ストーリーの「うねり」って何?
脚本を書いていると「うねり」という言葉を聞くことがよくあります。
「ストーリーにうねりがない」とか「もっとうねりのある展開を……」とか。
「ドライヴ感」とかも似たような意味で使われてる気がします。
しかし、この「うねり」とか「ドライヴ感」ってすごく感覚的で、ニュアンスはなんとなく分かるんだけどちょっと掴みづらい。
それに「うねりを生む」ってどうすればいいのか、いまいち分からない。
今回はこの「うねり」について考えてみたいなと思います。
結論から言うと「うねりはログラインと構成によって生み出せる」と思ってます!
「うねり」ってどういうこと?
「うねり」という言葉、辞書には「ゆるく曲がりくねること」「大きく起伏する海の波」とあります。
感覚的な話になりますが、「うねり」という言葉からはまっすぐでなく蛇行している感じ、それからただ進んでるんじゃなくて勢いを持って流れている印象を受けます。「ドライヴ感」という言葉には勢いよく回転する感じ、進んでいく感じがします。
つまり、
「物語が直線的に進むのではなく、いろんな障害や葛藤にぶつかって思わぬ方向に曲がったり、起伏したりしながら、勢いよく進む」
というのが、「うねり」や「ドライヴ感」という言葉が表すところなんだろうな、と思います。
淡々と進むことが正解の物語も世の中にはたくさんありますが、ことエンタメにおいては勢いよく起伏のあるストーリーというのは根底として求められる重要な要素だよなと思います。
どうすれば「うねり」を生み出せるか?
では、どうすればこの「うねり」を作っていくことができるのか。
ついつい感覚的に処理してしまいそうになるのですが、できるだけ言語化してみたいと思います。
ログラインで生み出す「うねり」
ログラインとは「その物語の内容を表す短い文章」のことです。
ハリウッド脚本術の本などでは「ログラインが大事!」と耳にタコができるほど書かれています。
具体的にログラインって何を書くのか、なぜ重要なのか、みたいなことは『Save the Catの法則』をはじめ、いろんなテキストに繰り返し書かれているので割愛。
ネットで読んだものでは以下のRootportさんの投稿が簡潔で分かりやすいと思います。
ログラインの一例を見ていきます。
これだとまだあんまり「うねってない」感じがしますね。
男の子がどのくらい鬼退治に対して熱意を燃やしているかも分からないし、鬼退治にあたってどんな障害が待ち受けているのかも想像できない。
ちょっとうねり始めた気がします。さっきよりちょっとだけストーリーに勢いがつきました。
男の子に復讐という動機が与えられたからですね。
言い換えると、主人公の存在と行動が因果によって結びつけられた、というか。
「キャラクターがより勢いを持って動きそうな動機を付与する」ことで、物語に「うねり」を生み出せそうです。
家族を殺した者への復讐という動機は前のログラインと同じですが、復讐を目論む少年自体が鬼であるという矛盾が加わっています。
このことによって、
・同族を殺すことに対する葛藤が生じる(例えば敵の中にかつて優しくしてくれた幼馴染がいる等)
・主人公も鬼であるため、イヌ、サル、キジが仲間になってくれない、等の障害が発生する
など、物語が直線的でなく起伏が生まれそうな感じになってきました。
つまり、
ログラインを作る上で、「動機」と「矛盾」を強化することで「うねり」を作る事ができる!
ということになるかなと思います。
構成で生み出す「うねり」
物語に「うねり」を作るもう1つのポイント、それは「劇中の出来事の因果の連なり」だと思っています。
まず、直線的に連なっているステージをクリアしていくゲームみたいな流れをイメージしてみます。
これだとうねってない感じですね。
少しうねり始めた感じです。
物語中の出来事を因果関係で繋いでやることでうねりが生まれました。
こんな感じになるとだいぶうねってる感じがします。
因果関係の繋がりをより複雑にしていくことでうねりを強くしていくことができそうです。
手塚治虫の「ストーリーの木」
ここまで書く中で思い出したのですが、かの手塚治虫先生が『マンガの描き方』という本に描かれた「長編漫画の構成」のイメージがあります。
物語には大きな幹(ログライン)が必要。
そして、枝(様々なサイドストーリー)は細かく分かれつつもやがては本筋に回収されていく。
頭では分かっていてもなかなか簡単に作り出せるものではないですが……こんな形を目指して、観る方を惹きつけてやまない物語を生み出したいなと思います。
頑張ろう……!