場所と記憶にまつわる話
2023年8月10日(木)晴れ時々曇り
9時起床。乱れた睡眠スケジュールを戻すため、1時間ずつ起床時間を早くしていこう。
昼過ぎから耳鼻咽喉科の診察。一番暑い時間に外に出るのはつらいが、明日からの岡山撮影に備えて、念の為扁桃炎の薬をもらっておく。去年の11月から既に5回扁桃炎になって熱を出している。今日のように発熱を未然に防ぐのを含めると多分7回以上。いよいよ扁桃腺摘出手術を受けるべきか。手術をすると1週間から10日間入院することになるし、お金もかかるので躊躇している。何より取り除いてしまって解決というのがどうも腑に落ちない。でももう扁桃炎で苦しまなくて済むのならそれはとても魅力的。
家を出る30分ほど前に、キューバを旅している泉からLINE電話。何かあったのかと少しドキッとして電話に出る。なんとなくかけてみただけとのこと。今はCamagueyという街にいるらしい。泉は高校の同級生なのでかれこれ10年くらいの付き合い。今年の3月ごろから文章の日記を交換し合い、7月からはボイスメモによる声の日記を毎日送り合っている。キューバのネット環境が悪いらしく、ここ2週間近くは音声日記の交換ができていない。毎日ラジオのように聴いていたので、なくなると案外寂しいということに気づいた。
泉はキューバの経済状況の過酷さにショックを受けていた。物価や平均月収など泉の説明を聞いていると、本当にそうなのだろうということが電話越しにも伝わってくる。自分がお金として見られていると感じるとのこと。泉と7年くらい前にエジプトに一緒に行った時のことを思い出した。それでもキューバの良さや、親切にしてくれている人をちゃんと見つけているから安心した。結局私が病院に向かう道中も電話を続け、合計1時間くらいは話していた。久しぶりに声を聞けて良かった。
病院の受付で、保険証の期限が7月いっぱいで切れていることを指摘された。マイナンバーカードを持っていたのでとりあえずなんとかなったけれど、住民票のある場所に住んでいないとこういう時に困る。次引っ越しをしたら大人しく住民票を移そうと思う。診察を受けて抗生物質を7日分処方してもらった。これでとりあえず撮影の期間は問題なさそう。
病院が終わって、前に住んでいた家に郵送されているはずの新しい保険証を取りに行った。住民票がまだここにあるので、私の公的な郵便物は全てここに届く。幼稚園の頃札幌から引っ越してきて、21歳まで住んでいたこの家は、今は父親がひとりで住んでいる。2年前にイタリアから帰国したときに1ヶ月ほど滞在して、自分の部屋にあるものをほとんど処分した。当時私は物を手放すことで自由になれる気がしていて、それはまた、この部屋にまつわる過去を消し去りたいとどこかで思っていたのかもしれない。まだ勉強机やベッドなど大きめの家具が残っているが、引き出しやクローゼットの中はほとんど空っぽ。家具類も親に買ってもらったものだと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになり、やりきれない。どんなに所有しているものを手放しても、過去から逃れることなんてできないということもまた、最近わかったような気がする。この部屋にいると本当に気が滅入る。やっぱりもうここには住めないかなと思う。
近くのブックオフで少しCDと本を売り、18時過ぎに帰宅した。じじばばの顔を見てホッとする。じじは買い物を頼まれていたのに寄り道して帰りが遅くなり、またばばを怒らせている。このふたりとの生活も長くは続かないことも分かっているけれど、お互いに文句を言い合っている姿をいつまでも見ていたいと思うのは、私がふたりの孫だからだろうか。これが自分の両親だったらどう思うのだろう、と多分これから先起こることのない光景を想像してみたりする。
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