「誰得」といった声が一部上がりました。しかし、「敬和キャンパスレポ」としては、単に若者目線で盛り上がるだけではなく、世代を超えた普遍的な価値を、(できたら学生の共感を得たうえで)伝えたいと考えています。そうした意味では、デジタル配信を通じて再評価が進むちあきなおみさんの特集は、今だからこそ意味のある企画だったと自負しています。

驚くべきことに、今回の放送日11/1の同日同時刻に、NHK BSで「ちあきなおみ ~NHK秘蔵映像で贈るデビュー55周年~」が再放送されていました。放送が重なってしまったのは残念ですが、それだけ今回のキャンパスレポは、世の中の関心に合った企画だったのだと思います。


番組制作では、数多くの曲をリストアップし、その中から小林さんと共に厳選しました。特に注目したのは「ドラマチック歌謡」三部作。「喝采」をはじめ、「劇場」と「夜間飛行」がその三部作にあたります。彼女の楽曲は、演歌路線に移行した船村徹さんの時代、さらにはシャンソンやポルトガル民謡のファドへと変遷していっても、常に「ドラマチック」さを失わず、独特の世界観を保ち続けています。三部作はこのちあきなおみさんの音楽の原型を作ったようにも感じます。以下この三部作をご紹介します。

1. 「喝采」


1972年9月10日に発売された「喝采」は、ちあきなおみの代表曲として知られています。この曲は、亡くなった恋人を思いながらステージで歌う女性歌手の心情を描いており、歌詞の設定や内容から「ドラマチック歌謡」と称されました。発売から翌年にかけてオリコンで通算80万枚を売り上げ、日本コロムビア調べでは累計130万枚を記録しています。また、第14回日本レコード大賞で大賞を受賞し、1972年の『第23回NHK紅白歌合戦』でも歌唱されました。


2. 「劇場」

https://youtu.be/hzeaKh24Xy4?si=9p4jfEI_fL1l9laU

「劇場」は、1973年2月にリリースされたシングルで、作詞は吉田旺、作曲は中村泰士が手掛けました。「それでもステージに立って歌う」という「喝采」と似ていますが、こちらは、地方の劇場を回る「前座」歌手の悲哀を歌っています。

3. 「夜間飛行」

「夜間飛行」は、1973年6月25日に発売されたシングルで、作詞は吉田旺、作曲は中村泰士が担当しました。この曲は、恋に破れた女性が、飛行機に乗って「異国」へ旅立つ歌です。曲の中で、飛行機の機内アナウンスがフランスで流れます。パリ、オルリー空港への着陸アナウンスです。また、1973年の『第24回NHK紅白歌合戦』で歌唱されました。曲調は明るく、夜の国際線で移動する雰囲気を醸し出していますが、内容は、テレサ・テン「空港」を思わせる「別れ」を歌っています。


2024年にヒットしている音楽とは、曲の作り方がそもそも違うでしょうし、現代には現代の「ドラマチック」さがあるとは思いますが、さりとて、ちあきなおみさんの表現した「ドラマチック」さが色褪せたわけではないでしょう。音楽のトレンドは移り変わっても、心に残るドラマチックさは普遍的であり、ちあきなおみさんの表現はその証であるように思います。

YouTubeでの音楽配信も、「サブスク配信」にあわせて始まったようです。Spotifyなどの音楽配信でも、同様に主だった曲は聞くことができるようになっています。

放送に合わせて、ちあきなおみさんの曲を多数聞くことができました。まだまだ多くの名作がありますので、少しずつこのコラムで紹介していこうと思います。


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