今日の夕方、スーパーに買い物に行った時、若い女性から叱られている男の子がいた。その子の年齢は四歳くらいだろうか。若い女性は、おそらく母親だろう。 母親は、言った…
あら? 向こうのソファのうえで携帯電話が鳴ってるわよ。 あたしのは手に持っているから、あたしのじゃないわ。 いったい、誰のかしら。 そうそう。 あなたちょ…
僕は、褒めるのが苦手だ。 だから、褒めるのが上手な人を見ると、大人気なく嫉妬することがある。たとえば、イタリア人男性がそうだ。 これは僕の勝手なイメージだけれど…
智哉とは、保育園からの幼馴染で腐れ縁だ。 小学校に入ってから、ずっと同じクラスだった。 僕は、智哉のことがあまり好きではない。 理由はケチ過ぎるから。 本…
三時間、その状況は続いていた。 母はキッチンに立ち、隣に住む加藤さんにトマトをいただいたとか、今年のお盆は家族で旅行に行きたいとか言っている。 話し相手は食…
Keito Nakamura
2023年7月25日 18:46
今日の夕方、スーパーに買い物に行った時、若い女性から叱られている男の子がいた。その子の年齢は四歳くらいだろうか。若い女性は、おそらく母親だろう。母親は、言った。「鬼がくるよ!」ようするに、言うことを聞かないと鬼がくる、というやつである。「いやだ! い~や~だ!」僕は、泣きじゃくる男の子の横を通りながら、肩身の狭い思いをした。人の言うことを聞かないのは、僕も同じだと感じたからだ。調
2023年7月25日 18:44
あら? 向こうのソファのうえで携帯電話が鳴ってるわよ。 あたしのは手に持っているから、あたしのじゃないわ。 いったい、誰のかしら。 そうそう。 あなたちょうどいいところに来たわね。 お願いしたいことがあるのよ。 娘に連絡を取りたいんだけど、LINEの使い方を忘れちゃって。 駄目ね、年を取るとこれだから困るわ。 メッセージって、どうやって送るの? ええ、え? メッセージはちゃんと
2023年7月25日 18:43
僕は、褒めるのが苦手だ。だから、褒めるのが上手な人を見ると、大人気なく嫉妬することがある。たとえば、イタリア人男性がそうだ。これは僕の勝手なイメージだけれど、イタリア人男性は褒めるのがうまい気がする。呼吸するくらい自然に、誰かや何かを褒めている感じがするのだ。残念なことに、僕は典型的な日本人だし、呼吸して自然に出てくるのは、誉め言葉ではなく二酸化炭素だけだ。だから時々、イタリア人男
2023年7月25日 18:40
智哉とは、保育園からの幼馴染で腐れ縁だ。 小学校に入ってから、ずっと同じクラスだった。 僕は、智哉のことがあまり好きではない。 理由はケチ過ぎるから。 本人は気づいていないけれど、友だちのあいだで「ケチケチマン」と呼んでいる。 智哉のケチぶりは、すさまじいものがあった。 たとえば、一カ月前に智哉の家に遊びに行ったとき、僕が「喉が渇いたから水飲ませて」と言うと、水がもったいないからダメ
2023年7月25日 18:39
三時間、その状況は続いていた。 母はキッチンに立ち、隣に住む加藤さんにトマトをいただいたとか、今年のお盆は家族で旅行に行きたいとか言っている。 話し相手は食卓テーブルの椅子に座わる父だった。「あなた、今年のお盆は仕事の休み取れ……」 いつまでそうやって話し続けるつもりなのだろうか。 私の我慢が限界に達した。「お母さん、いい加減にして!」 珈琲が入ったマグカップを壁に投げつけ、母の言