男性の僕がフェミニズムTweetをしたらバズったので反応をまとめて分析し反論もします
フェミニズムTweetをしたらバズった
先日ツイッターにフェミニズム的なツイートをしたら、たくさん拡散されました。いわゆる「バズる」という現象だと思います。バズったのはこちらのツイートです、少し長いです。
どの程度の拡散かというと、先頭のツイートでは、この文章を書いている時点(投稿から3日経過)で2,112件のリツイート(うち103件が引用リツイート)、6,457件の「いいね」が付いています。アクティビティを確認すると、ツイートを見られた回数(インプレッション)は75万8千回を超えたところです。これがどの程度のバズりなのかはよくわかりませんが、著名人でもインフルエンサーでもない僕にとってはとんでもない数字です。
それで、これだけたくさんの人に読まれた結果、引用リツイートやリプライ、さらには「引用リツイートへのリプライ」や「リプライへの引用リツイート」などなどを通して本当にたくさんの方のご意見が投稿されました。僕のところに届かないコメントもあるのですべてを把握しているわけではありませんが、関連するコメントが数百件は投稿されているのではないかと思います。とてもありがたく、多くのことを学ばせてもらいました。
リアクションを整理し、分析する
当然コメントには賛否両論あり、中には僕への非難の言葉も含まれていました。これらのリアクションに対し、ツイッター上でひとつひとつ議論を交わすのでは議論の重複も多くなりますし、ツイッター空間の特性を考えてもあまり有意義なものになるとは思えません。ただ、たくさんのコメントを読んでいくと、その中に一定のパターン(同じような考え)があることが分かってきます。ならば、それらを整理して見える化し、それに対して僕が考えたことや反論などを文章にまとめておくことは、現状の日本のジェンダー不平等やフェミニズムを考えるうえでも有意義なのではないか、と考えこのnoteを書くことにしました。
以下では、今回の一連のツイートに対するコメントの中から、いくつかの代表的なツイートを取り上げつつコメントしていきたいと思います。
1. 共感、同じような体験
まず何より、「同じような体験をしている」との声がたくさん寄せられました。これは本当に多くて、以下はそのごく一部です。
こういったツイートを読んでいると、日本の女性への偏見やジェンダーステレオタイプがいかに根深いかが垣間見えます。以前お店をしていた友人は個別に体験を教えてくれて、「わたしもお店してる時、旦那さんがお金を出してくれてやっている主婦と思われて何度もカチンときた」とのことです。まさに偏見です。
共感の中でも、ジェンダー以外のステレオタイプについて言及してくださった方もいました。
ステレオタイプはジェンダーに限ったことではなく、国籍、年齢、見た目など、社会の様々な場面で見られるものであることを意識させられます。つまり、状況や場所によっては、僕も、あなたも、誰だってマイノリティーや社会的弱者になり得るのです。
2. 偏見があると雰囲気で判断したことへの批判
僕の冒頭のツイートに「(金融機関の担当者が)『自分が話があるのは奥にいるあなたです』という雰囲気を出していた」との記述があることから、僕が雰囲気だけで担当者に偏見があると判断したことへの批判が多数寄せられました。
まず、この指摘自体はもっともだと思います。実際、この担当者が本当に偏見を持っていたかどうかについて僕に確固たる証拠があるわけではありません。もし僕の勘違いで、今回の件について彼には全く偏見は無く、もしこの方がこのツイートを読まれて気分を害されたのであれば、お詫びしたいと思います。
ただし、そうだとしても、この一連のツイートにおいてこの金融機関の方の話は直近の例として挙げたに過ぎず、ツイートの中では他にもいくつか例を挙げています。さらにこれらも日常の中で何度も感じていることの一部を指摘したに過ぎないのです。なので、もしこの方に偏見がなかったからといって、僕が主張したかったことの意味が損なわれるとは考えていません。
さらに言うと、ある程度の期間、接客業をしていると、店の中での目線や声、仕草などから、その人のその時の意向がある程度は読み取れるようになるものだ、ということは指摘しておきたいと思います。
あと、少し話がズレますが、最後の人のツイートにある「男女問わず奥にいる方が責任者と思うのは当然だ」という指摘は、他にも複数ありました。これは単純に僕がお店の詳細をこのツイートには書いていないので勘違いされただけだと思います。恐らくこの指摘をした方々は、オフィスっぽいお店というか、例えば郵便局とか銀行とか、カウンターがあってその奥に事務スペースがあるような店舗空間をイメージしたのではないかと想像します。そのような店舗の場合、「奥の方に座っている人が責任者」というのはある程度当てはまるでしょう。ただ、うちの店はカウンターがあってそのすぐ奥に作業スペースがあるだけで、僕はそこにいただけです。たとえばスタンド式のカフェやカウンター式の寿司屋などの方がイメージに近いと思います。こういったお店を想像していただければ、「奥にいる人が責任者」という感覚は生まれないのではないでしょうか。
3. 「相手に指摘すれば良いだけ」もしくは「責任者がわかるようにしておくべきだ」という意見
「その場で責任者がどちらかを伝えれば済む話だ」といった指摘や、「そもそも責任者が分かるようにしておくべきだ」といった意見も複数ありました。
僕の一連のツイートの主旨からいって、これらの指摘は見当違いと言わざるを得ません。僕が今回伝えたかったのは無意識の女性への偏見やジェンダーステレオタイプが存在することであって、うちの店においてこういった場面を「丸く収める」方法でもなければ、どうしたらその担当者が「勘違い」しなくなるか、でもありません。今回直接その方に指摘しなかった僕の行為が良いか悪いかは様々な意見があると思いますが、そのことと今回の論点は関係のないことです。
ちなみにうちは夫婦ふたりの小さなお店で、「金融機関と話す担当」というのは存在しません。なので、実際には話しかけるのはどちらでも構わず、この担当者は「勘違い」をしたわけではありません。もし迷ったのなら、というか(偏見が無いのであれば)判断できるわけがないので、迷うより先にまず「〇〇について話がしたいのですが、どなたと話せばよいでしょうか」と尋ねればよかったのです。ただし、繰り返しますが、このことは今回の主旨とは関係の無いことです。
※なお、上のツイートのような指摘とは別に「なぜ直接本人に偏見について指摘しなかったのか?」というご質問をもらっていて、それに対する回答は後述します。
4. 「社会運営をスムーズにするためにステレオタイプが存在するのは仕方がない」という意見
ジェンダーステレオタイプには(ジェンダーに限らないですが)社会運営をスムーズにしている効果があり、その代わりに弊害が生まれるのはある程度仕方がない、という意見も見られました。
これは、近年世界中で広がる保守派の言説に見られる「少数者のことばかり気にしていたら、他の多くの人の生活が窮屈になる」という理屈と共通する考え方です。「ステレオタイプが社会運営をスムーズにしているんだから、一部の人間(今回の場合は女性たち)が嫌な思いをすることくらい我慢しろ」という理屈です。しかしこれは一部の誰かを踏んづけて自分たちが楽をしたいだけの理屈であり、僕は受け入れることはできません。
たしかに、何のステレオタイプも存在しない世界で生きていくのは大変だ、というのはその通りだと思います。ただ、ステレオタイプが必要だとしても現在のジェンダーステレオタイプのように誰かを苦しめるステレオタイプである必要はないでしょう。ジェンダーギャップの無いステレオタイプに更新していけば良いのです。たとえば、「家事は女性がするものだ」というステレオタイプから、「家事は性別に関係なく共同でするものだ」というステレオタイプへと更新すれば良いと思います。
マイノリティーや社会的弱者を踏んづけた上で成立しているスムーズな生活にあぐらをかくのではなく、誰も踏んづけなくてもよい方法を模索していくことが必要です。繰り返しますが、状況や場所によっては、僕も、あなたも、誰だってマイノリティーや社会的弱者になり得るのです。
5. 「相手がジェンダーステレオタイプな男かもしれないから合わせるしかない」という意見
偏見なことはわかってるけど相手側の男性にジェンダーステレオタイプがあるかもしれないからそれに合わせるのは仕方がない、という意見も多かったです。
これらの意見を読んで、僕は正直「なるほど、それは大変だな」と感じました。一つ前の意見(ステレオタイプ社会運営スムーズ論)とかなり近い意見ですが、相手側に存在するジェンダーステレオタイプが次のジェンダーステレオタイプを誘発している点で話がさらに厄介になっています。
ジェンダーステレオタイプがジェンダーステレオタイプを生む悪循環。難しい問題です。ただし、この状態を放置していてはいつまでたっても社会からジェンダーステレオタイプは無くなりません。いつまでも誰かを踏んづけ続けることになる。どこかでこの悪循環を止めなれければいけない。
そこで、これは僕からの提案ですが、相手の性別に関わらず前述したフレーズの「〇〇について話がしたいのですが、どなたと話せばよいでしょうか」とまず尋ねることにしてはどうでしょうか? こう尋ねれば、別に男性を責任者候補から外しているわけでも、無視しているわけでもないことが伝わると思うのです。
ただ、それでも中には「男の俺に決まってるだろ」という人はいるかもしれません。それはもう「そうでしたか」と流すしかない。これで相手方が機嫌を損ねることは企業にとってマイナスだと思われるかもしれませんが、それは間違いです。MeToo運動の高まりやSDGsへの取り組みなどにより、国際的にも社会は確実にジェンダー平等へ進んでいます。そんな中では、たとえば営業担当者が客先で女性差別的、ジェンダーステレオタイプ的な対応を取ることはむしろ大きなリスクとなります。信用を落とし、企業にとってもマイナスとなります。相手がジェンダーステレオタイプな客である可能性を心配するより、いまのうちからジェンダー平等な対応を取ることの方が、営業担当者にとっても、企業にとっても中長期的にはプラスになることを理解すべきです。
6. 「ジェンダーステレオタイプは人類にとって自然なあり方だ」という意見
現代社会のジェンダーステレオタイプは生物としての人類にとって自然なものである、という意見もありました。
人類学や歴史学の研究成果は、この考えが誤りであることを指摘しています。
人類学者の丸山淳子さんは、ポッドキャスト(下にリンク)の中で、狩猟採集民の生活様式を現代まで保持しているアフリカの「ブッシュマン」は、性別によって仕事の役割を決めることはない、と述べています。性別による上下関係や役割分担を決めることをブッシュマンたちはむしろ強く否定するという話が印象的です。
また、国立歴史民俗博物館の横山百合子さん(日本近世史、ジェンダー史)は、インタビュー(下にリンク)の中で次のように述べています。
おふたりの話が示しているのは、男性が上に立つという構造は決して人類という生物にとって自然なものではなく、権力による思惑や偶然など、歴史的な様々な要因によって現在の状態になっているに過ぎない、ということです。
上のツイートをした方がどういった根拠で「男性が代表になる構造に何らかの自然的な側面がある可能性が濃厚」だとおっしゃっているのかは分かりませんが、もし根拠があるのであれば、教えていただければと思います。
7. みなさんの中のジェンダーステレオタイプの告白
僕のツイートを読んで、性別を問わず自分が過去に行っていたジェンダーステレオタイプな言動を告白してくださった方もたくさんいました。
僕も過去を振り返ると、反省すべき言動がたくさんあります。これからは意識して、できる限りステレオタイプに基づく言動を無くしていきます。
8. 男性が言ってくれて嬉しい。女性が言うと叩かれる
同じ発言をしても、男性だったら褒められて、女性だったら叩かれる。その事実自体に大きなジェンダーバイアスが見て取れます。本当に残念です。変えていかないといけないです。
9. 動こう、変えていこう
「小さなアクションがいずれ大きなうねりとなって新しい時代をつくっていく」、僕もそう思います。すべての場面で適切に対応することは難しくても、できるときに、できることからアクションを起こしていくことが大切だと思います。
僕自身は、妻と暮らすようになり、妻から日常の中で感じる偏見について教えてもらえたことが、意識が変わる大きなきっかけとなりました。そして今回のフェミニズムTweetをするに至り、それをたくさんの方が読んでくれました。
自分が差別されたとき、もしくは差別の現場に立ち会ったとき、「それは差別です」と声をあげることは大切ですが、それはとても勇気のいることで、誰しもができることじゃないと思うのです。また、SNSで声をあげることも、炎上するかもしれないし、簡単にできることではないと思います。
だから、まずは身近な信頼できる人に、「こんな扱いを受けた」とか、「あの発言ってモヤモヤするけど、どう思う?」とか、そんな風に話をするだけでも、その相手に気づきを与え、その人がまた他の誰かにその気づきを伝えてくれるかもしれません。そうして少しづつ広がって、大きな変化につながれば良いなと思っています。
質問・疑問への回答
意見や批判とは別に、ツイッター上でいくつか質問や疑問をいただき、回答したのでここでも紹介します。
<質問・疑問1>
(回答)
<質問・疑問2>
(回答)
<質問・疑問3>
(回答)
おわりに
今回のフェミニズムTweetのバズりの経験で、僕は多くのことを学ぶことができました。今の日本にはびこる女性差別、ジェンダーステレオタイプに、いかに多くの女性が日常的に遭遇しているのかを知ることができました。また、そのことを理解せず、見当違いな意見や理屈を持っている方が性別を問わず多くいることも実感しました。
そして、ジェンダーステレオタイプを意識すると、ジェンダー以外の様々なステレオタイプや偏見についても、それが社会にどれだけ蔓延しているかが見えるようになってきます。
日本社会において身近なマイノリティーである女性への問題を考えることで、社会全体のステレオタイプや偏見、差別をなくす動きにつながっていくのだろうと思います。
僕にできることはとても小さいですが、これからもできる限り考え、行動していきます。社会が少しずつでも変わっていくことを切に願います。
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